トランプ米大統領が北朝鮮制裁の解除を拒否 - ハノイの米朝首脳会談が決裂 -
- 2019年 3月 1日
- 時代をみる
- 伊藤力司米朝会談
2月27、28日の両日、ベトナムの首都ハノイで開かれたトランプ米大統領と金正恩・北朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談は28日に事実上決裂、北朝鮮に対する国際的な制裁の解除は実現しないことになった。北朝鮮にとっては期待外れの結果である。
この結果、アメリカを先頭とする欧米とアジアの自由主義陣営は、北朝鮮の完全非核化を目指して北朝鮮に対する厳しい制裁を続ける。北朝鮮に対する制裁は国連安保理で決議されており、比較的北朝鮮に甘い中ロ両国もこれに従わざるを得ない。
北朝鮮は、先代の金正日・労働党総書記が今世紀初頭から核兵器とミサイルの開発に取り組み、今では北朝鮮からアメリカ本土に届く核弾頭付きICBM(大陸間弾道ミサイル)を持つに至った。これはアメリカにとっては重大な脅威である。
今世紀初頭以来、アメリカはブッシュ政権(2001年~08年)とオバマ政権(2009~2016)の8年間、どちらかと言えば北朝鮮に対して無為を続けた。この間に北朝鮮は核実験とミサイル実験を重ね、アメリカ本土に届く核ミサイルを完成させたにもかかわらず。
2017年1月末ホワイトハウス入りしたドナルド・トランプ大統領は、内政での不評を相殺する必要もあってだろう、外交で点数を稼ごうとしている。だから安倍首相や習近平主席、あるいはプーチン首相との「親しい関係」をPRしているわけだ。
そうしたトランプ外交にとって、北朝鮮の核問題は恰好の材料である。昨年6月シンガポールで開かれた米朝初首脳会談で、金正恩委員長に対して北朝鮮の核開発に制動をかけたトランプ大統領は、自由世界のリーダー然として面目を施した。
しかし「朝鮮民主主義人民共和国」を名乗る、実質“金王朝”3代目の金正恩氏も30台の若さにしては、なかなかの役者である。「老獪」を絵にしたようなトランプ大統領と渡り合い、北朝鮮として最低限の生き残りを事実上、認めさせたのである。
世界は国連安保理決議に基づいて、北朝鮮に対する国際的な制裁を課している。その制裁を回避しようと、金正恩委員長はトランプ大統領とのハノイ会談に賭けたのだが、賭けは外れた。トランプ大統領としては、金正恩氏と話し合った結果「彼をこれ以上甘やかすわけにはいかない」という判断に至ったのであろう。
金正恩氏はこれからどうするか。祖父金日成、父金正日が築き上げた朝鮮民主主義人民共和国を維持する宿命を担う以外にない。彼は今回、その道が非常に険しいことをハノイで自覚したことであろう。
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