SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】313 パリは燃えているか
- 2019年 4月 19日
- 評論・紹介・意見
- サハラノートルダム大聖堂フランス平田伊都子西サハラ
2019年4月16日午前4時前、いつものように朝食をせがむ野良猫の声に起こされて、乾燥餌と牛乳を並べ、ラジオのスイッチを入れたら、「パリ、、、が燃えてます」というアナウンサーの声が流れてきました。 「まさか?パリは燃えている??」慌ててパソコンを開き、BBCテレビ、ロイター通信、ハーレツ・イスラエル通信、AFP通信、MWN(モロッコ世界ニュース)など、手当たり次第にアクセスしました。 どの社も、臨時ニュースとして<パリのノートルダム炎上>を、実況中継していました。
「オーララ~」パリジャンの嘆く声も録音されていました。
(1) ノートルダム・ド・パリ(パリの我らが貴婦人):
「消防夫たちが850年前のカトリック建造物を救おうと、戦っている」と、BBC英国TVは、ノートルダム炎上ニュースにこんなタイトルを付けた。消防夫に助けを求める<
貴婦人の図>が浮かんだ。<ノートルダム>を有名にしたのは、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴ―で、彼が1831年に出版した小説<ノ―トルダム・ド・パリ>だと言われている。フランス革命で見る影もなくやつれたノートルダム大聖堂は、本の評判のお陰で金が集まり、修復できたという。
21世紀の今も、映画、舞台、バレーなどが挙って取り上げる「ノートルダム・ド・パリ」をご紹介してみる。
「時は、教会の弾圧と魔女裁判で荒み切っていた15世紀。所は、パリのシテ島にあるノートルダム大聖堂。主要な登場人物は、16才のジプシーの踊り子で美少女エスメラルダを中心に、彼女に惚れるカジモドとフェビュスとフロロという名の3人の男たち、そして大聖堂の彫像・怪物たち。
15世紀のフランスと言えば、イギリスとの100年戦争に負けたり負けたりで、やっと聖女ジャンヌダルクのお陰で勝利したシャルル7世は、1429年にノートルダム大聖堂でフランス王としての戴冠式を挙げてもらった。それなのに、そのフランス王シャルル7世は恩人ジャンヌダルクを火炙りにしてしまった(1431年)。小説など及びもつかない陰惨な宗教ドラマが展開していた。
小説<ノ―トルダム・ド・パリ>は、ノートルダム大聖堂の前に捨てられていた瘤だらけの赤子を大聖堂の助祭長フロロが拾ったことから、始まる。カジモドと名づけられた背むしの子は、ノートルダムの鐘つき男に成長する。ノートルダム広場に、ヤギのジャリ
をお供に従えたジプシーの踊り子エスメラルダが登場し、フロロは一目惚れし、カジモドに踊り子の誘拐を命じる。が、カジモドは衛兵に捕まり、広場で石の刑に処せられようとした。危うしカジモドを救ったのがエスメラルダで、カジモドは彼女に惚れてしまう。その彼女は衛兵フェビュスに惚れ、嫉妬のあまりフロロはフェビュスを刺し、その罪をエスメラルダになすりつける。エスメラルダは魔女裁判で死刑判決を受け、カジモドは命の恩人をノートルダム大聖堂に匿う。が、フロロは彼女を衛兵に引き渡し、無実のジプシー踊り子はノートルダム広場で処刑されてしまう。ノートルダム大聖堂の塔から処刑を見ていたフロロを、カジモドは突き落としました」とさ、、
(2)気になる怪物たち:
ノートルダム大聖堂の高い欄干に、腕組みをしたりして止まる、無数の怪物たちがパリを守っていた。画家シャガールが「ノートルダムの怪物たち」と題して、怪物たちが蘇ると言われている夜のノートルダムを描いている。映画や舞台でも、怪物たちは準主役を演じてきた。怪物たちの大部分は、修築の為に避難していたそうだ。さすが怪物たち、、いち早く今回の大火を察知していたようだ?
ローマ法皇を始め、♠アメリカ大統領、メイ・イギリス首相など世界の首脳陣が<火事見舞い>を送った。老パリジャンの国連事務総長報道官ステファンは、「14世紀から聳え立つ、貴重な世界遺産の一つだ。私の想いは、フランス政府そして国民と共にある」と、国連事務総長の声明を伝えた。そして報道官は、
「世界文化遺産に登録されているノートルダムが炎上したことに、我々は心を痛めている。ユネスコUNESCOは速やかな被害修復に力を惜しまない」と、元フランス文化省大臣でユネスコUNESCO(国連教育科学文化機関)オードレ・アズレの声明も代弁した。
ユネスコUNESCOさん、炎上した世界文化遺産は、パリのノートルダムだけではない。イラク、リビア、シリア、、イエメンと、欧米はアラブの世界遺産を戦火で燃やしてきた。UNESCOは<身びいき>せずに、欧米が燃やしたアラブの世界文化遺産も修復して欲しい。
(3)パリは燃えているか?:
<パリは燃えているか>は、フランス・レジスタンス(共産主義者とドゴール派)と自由フランス軍によるパリの解放を描いたノンフィクションの小説で、<ノートルダム・ド・パリ>を超える大ベストセラーになった。作品は1966年にアメリカとフランス合作で映画化され、ルネ・クレマンが監督し、米仏オールスターキャストで大当たりを取った。
マクロン政権がちょっと心配しているのは、ノートルダムの火が毎週土曜日に行われている<黄色いベスト>デモへと飛び火するのではないか、という事らしいが、デモの要求にはマクロン政権得意の小技政策で誤魔化せるとも、思っているようだ。このデモは<パリ解放>時の<燃えるパリ>のような高揚したものとはいささか異なる。
マクロン政権が<パリは燃えているか>精神で真摯に向き合わなければならない問題は、国際法と国連憲章に則ったアフリカ最後の植民地・西サハラ問題だ。
これまでマクロン政権が耳栓をして、聞こえない振りをしてきた西サハラ問題に関して、
フランス上院議員のクリステイン・プルノウド女史が、4月10日にパりで、「フランスは、国際法とヨーロッパ憲章に違反する<西サハラ領土を含むモロッコEU商業協定>が通ったことで自信をつけ、モロッコが嫌ういかなる国連決議に関しても拒否権を使って反対すると宣言した」と、声明を出した。この声明は、木曜日に質問状としてヨーロッパ外務大臣ジャン・イヴ・ル・ドリアンに提出され、正式に上院広報で公開される。さらにクリステイン上院議員は、「モロッコはこれまで、フランスの強力な後押しで、国連による政治的解決を妨害し続けてきた。モロッコとフランスの国連妨害は西サハラ難民の状況と、アルジェリア・モロッコ間の緊張と、マグレブ地域の治安を悪化させて来た」と、フランスのモロッコに対する間違った支援の在り方を非難した。
かくして、大文豪ヴィクトルユーゴは主要な登場人物をノートルダム大聖堂周辺で
ドラマチックに殺し、ご自身は1885年5月22日に83才で大往生し、国葬とあいなり、パンテオンに埋葬されました
名脇役のノートルダムの怪物たちは、ずっと今に至るまで、パリを見下してきました。 怪物たちの大半がノートルダム大聖堂大火を逃れご無事なようで、なによりです。
Youtubeに2018年7月にアップした「人民投票」(Referendum)をご案内します。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いいたします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2019年4月17日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8581:190419〕
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