普天間日米合意の欺瞞判明 -ウィキリークス公電を朝日が報道-
- 2011年 5月 5日
- 評論・紹介・意見
- ウィキリークス坂井定雄日米関係普天間問題
待っていた。ついに出た! 5月4日朝日朝刊の特ダネである。ウィキリークス(WL)が入手した膨大な日米関係の公電が、いつ、どのように日本で報道されるか待っていた。
この日報道されたのは、米軍再編計画による普天間基地移設についての06年日米合意関係で、米側公電が明らかにしていることだー
(1)米軍が不要な軍用道路建設費10億ドルをグアム移転経費に水増しして計上。移転経費102億ドルのうち日本側負担比率を59%と大幅に低く見せかけた。水増し分を除けば、日本側負担は66%を占めている。
(2)06年時点で沖縄海兵隊の駐留数が実際には1万3千人しかいないのに、公式定員1万8千のうち隊員8千人と家族九千人がグアムに移駐するとした。朝日は「移転の実数が8千人を下回るのは確実」とだけ書いているが、実際の移駐数はもっと少なく、3千人しか移駐しなくても、日米合意の数字を満たせることになる。このことについて公電は「日本での政治的効果を上げるため」実数を水増しした、と記しいているという
(3)日米関係に関わる外務・防衛官僚が、日米交渉の相手役に対し日本政府を裏切って米側が有利になるように入れ知恵していた。例えば、斎木アジア大洋州局長はキャンベル米国務次官補に対し「民主党は官僚を抑え、米国に挑戦する大胆な外交のイメージを打ち出す必要を感じているようだ」「愚か」「やがて彼らも学ぶだろう」などと発言した。高見沢・防衛省防衛政策局長は「米政府は(中略)あまり早期に柔軟さを見せるべきではない」と発言したなど。
朝日新聞は、鳩山前首相が普天間基地の米海兵隊を「最低でも県外移設」を公約し、動き始めたことについて、他紙と同様に“日米同盟の危機”を騒ぎ立て、外務省を代弁するような報道を続け、鳩山首相を翻意させ、政権崩壊に追い込んだ。その汚点を、今回のウィキリークス報道は“帳消し”にしたとさえ思う。
朝日の説明によると、WLから提供を受けた日本関係の公電は6963本で、全体の98%が06年以降の安部、福田、麻生の自公政権時代から、民主党鳩山政権の10年2月まで。全体の8割が在東京の米大使館発。「極秘」分類が325本、「秘」が2194本。
WLはオーストラリア出身のジュリアン・アサンンジュ氏らが06年に創設した非営利の国際的内部告発情報サイト。2010年11月から、米外交公電を順次公開してきた。提供を受けた、英紙ガーディアン、仏ルモンド、米ニューヨーク・タイムズ各紙などは、特別チームを編成して、膨大な数の公電を読み、信憑性を確認。数々の報道をして、隠されてきた「外交の秘密」を読者に公表してきた。“「外交の秘密」の公開は国益に反する”と米政府は公開中止をWLやメディア各社に求めたが、メディア側は国民の知る権利の立場かいずれも拒否して、報道を続けた。読者はじめ大多数の国民がWL報道を支持した。1971年のペンタゴン・ペーパー(ベトナム戦争についての米国防総省秘密報告)の暴露報道以来、米国では政府の秘密を知る「国民の知る権利」が定着しているが、他国でも国内法や裁判でWLの公電公表、メディアの報道を差し止めることはできない、という実情になっている。ペンタゴン・ペーパーの報道では、ニューヨーク・タイムズの最初の特ダネに続いてワシントン・ポストも報道を展開、政府の非公開圧力に抗して勝利した。
今回の朝日報道は、普天間問題に範囲がほぼ限定されており、WLが提供した公電の一部でしかない。約7千本の公電は日米関係のすべてに及んでいるはずで、日米関係全体の本当の姿を見せてくれるはずだ。朝日新聞には、さらなる報道を続けてほしい。他紙とNHK、テレビ各局も、抜かれた報道を無視や軽視したり、あらさがしをするようなケチな対応をせず、堂々と追いかけて、WL報道をやってほしい。それが「国民の知る権利」に応えるメディアの役割であり、義務ではないか。(5月3日記)
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