否定された安倍首相の改憲路線 - 護憲団体が参院選を総括 -
- 2019年 8月 5日
- 時代をみる
- 岩垂 弘
参院選が終わった。「改憲反対」を掲げて参院選を闘った護憲団体から、選挙結果に対する総括が相次いで発表された。そのうちの代表的なものの内容を紹介する。
総選挙に向けてさらなる協力を―市民連合
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)は参院選直後の7月22日、「参議院選挙の結果を受けて」と題する一文を発表した。
それは、冒頭部分で「この選挙では、多くの地域で市民と野党の共闘が実現しました。そして、32の1人区で10議席を獲得できました。また、改憲勢力の3分の2を打破することができました。自民党が現有議席を確保できず、参議院における単独過半数を失ったことにかんがみても、憲法改正を訴えた安倍晋三首相の路線が否定されたということができます」と述べ、「これは、日本の立憲主義と民主主義について危機感を燃やした市民と野党の頑張りの賜物です」としている。まさに、“勝利宣言”とみて差し支えないだろう。
その一方で、一文は「残念ながら、安倍政権はさらに継続することとなりました。憲法改正の動きは一応頓挫しましたが、安倍自民党はこれから様々な形で憲法改正にむけた揺さぶりをかけてくることが予想されます。私たちは、引き続き立憲主義と平和国家を守るために運動を続けなければなりません」とし、さらに「この参議院選挙で野党共闘が一定の成果を上げたことをふまえ、次の衆議院総選挙に向けたさらなる協力を作り出すことが求められます。政権構想の深化と選挙協力体制の構築のために、市民と野党の対話、協力を続けていきたいと考えます」と述べている。
改憲勢力3分の2を阻んだ運動に確信を―九条の会
九条の会は7月29日、「参議院選挙後の新たな改憲情勢を迎えて」と題する声明を発表した。
声明は、まず「2017年5月3日の改憲提言以来、自民党は衆参両院における改憲勢力3分の2という状況に乗じて改憲を強行しようとさまざまな策動を繰り返してきましたが、その後2年にわたり市民の運動とそれを背にした野党の頑張りによって改憲発議はおろか改憲案の憲法審査会への提示すらできませんでした。そして迎えた参院選において、改憲勢力は発議に必要な3分の2を維持することに失敗したのです」と、こんどの参院選で改憲勢力を3分の2以下に追い込んだことを高く評価。
続けて声明は「3分の2を阻止した直接の要因は、市民と野党の共闘が、『安倍政権による改憲』反対、安保法制廃止をはじめ13の共通政策を掲げて32の一人区全てで共闘し、奮闘したことです。また、安倍9条改憲NO! 全国市民アクション、九条の会が、3000万署名を掲げ戸別訪問や駅頭、大学門前でのスタンディングなど草の根からの運動を粘り強く続けることで、安倍改憲に反対する国民世論を形成・拡大する上で大きな役割を果たしたことも明らかです」と述べている。
その上で、声明は「安倍首相は任期中の改憲をあきらめていません。それどころか首相は、直後の記者会見において「(改憲論議については)少なくとも議論すべきだという国民の審判は下った」と述べて改憲発議に邁進する意欲を公言しています」「安倍首相は、自民党案にこだわらないと強調することで、野党の取り込みをはかり3分の2の回復を目指すなど、あらゆる形で改憲強行をはかろうとしています」「安倍9条改憲を急がせる(米国の)圧力も増大しています」として、「参院選で3分の2を阻んだ市民の運動に確信をもち、3000署名をさらに推進し、広範な人々と共同して草の根から、9条改憲の危険性を訴える宣伝と対話の活動を強めましょう」と訴えている。
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