本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(233)
- 2019年 8月 22日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
爆燃現象と煙突効果
「京都アニメの放火事件」には大変驚かされたが、その理由としては、「一人の人間」の間違った行為が、これほどまでの惨劇に繋がった状況が指摘できるようだが、私自身としては、「トランプ大統領」のような「権力を持った人物」が、「かりに誤った行為を実施した場合に、どれほどの影響が存在するのか?」を危惧している状況でもある。
特に、今回の「イランとの確執」については、きわめて大きな悪影響を世界にもたらす可能性があり、この点に関して、今回の放火事件で使われた「爆燃現象」と「煙突効果」という言葉が気に掛かった次第である。つまり、同様の状況が、世界の金融システムで発生する可能性を危惧しているが、実際には、「中東情勢の混乱が、世界の原油価格の上昇に繋がり、その後、マネー経済の破裂が大インフレを引き起こす構図」のことである。
具体的には、現在の「世界的な金融システム」が、「三段階の信用創造」という構図になっており、この時の問題点としては、「ほとんどの通貨が、コンピューターマネーやデジタルマネーなどの『単なる数字』に変化した状況」が指摘できるのである。より詳しく申し上げると、今までは、「信用本位制」と「コンピューターのネットワーク」が存在したことにより、「大量の資金がマネー経済の内部で取引され、実物資産や実体経済に対して、資金が流れにくい状況」のことである。
別の言葉では、「デリバティブの存在」が「ゼロ金利」や「マイナス金利」の発生を可能にした状況でもあったが、現在では、すべての手段が使い果たされ、間もなく、本格的な「マネー経済の破裂」が発生しかかっている状況とも言えるのである。そして、今回は、「本当の事件」が発生する「約2か月前」に、「京都アニメの放火事件」と「米国とイランとの紛争」が組み合わされた形で発生したようにも感じているが、このような「2か月前の兆候」については、「2007年のサブプライム問題」などを始めとして、私自身が、今までに何度も経験したことである。
そのために、今回も、「9月前後に、どのような事件が発生するのか?」に、大きな注意を払っているが、「2019年」については、「金融界の白血病」や「金融界の玉手箱」、そして、「金融界のホーキング放射」のように、「2月から、その他の前兆が始まっている状況」となっているのである。つまり、末尾に「9」の付く年は、基本的に、バブルの発生と崩壊が起きやすいものと考えているが、今年については、基本的に、「政府への過剰な信用が、国債のバブルを発生させた状況」のようにも感じている。(2019.7.22)
------------------------------------------
時間と空間のトレードオフ
今年の「BIS(国際決済銀行)の年次総会」では、盛んに「時間のトレードオフ」という言葉が使われていたが、「トレードオフ」というのは、基本的に、「あちらが立てば、こちらが立たず」というような状況を表している。そして、「空間、あるいは、三次元」で使われる場合と「時間、あるいは、四次元」で使われる場合が存在するものと考えているが、具体的には、「現代社会」の象徴とも言える「多くの人々が大都会に移住し、その結果として、地方の過疎化が発生している状況」などは、「空間のトレードオフ」の典型例とも考えられるようである。
また、「アリとキリギリス」の物語は、「時間のトレードオフ」の典型例とも言えるようだが、具体的には、「夏に歌やバイオリンなどで遊んでいたキリギリスが、冬の厳しい時に食料が無くなり、夏に働いていたアリに救いを求めるが、拒否され死んでしまう」というものである。つまり、現在の世界経済のように、「マネーの大膨張」に浮かれ、「パンとサーカスのような生活」に慣れ切った人々が、将来的に、「冬の時代」を迎える可能性がある点を、今回の「BISの年次総会」で危惧されていたのである。
より詳しく申し上げると、「民主主義の弊害」とも言える状況により、「財政赤字」が増え続ける状況のことだが、実際のところ、「政治家や官僚」には、「選挙で勝つために、常に、費用負担が発生しながらも、国民にとって有利な政策を選択する傾向」が存在するのである。そして、「国民」も、「自分の生活」を優先し、「国家財政の悪化などを顧みず、景気をよくする政治家化を選択する」という傾向が存在するが、その結果として、現在では、「金融政策が無力化した」と「BIS」がコメントしなければならないほどに、世界の資金繰りが行き詰まりを見せ始めたのである。
つまり、過去20年間は、「デリバティブの大膨張」、そして、「大量のコンピューターマネーの存在」により、「世界中の人々が、キリギリスのような生活」を送ってきたのだが、今後、「ペーパーマネー」が復活する事態に陥った時に、一挙に、冬の時代が到来するものと想定されるのである。別の言葉では、以前から申し上げている「お金」が「神から紙へ変化する事態」のことだが、今回の「時間的なトレードオフ」については、「人類史上、未曽有の規模だったようにも感じている。そのために、現在、私が危惧していることは、「これから、どれほどの反動が発生するのか?」ということであり、この点には、決して、予断が許せないものと感じているが、今回の「BISの年次総会」を見ていると、時間的な余裕は、完全に消滅したようにも感じている。(2019.7.30)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8926:190822〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。