超インフレで困るのはだれか。-小島四郎論考を読んで
- 2019年 8月 26日
- 評論・紹介・意見
- 箒川兵庫助
ハンガリ-在住の盛田常夫氏が,旧ソ連邦におけるハイパ-インフレ-ション(以下,超インフレと略す)を根拠にMMT批判を展開されたが、ジンバブエと同じく政治混乱による供給体制の崩壊を見落としていた。そして同様のことが日本や英米に起こるとした点で誤りであった。米国では政府機関が一部閉鎖されても財政破綻しない。あれほどの財政赤字でも超インフレにもならない。なぜなら供給体制はそれほど問題ではないからである。
次に現れたのが,小島四郎氏の論考「参議院選挙の総括 その1・2(2019年 8月 23日)本サイトちきゅう座」である。
小島氏の文章は歯切れよく,流暢に読むことができる。またいろいろな分野の事実を各処に配し相当な知識の持ち主である事を示している。しかし彼の主張は,「れいわ新選組」の山本太郎氏にMMTを放棄させることにその眼目があり,その論法は誤魔化しである。一般命題を否定するには反例を一つだけ挙げればいい。
例えば最後の4行を観てみよう;
>注意すべきは,・・・こんな理論ともいえない考えに依拠して経済運営しハイパ-インフレ-ションを起こせば、一番に困るのは貧困層であり年金層である。山本よ、もう少しよく考えろ、次の一歩はそれからでも遅くない。
超インフレを起こす前にまず日銀の言う物価上昇率が2%にならなければならない。現状は1%未満。山本連立政権ができてMMTによって新規国債を大量に発行すればデフレ20年が終わりになりインフレが始まるだろう。インフレ率が4%になれば銀行利子は3%位になるはずである。消費税も0円である。貧困層に手元資金はより多く残る。
トルコは8月に主要政策金利を24%から19.65%に下げたが未だに超インフレは訪れてはいない。また新生ロシアは超インフレから立ち上がり米国の制裁にも関わらず,格付け機関フィッチやS&Pから高い評価を受けている。超インフレになった方が却って、雨降って地固まるのかもしれない(日本も見習うべし?)。
その一方で,日本の政策金利が20%になれば,銀行金利も15%以上になるであろう。かくして貧困層の銀行利子は確実に増え,また?消費税0%,?最低賃金1500円以上,?奨学金徳政令や?公務員数増そして?第一次産業所得政府補償により,生活に余裕ができる。
そしてますますインフレになっていくが消費を冷やす政策スタビライザ-を導入せず金利をトルコと同じように20%前後に保った時(保てない場合もあろう),生活が楽になるのは庶民であり貧困層である。それは天皇制支持とかに関係しない。デフレ20年から脱却してのインフレの始まりであるとしても,母子家庭や非正規の方々の生活が一時的にも(10年か、20年かそれは分からないが)楽になる。銀行預金残高は見る見るうちに増えるであろう。しかし現行は貧困にあえぎ,自殺寸前である。消費税が10%になれば自殺者が減少するとは考えられない。
さてそこで小島氏が主張されるように超インフレになった場合,貧困層や年金受給層は確かに困るだろう。例えば1個200円だったリンゴを富裕層は数えきれないほど買うことができるが,一気に2億円になったら貧困層は買うことができない。しかしながら3億円の資産をもつ富裕層はどうであろうか。リンゴ1個半しか買えない。渡り鳥・天下りして8億円を分捕るキャリア官僚たちもリンゴを最高4個しか買うことができない。とすれば,従来の富裕層も困るのではないだろうか。内部留保をたっぷりため込んだ法人も困るだろう。生活はリンゴだけで成り立っているわけではない。
小島氏の最後の4行「一番に困るのは貧困層であり,年金層である」というのは誤魔化しであり,まやかしに過ぎない。
追記:プ-チンが登場する前に「借金して」土地や建物を買った投資家たちは超インフレが起こり,一躍大金持ちになった。一晩で大金持ちになりたい方は,「れいわ新選組」に「20億円」ほど投資して超インフレを起こしてもらった方がいいのでは。但し,インフレ率が5%を越えたら太郎氏は消費税を導入すると言っている。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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