「NHKから国民を守る党」の怪しい正体 - 改憲派の仲間入りか? -
- 2019年 8月 30日
- 評論・紹介・意見
- NHKNHKから国民を守る党隅井孝雄
参院選で「NHKから国民を守る党」(N国党)が比例で当選したことが話題となった。ほかならぬNHK政見放送で「NHKをぶっ壊せ」と叫んだことから、市民の好奇心を煽り、ユーチューブで300万回も視聴された(7/25朝日新聞)。
立花孝志氏とは何者?
「NHKをぶっ壊す」と叫んで国政に進出した立花孝志氏は、元NHK職員だ。不正経理に絡んで懲戒処分、2005年に退職、一時期「みんなの党」に出入りしていた。
2013年「NHKから国民を守る党」を結成、その後大阪や東京で地方議会選に立候補、落選を繰り返した後、2015年船橋市議会議員に。しかし任期半ばで辞任、2016年以降都知事選、堺市長選などで落選を重ねる一方、地方議員に候補をたて、一部で当選者を出すようになった。19年4月の統一地方選で地方議会に26人が当選、余勢を駆って参院選に挑戦することとなった。立花氏の得票は99万票、1.97%だが、全国各地のN国候補の合計得票率が3.02%と政党要件2%を上回ったことから比例当選を果たした。
物珍しさ消え、右寄り傾向見せる
当選直後、「北方領土を戦争で取り返す」と発言し糾弾決議を受けた丸山穂高衆院議員を入党させ、更に参院渡辺喜美参院議員と統一会派を組み「みんなの党」を名乗ることになる。
しかし「みんなの党」が表立ち、N国党がかすむという自己矛盾となる。「物珍しさ」はすっかり消えた。不祥事に関連した元自民議員などの加入を呼びかける一方、「NHKのスクランブル化(NHKを見ない人は払わなくていい)を首相が認めれば、憲法改正に賛成する」(7/30時事通信)という発言や、ネトウヨ的言動に批判が高まっている。新たな右翼グループの誕生で、改憲2/3にあと一歩との見方も一部でささやかれている。
8月10日N国は臨時総会を開いた。ジャーナリストの上杉隆氏を幹事長に起用、政党の体制を一応整ようとした。来年の都知事選、次期衆院選に挑むというが、右寄り傾向という正体を見せたことで、政党としての発展は危うくなったと私はみる。
NHKの在り方を問う市民運動とは無縁
2014年以降3年間はNHK会長籾井勝人(当時)の「政府が右と言えば左と言えない」と発言、受信料不払いを宣言する人が多数出た。NHKに対する不信感は今も続く。しかし2017年12月、最高裁が受信料の支払い義務は合憲だと判断を示した。そのため、番組に対する不満から不払いする視聴者の「権利」は成り立たず、受信料裁判は視聴者の敗訴が続いている。
NHKは8月9日から3日間、「受信料をお支払いください」という異例の3分番組を放送した(松原洋一理事の出演)。続いて政府が「NHKと契約したものは受信料の支払い義務がある」との答弁書を閣議決定した。議員会館室にテレビがあるが、立花氏は「NHKと契約するが受信料は踏み倒す」と公然と発言したからだ。
しかしそのNHKにも矛盾がある。NHKは近々総合とETVのすべての番組をインターネットで同時配信する準備中だ。受信料を払っていない人がネットで流れる番組をパソコンやケータイで視聴しようとすると、「受信料を支払ってください」というスクランブル画面が出る仕組みになるとみられる。ネットでは立花氏の言い分が通るということにならないか。
私自身京都で「NHKを憂うる会」(現「NHK・メディアの会京都」)で、かつて籾井会長の辞任を求める運動を行ってきたが、同時にNHKの安倍政権寄りの報道姿勢を正そうとする運動に参加してきた。そのため“「N国党」とは関係あるのか”と参院選中よく聞かれた。“「まともな公共放送を取り戻そう」という市民運動とは全く異なる”が私の答えだ。
NHKが政権寄りの報道をやめ、本来の公共放送に立ち返るためには、7,122億円の受信
料(2018年)でNHKを支える市民、視聴者の力強い働きかけ以外にはない。
最近NHKの報道の政権寄りを批判する市民組織の数が増え、全国的になっているのは
心強い動きだ。独立した公共放送としての使命を取り戻せ、政府寄りの人事を撤回せよなどの申し入れが「NHKを考える会」など、全国20団体の連名で行われた。(6/26)。NHK批判の市民の動きは全国各地に広がりを見せている。
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