ご存知ですか。フジ住宅というヘイト企業があることを。
- 2019年 9月 29日
- 評論・紹介・意見
- DHCスラップ訴訟ヘイトスピーチ差別歴史認識澤藤統一郎
上には上があるというベきか。あるいは、下にはさらに下があると驚くべきか。オーナーの身勝手なヘイト志向の信念を従業員に押し付けるブラック企業としてはDHCが極め付けと思っていた。が、世の中は広い。DHCに勝るとも劣らぬ企業が関西にあることを知った。これまで知らなかったその社名が、「フジ住宅」 。大阪府岸和田市に本社を置く東証1部上場の不動産大手。従業員数は1000人に近く、関連会社を含めると1200名規模だという。
DHCは、デマとヘイトとスラップの3拍子で知られる。フジ住宅は、従業員へのヘイト文書大量配布と、育鵬社教科書の採択運動に社員を動員してきたことで有名になった。どちらのオーナーも、独善と押し付け、嫌韓・反中の信念の強固なことにおいて、兄たりがたく弟たりがたい。
フジ住宅が一躍全国区で有名になったのは、この夏のこと。大阪弁護士が、この会社の女性従業員からの人権救済申立を容れて、異例の人権救済勧告を出し、本年(2019年)7月16日にこのことを公表してからのこと。
同月11日付の勧告の主文は、以下のとおりである。
勧告の趣旨
1 被申立人(フジ住宅)はその従業員に対し、大韓民国等本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布しないこと
2 被申立人(フジ住宅)はその従業員に対し、中学校の歴史及び公民教科書の採択に際し、特定の教科書を採択させるための運動に従事させ、その報告を被申立人にするよう求めないこと
つまり、フジ住宅は、弁護士会から「人権侵害に当たるからおやめなさい」と注意を受けるほどに、「社員に対して、韓国など本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布」していたし、「社員に、歴史・公民教科書の採択に際し、歴史修正主義派の教科書を採択させるための運動に従事させ、その報告を会社にするよう求め」ていたということなのだ。
この会社のヘイトぶりに我慢ができなくなった在日三世の女性従業員は、弁護士会に対する人権救済申し立てだけでなく、大阪地裁堺支部に名誉毀損の損害賠償請求の提訴もしている。ネットで、両者の主張を読むことができる。
通常この種の事件で裁判所に提出される主張は、法律家のスクリーニングを経て、それなりの抑制が利いたものとなる。ところが、この会社の準備書面は、弁護士が作成したとは思えないほどにストレートな会社の言い分そのままなのだ。そのストレートな会社側の主張が興味津々である。たとえば、これが準備書面の文章である。
「被告会社会長である被告今井の信念として、戦後の日本人が自らの国に誇りを持てないことが社会に大きなひずみを生みだしているところ、それは東京裁判に象徴される第二次世界大戦戦勝国の措置によって日本人に植え付けられたいわゆる「自虐史観」が主な原因であるから、自らの国に誇りを持つためには「自虐史観」を払拭する必要がある。この観点から、戦後日本において多くの国民の自己肯定感情の障害となってきたと考える「自虐史観」の払拭に役立つと思われる文書を配布している。」
この会社のホームページには、こうある。
「弊社が当裁判に負けることは、原告を除くほぼ全ての、外国籍の方を含む社員全体が支持してくれている弊社の仕事の進め方、それを通じて広く社員が見識を高めてくれることを期待する社員育成の方法が採れなくなることを意味しており、弊社としましては、この点で、妥協できる余地は一切なく、弊社の存立に深く関わるこの経営のあり方を続けたいと思っております。
また、当方を応援して下さる方の中には、当裁判の帰趨が非常に重要な歴史的意味を持っており、日本国民として絶対に負けられない裁判であると言ってくださる方も多くおられます。弊社と致しましても、万が一当裁判に負けるような事があれば、日本人全体の人権や、言論の自由が大きく毀損される事になるとの危機感を共有しており、当社経営理念「社員のため、社員の家族のため、顧客・取引先のため、株主のため、地域社会のため、ひいては国家のために当社を経営する」をしっかりと守り、「ひいては国家の為に当社を経営する。」と述べている事に、嘘、偽りの無い姿勢を貫きたいと思っています。
この会社には、従業員を主体性ある独立した人格と見る視点がない。労使の関係が、対等な法主体間の労働契約であることの基礎的な理解を欠いている。この会社も、この弁護士たちも、近代的労使関係の何たるかをまったく分かっていないとしか評しようがない。「社風」とか、「社員育成」によって、社員の人格や思想・良心を蹂躙することができて当然と思い込んでいるのだ。従来、企業側弁護士はこのような会社をたしなめ、説得し、教育してきたはずだが、ただただこの会社の愚かな主張に追随しているようにしか見えない。
この大阪弁護士会の異例の勧告を、朝日(関西版)は、こう伝えた。
東証1部上場の住宅販売会社で、韓国人などを侮辱する表現を記した文書が繰り返し配布されていたとして、大阪弁護士会は(7月)16日、人権侵害に当たるため配布をやめるよう勧告したと発表した。同社では、中学校の教科書に育鵬社版が採択されるよう社員の動員もしていたといい、思想・良心の自由を侵害する可能性も指摘した。
毎日はこうだ。
今月11日付の勧告書によると、同社は2013年、「息を吐くようにうそをつく」など、韓国や北朝鮮、中国を差別する表現がある雑誌記事などを少なくとも8回にわたって全従業員に配布した。さらに15年、「新しい歴史教科書をつくる会」の元幹部らが編集に関わった育鵬社の「歴史」と「公民」が公立中学校の教科書に採択されるよう従業員に各自治体の住民アンケートなどへの回答を推奨。同社の会長に結果を報告するよう求め多くの従業員が応じていたという。
どうも、メディアの伝え方が、いまいち十分ではないという印象を否めないが、それはとかく、これからはこう決意し、こう訴えよう。
DHCの製品は買わない
アパホテルには泊まらない
フジ住宅で家は建てない
播磨屋のせんべいは食べない。
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以下に、大阪弁護士会「勧告」の判断部分を要約してご紹介する。極めて常識的なものだが、この会社の耳にははいらないようだ。
https://moonkh.wixsite.com/hateharassment/blank-7
2 当会の判断
(1)別紙一覧表1記載の文書の配布について
何人も平穏に生活して人格を形成し、自由に活動することによって名誉・信用を獲得し保有する権利は、憲法第13条に由来する人格権として強く保護され、かかる権利は、国籍・民族の知何を問わず本邦に居住する者に等しく保障されるべきものである。
ただし、憲法は私人間の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に直接適用または類推適用されるものではないから、民法第709条その他私法の一般条項の解釈適用を通じて間接的に私人間の行為を規律することになる。
ところで、一般に私人の表現行為は、個人の基本的な自由として憲法第21条第1項に基づき厚く保障されるべきものである。しかし、本邦以外の特定の民族または国籍の出身者を侮辱し、これらの者に対する差別的意識を醸成させる行為は、憲法第13条、第14条に照らし、社会的に許容される合理的範囲を超えて他人の法的利益を侵害していると認められるときは、人権侵害行為にあたり、民法第709条の不法行為(ないし契約関係が存する場合には、契約内容に応じ債務不履行)が成立すると評価できる。
これを本件についてみると、申立人(従業員)は、韓国国籍を有する在日韓国人3世として本邦に居住しているのであるから、平穏に生活して人格を形成し、自由に活動することによって名誉・信用を獲得し保有する人格権を有しているというべきである。他方、被申立人(フジ住宅)には、会社の目的に必要とされている範囲で表現行為の自由が保障されているところ、被申立人が、自身に所属する全役職員に対し配布した別紙一覧表1記載の文書には、いずれも韓国又は韓国国民に対する批判的論評の域を超えた侮辱的表現が随所に見られる上、被申立人代表取締役会長が、侮辱的表現部分に丸印や下線を引くなどしている。確かに、被申立人による上記文書配布は、申立人を被申立人の職場から排除することや申立人の人格権を侵害することを直接の目的とするものではなく、また、配布された文書を申立人が受領することが強制されていた事実は認められない。しかし、被申立人は、1000名を超える従業員を雇用する東証一部上場企業であり、いわば社会の公器として多様な価値観・歴史観を許容し、国籍や人種等による差別的意識を排する職場環境の構築が求められるところ、被申立人の創業者であり、被申立人の全役職員に対して極めて大きな影響力を持つと考えられる被申立人代表取締役会長が、侮辱的表現部分に丸印や下線を引くなどして上記文書を被申立人の全役職員に配布した行為は、いずれも被申立人の業務に必要とは言いがたく、被申立人の全役職員に対して上記文書を配布することを保障する必要性に乏しい。以上からすると、被申立人による別紙一覧表1記載の文章の配布が、被申立人の人格権を侵害したものといえると評価されたとしても、その評価が不当であるとは決していえない。
(2)別紙一覧表2記載の文書の配布について
憲法第19条が思想・良心の自由を保障しているのは、いかなる国家観、世界観、人生観を持とうとも、それが内心の領域にとどまる限りは絶対的に自由であり、国家権力は、内心の思想、に基づいて不利益を課したり、あるいは特定の思想を抱くことを禁止することができないということである。そして、かかる自由が国籍・民族の如何を問わず本邦に居住する者に等しく保障されること、憲法が私人相互の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に直接適用または類推適用されるものではないので、民法第709条その他私法の一般条項の解釈適用を通じて間接的に私人間の行為を規律することになることは、前記(1)と同様である。これを本件についてみると、本邦の歴史、とりわけ明治維新以降の近現代史における歴史的事実については、個人の歴史観や思想・信条によって様々な評価があることは、公知の事実である。そのため、中学校における歴史及び公民の教科書は、各執筆者が近現代史における歴史的事実を各々評価し執筆しているので、異なる叙述がされている。したがって、教科書に対する評価は、個人の歴史観その他思想・信条と密接に結びついているといえる。しかるに、創業者であり被申立人役職員に強い影響力を持つと考えられる被申立人代表取締役会長が、被申立人の全役職員に対し、別紙一覧表2記載の文書を配布するなどして特定の教科書を採択させるための運動に従事するよう強く推奨するとともに、かかる運動に従事したときは、その内容を上記代表取締役会長に報告することを求めている。そして、現にかかる推奨に応じて多くの役職員が上記報告に及んでいる。被申立人のこの一連の行為は、被申立人の業務に必要とはいい難く、しかも、被申立人は、これらの収集した報告をどのようにでも使える立場にあるので、例えば、上記採択運動に従事したか否かで、従業員の待遇に差を設けることもできる。以上からすると、かかる運動に従事することを被申立人の全役職員に強制するものではないことが、別紙一覧表2記載の文書の一部に明記されているとはいえ、被申立人が、その収集した思想・良心にかかる報告を自由に使える立場あることからして、かかる運動に従事したか否かによって、申立人を含めた従業員がその待遇等において差別的取扱いを受ける可能性が高い状況下にあるので、申立人を含めた従業員が自己の思想・良心を侵害されるおそれの高いことを否定することはできない。
3 結語
以上によれば、被申立人による各行為に対し、申立人の救済には今後の人権侵害の防止につき適当な措置を採ることを勧告することが相当であるから、勧告の趣旨記載のとおり、勧告する。
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なお、会長の信念によって、全社員に配布されたヘイト文書の一部を抜き書きしておく。
多くは、「月刊WILL」「正論」「産経」「加瀬英明」「呉善花」「中山成彬」「櫻井よしこ」などの文章の転載である。
「韓国の国民性を痛烈にえぐっている。…嘘と無恥の国なのだ」
「では、なぜ韓国人は第三国でこれほど反日活動に走るのだろうか。それは韓国人の習性に由来している。韓国人同士がケンカする時は相手の言い分などに耳を貸さず、ひたすら自分の主張を大声で怒鳴り合う。さらに、周りの人々に訴えて自分の味方を増やそうとする。直接相手に堂々と挑むのではなく、第三者に訴えてねじ伏せようとするのが韓国流のケンカである。彼らは味方を増やすために『いかに自分の主張が正しいか』嘘八百を並べながら、身振り手振り、場合によっては号泣して周りに訴える」
「『金王朝』を信奉する朝鮮学校出身者のせいか・・・息を吐くように嘘をつく反日サヨクの生き様そのもの」「自分たちの悪事を批判されるとすぐに『差別ニダ』!と大騒ぎする在日朝鮮族」
「韓国も中国も、日本人とは異なった国民性を持つ民族であると認識しなければなりません。私たちは親から『嘘をついてはいけません』と教育されます。しかし、中国や韓国は『騙される方が悪い』『嘘も100回言えば本当になる』と信じている国民です」
「日本非難を共産党独裁の正当化につなげる無神論の中国と、日本たたきを民族プライドにつなげる情緒的な韓国からしか参拝糾弾が出てこない点注目すべきです」「『ワイロは国民性』日本とは逆に韓国・北朝鮮はワイロを当然とする民族性があります。ワイロを与えることによって見返りを得るという伝統です」「今の韓国も北朝鮮もワイロ無しでは社会が成り立たないほど、ワイロはまさしく国民性にまで、なっています」
「韓国人の思考の中に敵相手ならどんな非道をしても許されると勘違いしているところがありますよね、確かに野生動物がまさしくこれです。鳥類、ほ乳類、は虫類ではないが、恐に足りないものに対しての攻撃性は、見るに堪えがたいものがあります」
「韓国は未だ売春は犯罪という意識もなく普通に売春している」
「中学校であれば『育鵬社』、高校で在れば『明成社』が良いということを・・」
「アンケート記入に行かれる方は、昨年同様、ボールペンで、記入し、フジ住宅の社章と拉致被害者救う会のバッジは外して行ってくださいネ・・・女性の方は私服で、行ってくださいネ。」「市長や教育長にお手紙を書かれたり、FAX、メールをされたり、また会いに行かれたり、あるいは教科書アンケートに行かれる場合は、勿論勤務時間中にしていただいて結構です。」「市長や教育長の方にお手紙やメール、FAXをされました方は、私(会長)・・(に)ご報告してくだされば、ありがたく思います。」「一般的に(各市)2~3名で十分かナアと思います。あまり多くの方がお手紙を出すとかえってマイナスになると思いますので。」
(2019年9月28日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2019.9.28より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=13397
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9037:190929〕
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