ルネサンス研究所11月定例研究会(『ドゥルーズとマルクス』合評会)のお知らせ
- 2019年 10月 16日
- 催し物案内
- ドゥルーズとマルクス中村勝己
台風19号が関東を通過しましたが、被災された方々には御見舞い申し上げます。
今回は、今年早春に『ドゥルーズとマルクス――近傍のコミュニズム』をみすず書房から刊行されたフランス文学・フランス現代思想研究者の松本潤一郎さん(就実大学人文科学部表現文化学科教員)を東京に招いてお話を伺うことにしました。松本さんはこれまでアラン・バディウ、スラヴォイ・ジジェクほか、ヨーロッパの現代思想家の著作を多く翻訳されてきました。その松本さんが、ドゥルーズの哲学について、そしてドゥルーズ哲学を通して見るマルクスの可能性について語ります。
https://www.msz.co.jp/topics/08787/
日 時:11月12日(火)18:00開場18:30開始
会 場:専修大学神保町キャンパス7号館7階774教室
資料代:500円
コメント:伊吹浩一(フランス現代思想、ルネサンス研究所運営委員)
リプライ:松本潤一郎(フランス文学・フランス現代思想・就実大学教員)
今年2月、『ドゥルーズとマルクス――近傍のコミュニズム』を上梓しました。
3部構成になっており、各々4本ずつ、計12の論考を収録しています。コミュニズムの世界は資本主義の世界に隣接しているはずだ――という、或る意味で古典的な〈おとぎ話〉を、いわゆる〈現代思想〉の論者に、読み込もうとしています。 1部「歴史・哲学・政治」には、思弁性の特に強い論考を収めました。「ドゥルーズ‐ガタリ(以下DG)と歴史」では、〈世界史〉を成り立たせた資本主義もまた歴史的形成物であるという点に注目して、DGの仕事の一部を再構成しました。「公理と指令」では、DGの〈指令語〉概念に焦点を当て、世界化の中から世界化を逸脱する要素をとりだし、そこから〈別の世界〉の構成可能性を考えました。「『原国家』の射程」では、DG国家論とマルクス価値形態論を援用しつつ、ISを分析しました。「矛盾は失効したのか」では、〈他の世界〉構想と可能世界論とは、似て非なるものであると論じました。 2部「『来るべき民衆』の物語」には、物語行為という視点から、哲学と政治の連関を考える論考を収めました。「物語と襞」では、前出「矛盾は失効したのか」とは別の視点から可能世界論をとりあげ、そこから集合的知性の構成方法を抽出しました。「分裂と綜合」では、分岐すればするほど統一されるという逆説の思考の系譜の一部を瞥見しました。「無限小の政治」では、人びとが歴史の〈反復〉から政治的な力を汲みとる様相を考えました。「『絶対貧困』のほうへ」では、この〈反復〉を手がかりに、貧困問題が後景に退いたと考えられがちな現代においても、蜂起は起りうると示唆しました。 3部「『労働』とユートピアのゆくえ」には、〈労働〉の現状を概観しつつ、そこからの脱出という労働者の夢(ユートピア)を描き出し、未来への手がかりを探る論考を入れました。「レンタル・ライフ」では、〈認知資本主義〉論を紹介して、今日の〈労働〉の一部が〈余暇〉と交じり合う様子を確認しました。「労賃とは別の仕方で」では、『グリュントリッセ』に出てくる、資本主義とは異なる〈富〉とはどういうものかを、検討しました。「労働と芸術」では、ベンヤミンを手がかりに、労働/芸術という区分が揚棄された世界の可能性を探りました。「可能世界のドゥルーズ」では、イメージと言葉のずれが消えたユートピアを、ネグリのテキストを通して、とりだしました。 松本潤一郎(2019年10月12日) |
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