香港人民に連帯する
- 2019年 10月 30日
- 評論・紹介・意見
- 大谷美芳
香港人民が中国の抑圧に抗して闘争している。しかし、香港人民に対する連帯は弱い。中国をまだ社会主義と見ているためか? 背後にアメリカ帝国主義がいると見ているためか? 我々は、ベトナム反戦闘争の若い時代、ソ連の侵略と抑圧に抗するチェコ人民の闘争に連帯した。この瑞々しい感覚を今も持たないといけないと思う。
①中国の民族闘争から覇権主義に変質・転化
中国は、かっては社会主義国であった。しかし、現在はアメリカと覇権を争う帝国主義国である。民族解放・民主主義革命の後に社会主義革命に失敗し(文化大革命)、官僚制国家資本主義に変質・転化した。この結果、香港問題も台湾問題も変質・転化した。
かっては、香港返還はイギリスの支配からの領土の回復であり、台湾統一はアメリカに従属した政権の打倒による国家の統一であった。外国帝国主義の植民地主義と侵略に反対する民族闘争、民族と国家の独立と主権のための闘争であった。
しかし、現在は、中国帝国主義による抑圧と併合と覇権主義である。香港の「一国二制度」の否定=直接的統治は、民主主義を圧殺し、それを通して国内の人民の民主主義闘争と少数諸民族の民族闘争を封じ込める。帝国主義的ナショナリズム(「中国の夢」「中華民族の偉大な復興」)の国威発揚である。台湾の統一はより大規模なそれである。
中国による香港と台湾の併合は、他国の独立と主権を侵害し、他国を従属させ支配する突破口となる。同時に、アメリカとの帝国主義的争闘における勢力圏の拡大を意味する。言わば21世紀のズデーテン併合とオーストリア併合になる。
②香港と台湾の自己決定権を支持
香港も台湾も、人民の闘争は「自己決定権」とまとめられる(「香港人」「台湾人」の含意)。民主主義のために、香港では中国国内での自治を守ろうとしている。台湾では中国からの国家的な分離と独立を守ろうとしている。「自己決定権」は、「民族自決権」も包含し、かつ国家的な分離と独立も包含する大きな概念と言える。
香港と台湾で人民が闘争で勝ち取ってきた民主主義は、中国とは比較にならないほど大きい。確かに韓国・シンガポールと共に「NIEs」「アジア四小竜」と言われた資本主義的経済発展が基礎にあり、ブルジョア民主主義である。しかし、香港と台湾の「自己決定権」は、中国帝国主義の、対内的な人民支配と少数諸民族抑圧、および対外的な他国家と他民族の従属化と抑圧に対して、強く反対する力となっている。全世界、とりわけ東アジアの人民は香港と台湾の「自己決定権」を支持するべきである。
ソ連や中国は、ツァー帝国や中華帝国を、その大民族(ロシアと漢)による少数諸民族の支配と抑圧を受け継いでいる。少数諸民族の「民族自決権」を、ソ連は有名無実し、中国は「分裂主義」と完全否定している。その領土と国境は神聖不可侵ではない。
ソ連帝国主義は、東ヨーロッパの従属諸国および国内の被抑圧諸民族と人民の民族闘争および民主化闘争で崩壊し、多くの独立主権国家が誕生した。現在の香港人民と台湾人民の闘争は、前途に大きな困難があるだろうが、中国国内のウィグル・チベットなど被抑圧諸民族および漢族人民に、中国帝国主義に対する民族闘争と民主化闘争を呼びかけ、それに連帯していくことで、中国の民主化と社会主義革命を引き寄せるだろう。
③東アジアの新情勢 反帝反覇権と自己決定権
アメリカは、香港と台湾の人民闘争を、中国に対する帝国主義的覇権争闘に利用している。シリアでもベネズエラでも、アメリカだけでなくロシアも中国も、帝国主義は人民の闘争を覇権争闘に利用している。
東アジアの情勢は大きく変化した。多くの民族資本主義国が存在する。韓国・朝鮮と台湾とASEAN。開発独裁による資本主義化(一部は官僚制国家資本主義)とそれに起因する人民の民主化闘争が、新植民地主義的従属から脱却する原動力となった。覇権を争闘する4つ帝国主義が存在する。衰退する超大国・アメリカ、それと同盟する日本、勃興する超大国・中国、それと連係するロシア。帝国主義と民族問題は依然として重要である。
東アジアの人民は、両方の帝国主義とその覇権主義に反対して闘争し連帯しなくてはならない。最前線がいくつか存在する。香港と台湾。中国の被抑圧諸民族の闘争、その「自己決定権」には、漢族との平等と自治から国家的な分離と独立まである。沖縄人民の闘争、その「自己決定権」には、軍事基地の撤去と自治の拡大から分離と独立まである。韓国・朝鮮の南北接近・統一も「自己決定権」であり、人民の闘争は、日本に植民地支配と侵略の完全な謝罪と賠償、それを反映した日韓条約改定と日朝条約締結を要求するだろう。
民族資本主義国の人民は、反帝・反覇権と自国のブルジョア階級に対する闘争を結びつける。日本と中国のプロレタリア階級は、自国帝国主義打倒の社会主義革命のために自国に向けた反帝・反覇権と「自己決定権」を支持する。これが大きな課題だろう。(おわり)
2019.10.29
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9126:191030〕
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