スタディルームの執筆一覧

〈書評〉向井雅明著「考える足―「脳の時代」の精神分析」

著者: 河野一紀

科学技術の進歩は、あらゆるものを可視化する。それは自然現象だけでなく人間をも見透かし、今では頭蓋に覆われた脳の状態や活動までが、まだまだ限定的にではあるが、イメージングによって把握されてしまう。そして、それらのデータをも

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露木裕喜夫 ・ 言葉とともに身体で分からせる――『土に生きる』第10号を手にして(11)

著者: 野沢敏治

 本号も筆耕者がいてガリ版刷りの印刷となる。1983年10月20日発行。 本号もカットが楽しい。10歳の子供のカットが混じっている。露木裕喜夫が三芳村共同館で撮られた写真があり、中牧弘子がその横に何かの野菜を持った「先生

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一度、原点に帰らねばならない ――『土に生きる』第9号を手にして(10)

著者: 野沢敏治

 発行日は1982年7月15日。奥付では1981年となっているが、誤植であろう。本号でも第6号と同じく三村瑶子によって草花のカットがたくさん添えられている。    消費者の女性の投稿は生産者に比べると筆まめであり、洗練さ

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配送なくして、食べることはできない――『土に生きる』第8号を手にして(9)

著者: 野沢敏治

発行日は1981年5月31日。 1981年という年を年表で見ると――土光敏夫による第2次臨時行政調査会が始まり、俗にいう「小さな政府」路線が敷かれる。閣議で生産者米価が60キロ1万7756円と決定する。審議会の答申を受け

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2012.11.24現代史研での報告  岩田世界資本主義論をどう発展させるか

著者: 矢沢国光

1 岩田世界資本主義論・原理論の意義 岩田氏の「資本主義は、特定の諸国の特定の資本主義的産業部門を基礎とし、種々雑多な諸生産を国内および国外に広汎に配置するような全体としての世界市場的過程として以外に実在せず、まさにその

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(現代史研究会用レジュメ)報告・純粋資本主義論と岩田氏の世界資本主義論

著者: 櫻井毅

*これは研究会用のレジュメです。詳細な展開は研究会での報告の中で述べられることになりますので、その点ご承知下さい。(研究会事務局) (現代史研究会 2012.11.24.) 0、はじめに 1、問題の輪郭 岩田は宇野の純粋

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10.20現代史研究会レジュメ:ハーヴェイのサブプライム世界恐慌論とポストンの労働時間論

著者: 伊藤 誠

ハーヴェイのサブプライム世界恐慌論とポストンの労働時間論 2012.10.20.  伊藤 誠 1 ハーヴェイのサブプライム世界恐慌論 デヴィッド・ハーヴェイは、一九三五年にイギリスのケント週に生まれ、ケンブリッジ大学で地

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費用便益分析で使われる社会的割引率はその存在自体が誤りである

著者: 藤﨑 清

公的な事業における事業実施の適否や優先度の判断資料を提供できる手法として費用便益分析があるが、その現行算定法には基本的な誤りがある。このことは、当サイトの「スタディルーム」に掲載された小文「お金が支配する世の中」(201

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放射線のリスク・コミュニケーションと合意形成はなぜうまくいかないのか?(8) ――山下俊一氏はリスコミをどう理解してきたのか?

著者: 島薗 進

長瀧氏の指導の下、その「手足となって」働いた(下記資料 での本人の弁)山下俊一氏は、とにかく住民を「安心させる」ことを至上命題としてチェルノブイリでの検査・調査にあたった。「すぐに感謝されたのはセシウ ム137をホールボ

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放射線のリスク・コミュニケーションと合意形成はなぜうまくいかないのか?(7) ――「不安をなくす」ために調べない知らせないという「医療倫理」?

著者: 島薗 進

だが、重松委員長によるIAEAレポート(1991年)が出たこの時まで、長瀧氏はチェルノブイリでどれほどの診療経験、調査経験があったのだろうか。最初にチェルノブイリに赴いてから、どれほどの時間も経っていない。その間に現地に

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放射線のリスク・コミュニケーションと合意形成はなぜうまくいかないのか?(6) ――「不安をなくす」ことこそ長崎の医学者の任務という信念

著者: 島薗 進

福島原発災害の放射線健康影響対策では長崎大で師弟関係にあった長瀧重信氏と山下俊一氏が多大な権限を得て対応してきている。政府と福島県が対策を取るに際して、それぞれ長瀧氏と山下氏が中心的な助言者となり、責任者にすえられてきた

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放射線のリスク・コミュニケーションと合意形成はなぜうまくいかないのか?(5) ――「安心」こそ課題という立場が排除するもの

著者: 島薗 進

福島原発事故以前に放射線の健康影響をめぐるリスクコミュニケーション(「リスコミ」と略す)の考え方は危ういものになっていた。多くの市民(日本人)がリスク評価の能力が劣っていると考える専門家が多いことはすでに述べた(2)。こ

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放射線のリスク・コミュニケーションと合意形成はなぜうまくいかないのか?(4) ――安全・安心をめぐる混迷

著者: 島薗 進

放射線健康影響のリスクについて、その方面の専門家が市民の「不安をなくし」「安心させる」企てに意図的に取り組んできたさまを見てきた。市民がリスクを適切に認識することができず、「安全なのに安心できない」ので、さまざまな手段を

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放射線のリスク・コミュニケーションと合意形成はなぜうまくいかないのか?(3) ――「安全・安心」という言説

著者: 島薗 進

放射性物質が福島県を初めとして東日本の広い範囲に飛散し、多くの住民が放射能の健康被害を懸念したとき、ひたすら「直ちに健康に影響はない」「安心しなさい」「不安をもってはいけない」と唱える専門家がいた。政府寄りの放射線専門家

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放射線のリスク・コミュニケーションと合意形成はなぜうまくいかないのか?(2) ――「リスク認識が劣った日本人」という言説

著者: 島薗 進

政府側に立つ放射線の健康影響の専門家は、年 100mSv以下では健康被害はほぼ無視してよいという発言を繰り返したが、他方、100mSv以下でも健康被害はあり、そのためにできるだけ被曝線量を避けるべきだという科学的知見も多

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放射線のリスク・コミュニケーションと合意形成はなぜうまくいかないのか?(1)――専門家側に責任はなかったのか?

著者: 島薗 進

福島原発事故が1年半が経過しようとしている。放射線の健康影響について、この間に膨大な情報がやりとりされた。だが、未だにどこに真実があるのか、よく分からない。そう感じている人が多いだろう。今後、どれほどの健康被害がありうる

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フランス革命後のドイツ社会思想――フォルスター・ヘルダー・フィヒテ・カント・ノヴァーリス(15)

著者: 二本柳隆著(石塚正英編)

6.結語 フィヒテの「フランス革命論」の展望  1800年代のフィヒテは、ナポレオン台頭のもとにプロイセンを地盤として、著しい愛国主義者(・・・・・)いとしてナショナリズムを展開していくことになるが、1793年のフィヒテ

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吉本隆明の対幻想批評―神仏虐待儀礼と母方オジ権を事例に(下)

著者: 石塚正英

2 対幻想批評―その2― 吉本隆明『共同幻想論』の「母制論」(151~153頁)にこう記されている。             *        * わたしのかんがえでは<母系>制の基盤はけっして原始集団婚にもとめられない

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フランス革命後のドイツ社会思想――フォルスター・ヘルダー・フィヒテ・カント・ノヴァーリス(14)

著者: 二本柳隆著(石塚正英編)

5.国家体制の変更とその可能性  国家はやがて消失していくものだと説かれていたが、当時、フィヒテの視座では、これまでの国家制度はどう捉えられていたのだろうか。フィヒテはいう。「人は実際、今日の諸国家の体制とこれまでの歴史

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吉本隆明の対幻想批評―神仏虐待儀礼と母方オジ権を事例に(上)

著者: 石塚正英

 はじめに  吉本隆明『共同幻想論』(河出書房新社、1968年)の「巫女論」に次の文章が読まれる。「シャーマンでは、自己幻想が問題であるがゆえに、(中略)かれの自己幻想が、他の人間であっても、神であっても、狐や犬神であっ

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低周波音問題とベートーヴェン研究―学問の道を歩む(10)

著者: 石塚正英

 或る年の8月27日に、府中市で「低周波音問題交流会」という催しがあった。未来文化研究室を運営する西兼司氏が主催したもので、低周波被害に苦しむ人々とともに低周波音について調査・研究していこう、という趣旨の会合だった。これ

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公害企業に勤める主人 と 安全な食べ物を求める主婦――『土に生きる』第7号を手にして(8)

著者: 野沢敏治

 本号も内容は充実している。1980年9月20日発行。本号からタイプ印刷になる。 1980年と言えば、8月にポーランドのグダンスク造船所でストライキが発生し、労働者が政府に労働組合や言論の自由を求めている。1950年代か

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フランス革命後のドイツ社会思想――フォルスター・ヘルダー・フィヒテ・カント・ノヴァーリス(13)

著者: 二本柳隆著(石塚正英編)

4.フィヒテの社会の優位――フンボルトと対比して  フィヒテの国家に対する個人の優位という視座は、実は、フィヒテの社会観と密接に結びついていた。フィヒテはいう。「よき自然と、自分を社会的に生まれさせてくれた幸福な運命とに

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