法の不遡及の原則について
- 2019年 12月 25日
- 評論・紹介・意見
- 法の不遡及の原則熊王信之
現在、ちきゅう座において「法の不遡及の原則」を巡り論議があるようですので、これについて法律学を専攻し、また行政庁における実務についていました経験から少し述べてみたい、と思います。
まず、端的に申しますと、「法の不遡及」とは、前法下での特定行為に対し、後に制定された法令を適用することは「一般的」には出来ない、と言う「原則」です。 例えて申しますと、「後だしじゃんけんはダメよ」と言うことです。 しかしながら、「原則」であるからには、例外もある、のが事実です。
これについて、日本の実定法に関り詳細に説明されたものを下記に引いておきます。 即ち、原則を破り、極めて例外的に法令の円滑な適用を企図した遡及適用を行う場合もある、と言うことなのです。 勿論のことに、当該法令に基づかない恣意的遡及適用等は、違法であるのは当然です。 従って、実定法には「経過措置」等として例外的規定がおかれるのが通例です。
参議院法制局 法制執務コラム ◆遡及適用と経過措置
https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column009.htm
参照先にあるとおりに、絶対に例外にはならないのが、刑罰法規であり、日本国憲法にはその旨が定められていますので、前法下に合法であった事実に後法を適用して処罰することは出来ません。
即ち、「第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。」と。
しかしながら、掲記の参照先にあるとおり、刑罰法規以外では、「たとえ既得の権利や地位を侵害することがあっても、より高次の公共の福祉の観点から制度の改変が求められる場合があり得ます。」
翻って、国際人権規約の遡及適用については、これを禁じる法理は無く、寧ろ、(A規約)第25条と(B規約)第47条において規定されたとおり、遡及適用に依る救済措置を忌避すべき事由を同条約中に見出す試みをも禁じたものと解する他はありません。
経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約 (A規約)
第二十五条 この規約のいかなる規定も、すべての人民がその天然の富及び資源を十分かつ自由に享受し及び利用する固有の権利を害するものと解してはならない。
市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)
第四十七条 この規約のいかなる規定も、すべての人民がその天然の富及び資源を十分かつ自由に享受し及び利用する固有の権利を害するものと解してはならない。
因みに、「一銭五厘」で徴兵されて、歩兵第八連隊第一大隊第一中隊第一小隊の一歩兵として「比島攻略作戦」の第二次バターン半島攻略戦にてサマット山麓で米比軍陣地目指して突撃時に左脚貫通銃創を受けた亡父は、鋳鉄で出来た金鵄勲章をたった一個貰ったのみ。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9296:191225〕
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