トランプ大統領、最後の1年 (4) イスラエル入植地拡大を承認する中東和平案―BBC報道から
- 2020年 1月 30日
- 評論・紹介・意見
- ♠イスラエル中東坂井定雄
トランプ米大統領は28日、ワシントンでネタニヤフ・イスラエル首相と会談後、トランプ政権としては初めてのパレスチナ紛争の解決案を発表した。トランプは記者会見で「パレスチナ人もイスラエル人も、彼らの住まいから追い立てられることはない」と語ったが、そのポイントは、国際法を踏みにじって強行されている占領地を含め、エルサレム全市をイスラエルの首都と承認し、ヨルダン川西岸地区と東エルサレムのイスラエル占領地での入植地拡大を承認することだ。トランプは歴代米大統領の中で、際立って親イスラエルだ。パレスチナ紛争の国際報道では、公正でブレないと思う英国放送協会(BBC)の国際電子版の報道を、以下に紹介しようー
「トランプ、長らく待たれていた中東和平案を発表」
トランプ米大統領は、パレスチナ独立国家の承認とヨルダン川西岸地区の入植地を含むイスラエルの主権を提案した。
ホワイトハウスで、ベンジャミン・ネタニヤフ・イスラエル首相と共に立ったトランプ氏は、この提案は「パレスチナ人への最後のチャンスになるかもしれない」と述べた。
パレスチナのマハムード・アッバス議長はこの提案を「陰謀だ」とこき下ろした。
アッバス議長は「私はトランプとネタニヤフに言う。エルサレムは売り物ではない。われわれの権利のすべては、売り物でも取引するものでもない。そしてあなたの取引は陰謀であり、見逃すことはできない」と西岸ラマラからのテレビ演説でかたった。
▼トランプの“現実的”和平提案に対する笑顔と悲嘆
世界最長の紛争の一つの解決を目指す提案の青写真は、トランプ大統領の娘婿のヤレド・クシュナーの下で作成された。
ガザでは28日朝、何万人ものパレスチナ人が抗議デモを行い、占領下西岸地区では、イスラエル軍が増強配置についた。
トランプ氏とネタニヤフ氏のこの共同声明は、両氏が自国で政治的挑戦に直面しているときに発表された。トランプ氏は米上院での弾劾対象となり、ネタニヤフ首相は28日、汚職事件の無罪証明に苦労したばかりだった。両氏とも、不正を否定している。
フリードマン駐イスラエル米大使は、この和平提案の発表タイミングは、どちらの政情にも配慮したものではなく、“機が熟した”ためだと語った。
一方、報道によると、ネタニヤフ氏は、占領下西岸の30%の領土併合を2月2日の閣議で投票するという。
西岸の入植地には40万人のイスラエル人が住んでおり、これらの入植地は国際法上違法だとみなされているが、イスラエルは反論している。
フリードマン大使は、イスラエルは併合を進めることを「全然待っていない」と語った。
▼トランプ提案の要点
「今日イスラエルは、和平への大きな一歩をした」とトランプはホワイトハウスで、当局者たちと報道関係者たちに向かって次のように話したー
「私の提案は、双方にウイン・ウインの機会を与えるものだ。それは、パレスチナ人の国家がイスラエルの安全保障に対する危険を解消する、現実的な2国家方式だ」
トランプ提案の要点は以下の通りー
〇トランプ提案がイスラエルの一部とみなす地域への、イスラエルの主権を承認する。それには、イスラエルが望んでいる領土的妥協とトランプが述べた概念地図も含まれる。
〇この地図にはパレスチナの領土の2倍以上が含まれ、東エルサレムをパレスチナ人の首都とし、米国は大使館を置く。これにたいしパレスチナ解放機構(PLO)は、トランプの計画では、「歴史的パレスチナ」の15%だけのパレスチナ人の支配でしかない、と指摘する。
〇エルサレムは“イスラエルの「不可分の首都」とイスラエルは主張している。パレスチナ人は、1967年の中東戦争でイスラエルが占領した東エルサレムを、将来のパレスチナ国家の首都であると主張し続けている。
〇「パレスチナ人もイスラエル人も、自らの住家を追い出されることはない」とトランプ提案は述べている。それは、東エルサレムとイスラエル占領下のヨルダン川西岸地区に建設されたイスラエル人入植地は存在続ける、ということを示唆している。
〇イスラエルはエルサレムの聖地の保全に、ヨルダン国王と協力する。
(注)東エルサレム:エルサレム市東部。現在のエルサレム市の20%を占め、神殿の丘など旧市街を含む(了)
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〔opinion9403:200130〕
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