「あらゆる学校を休校にする」ということ
- 2020年 3月 6日
- 評論・紹介・意見
- 平林 浩
行政の長である内閣総理大臣、安倍晋三がいきなり「全国の学校を休校にする」と発表したとき、驚くと同時に腹がたった。
インフルエンザの流行で学級閉鎖、学校閉鎖などはよくあることで、状況によっては子どもの健康を守るために必要なことではある。
新型コロナウイルスの感染は広がっているが、一例もない県もあるというのに、全国の学校の一斉休校だという。あまりにも強引である。
これは最も基本的な「教育を受ける権利」を奪うことになる。それが最初に思ったことだった。そういうことを考えた上でのことだろうか。学年の最後にクラスの友達と遊びたいと思っている子どもたち、子どもたちに最後の授業をしたいと思っている教師を思ったたろうか。思い出に残る卒業式を創ろうとしている子どもたちに思いを馳せただろうか。そのような基本的人権を制限するのだということを念頭においていたのだろうか。
もしそうだったら、日本の国土に生活する人びとに、できる限りの説明をしたはずである。なのに何の説明も無かったのだ。休校にするかどうかは各地の自治体の責任で行うのではなぜいけないのかも説明がなかった。
ひとりひとりの人間が人間として生きていく基本的な権利や自由については、日本国憲法にはっきり書かれている。その行使を制限するということは重大なことである。感染症の予防などに限って、非常事態宣言というかたちで、国家行政がそれを行って、権利や自由の制限を行うことは法律にもあるが、それは慎重に慎重を重ねてほしい。
今回の発言はそうではないのに、ほとんどそれに近いようにうけとられている。要請だから罰則はない。それでも多くはそれに従うだろう。案の定、多くの自治体は休校を決めた。1人の感染者もいない県でも、離島でも、山間の地域でも。
学校が休みになっても富裕層の子どもたちは学ぶことに困らないだろう。しかし学校しか学ぶ場がない子ども達、親が働かなくては生活が成り立たない家の子どもたちはどうするのか。ここでも格差が拡がる。
この文を書き終わった3月3日の新聞には世の中の混乱ぶりが、たくさんの記事になっている。
こんな総理大臣を私たちはいつまで雇い続けなくてはならないのだろう。
(その後、休校にしない学校が、22自治体399校あることがわかった。〈4日8時文科省調べ〉東京新聞より)編集部
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〔opinion9512:200306〕
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