「布マスク2枚」の次は何ですか~税金なんですからムダ使いしないでください
- 2020年 4月 5日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子
4月1日、首相は、小さめの布マスクをかけて、会議に出ていた。あんな隙間があっては、感染予防にはならないだろう。衆議院の本会議でも、議員は一斉にマスクをつけ始めた。民主党政権時代、2011年3月11日の東日本大震災、福島原発事故対応で記者会見する枝野官房長官が連日作業服であったことを思い出す(確か5月1日に、作業服を脱いでいた)。いずれも、パフォーマンスの一つに見える。まさに「悪夢の安倍政権時代」に、さまよう国民になりかねない昨今の様相である。
首相は、対策本部会議でも、参議院決算委員会でも、各住所?(一世帯?)に、布マスク2枚を配布するというのだ。いまさら、といってもいつになるかわからない、いや、再来週からとは言っているが、各家庭に2枚の布マスクを届けて、何が変わるのか。その経費と人手はもっと有効に使ってほしい。約5000万世帯、空き家が約800万・・・。たださえ人手不足の郵便局の配達員の苦労が思いやられる。
4月2日、通院の日、風も強かったので、短い距離ながらタクシーに乗った。運転手さんが「病院も四月から、入り口で検温と消毒を始めたそうですよ、さっきのお客さん言ってました」と話し始めた。「政治のことは言いたくないけどね、マスク2枚って、どういうことですか。うちは五人家族なんだけど・・・おかしくないですか」に始まり、親しい飲み屋の店主が、もう駄目だ、無利子たって、借金したら返さないかんもの、できやしない・・・と怒っていたそうで、マスク2枚より先にやることがあると嘆いていた。
これが大方の国民の反応ではないか。この「マスク2枚」には、マスメデイアも、素早く反応し、疑問を呈するコメンテイターの発言も多い。一方で、「どこで感染が拡大しているか」「非常事態宣言がいつ出されるか」、「医療崩壊が起こるとどうなるか」などが話題にもなっているが、市民の一人として、つぎのような不安について、政府や自治体はどういう対策を実践しているのか否かを、明確に発信してほしい。さらに、行政ができ得る施策や発表しない情報をキャッチし、メディアは、取材・調査して報道してほしいのだ。
4月3日、厚労省「ガイドライン」が発表され、重症患者を優先して治療する必要から、都道府県が用意する宿泊施設に陽性で無症状や軽症者は、自宅か宿泊施設で2週間療養せよ、ということらしい。
・無症状、軽症者でも、高齢者、妊婦、基礎疾患がある人は、対象外とするという。
⇒入院させるということならば、重症者と合わせての病床の確保はできているのか。
・高齢者、医療従事者、福祉・介護職員とその同居者は優先的に宿泊施設で療養するという
⇒その宿泊施設は確保されているのか。
・自宅療養となった人は、高齢者などと同居している場合は生活空間を完全に分けたうえで、自己申告による健康チェックして、自治体が管理するという。
⇒住宅事情から、現実的には無理な要請ではないか。介護者を限定するというが、一人世帯、二人世帯、要介護者がいる世帯など様々な事情を抱えている世帯の想定ができているのだろうか。
いずれにしても、都道府県に丸投げで、中央官僚の机上のガイドラインに思えてならない。宿泊施設にしても、各都道府県にある国の宿泊施設や研修所などを率先して開放したうえで、民間のホテルなどの協力を要請するのが順序ではないか。4日の報道によれば、裁判所の書記官研修、国税庁の新人研修が、それぞれの宿泊施設に合宿して始まる予定だったが、和光市長や埼玉県知事の要請で、延期、オンライン研修などに切り替えることになったという。当然のことで、こういった施設こそが開放されるべきなのではないのか。クルーズ船の下船者に提供していたこともあったのだから。
そして昨3日には、「現金給付一世帯30万円」という政府方針が示された。自己申告によるのだそうだが、その具体的な条件までは示されていない。「一定水準の減収」などを見極めるのは市町村の窓口だから、その煩雑さ、公平性の担保、不正防止など問題は山積みである。一律10万円給付などの与野党の要請を「30万」とするのも、現実の給付現場をしらない政治家の発想である。
ちなみに、安倍首相の布マスクは、やや大判になった、専門家会議の尾身副座長のマスクは鼻を覆ってなかった、などネット上をにぎわっているようだが、よく見ればなるほどと。「マスク2枚配布」批判、テレビの報道番組でも連日話題になり、新聞の社説にまで登場した。「アベノマスク」は、ネット上で拡散しているが、「言い出しっぺ」は、なかなか鋭いと感心もしている。
北側のモクレンが咲き始めた。草木のいとなみの確かさをおもいつつ
初出:「内野光子のブログ」2020.4.4より許可を得て転載
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〔opinion9615:200405〕
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