韓国総選挙での文在寅与党勝利に祝意
- 2020年 4月 17日
- 評論・紹介・意見
- コロナ澤藤統一郎韓国
聯合ニュースの伝えるところでは、韓国主要紙の本日(4月16日)朝刊ヘッドラインは、以下のとおりである。
<朝鮮日報>共に民主党が前例なき圧勝 与党陣営180議席以上獲得
<東亜日報>「国難克服」に力を添えた民心 与党が圧倒的な過半数確保
<中央日報>共に民主党が圧勝 コロナ禍で民心は安定を選択した
<ハンギョレ>共に民主党170議席前後 民主化後で与党が最大の勝利
<京郷新聞>共に民主党が「単独過半数」 与党陣営180議席獲得の可能性
<毎日経済>与党が圧勝 国民は野党を審判した
<韓国経済>共に民主党 170議席以上を席巻…巨大与党独走体制
韓国の国会は一院制である。議席の定数は300、小選挙区比例代表並立制の選挙制度で議員の任期は4年。文在寅政権与党である「共に民主党」は、2016年4月の前回総選挙では、小選挙区110、比例13の合計123議席獲得にとどまっていた。比例の得票率は25.5%で3位だったという。今回総選挙直前には、「共に民主党」は120議席、連立与党の「共に市民党」の8議席を加えて、128議席の少数与党であった。
文政権の経済政策に目に見えた成果が上がらず、政権運営にも閣僚不祥事などがあって、国民の与党批判のなかで迎えるかに見えた今回総選挙だったが、新型コロナ問題で情勢は一変したという。
与党「共に民主党」は、友党「共に市民党」と合わせて改選前の128議席から50議席増の180議席を獲得して圧勝した。これが、各紙のヘッドラインとなっている。文在寅大統領は、自信をもっての政権運営を続けことになるだろう。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で不安が高まる中、有権者が現政権によるコロナ対策の実績に高い評価を与え、安定的な国政運営を望んだ結果とされている。確かに、文政権のコロナ対策は素早く果敢で、創意にあふれたものだった。WHOの賞讃するところでもある。次の記事における彼我の差は、どこから出て来るのだろうか。
本年2月段階で既に一日1万件を超すPCR検査を実施していた。それだけの国家と国民の力量が備わっているのだ。ドライブスルー方式や電話ボックス型検査所の設置など、現場のやる気と創意が伝えられている。
検査数の多さも世界を驚かせている。韓国疾病管理本部は13日基準で検査件数を51万4621名と発表していたが、実際はそれよりはるかに多い86万1216名であったことが報告された。13日行われた中央防疫対策本部チョン・ウンギョン本部長のブリーフィングによると、統計は疾病情報統合システムから報告された、疑わしい患者や症状が出ている検査対象者の数であり、医療機関や保健所からの申告件数を収集しているため、すでに感染が確定された患者などに対する調査件数は除いた統計を発表していたという。韓国全体の検査件数は日本をはるかにしのぐ件数行っていたこと示しながら、さらに積極的に国民の検査を行うとブリーフィングを締めくくっている。
医療崩壊を懸念し、数日間は家で様子を見るなどをすぐに検査を行わない日本の正反対を行く韓国は、疑わしきは即検査をして対処する方針だ。(ニューズウィーク・日本語ウェッブ版・4月16日)
「韓国でできることがなぜ日本ではできないのか」と、問われている。当然できるはずではないかという思い上がりは禁物である。政権の姿勢が異なる。国民の力量も意欲も異なるのだ。日本が学ぶべきことが多々あるとしるべきである。
もっとも、韓国の手法がすべて学ぶべきものとも思えない。とりわけ、国民のプラバシーをさらけ出させての感染経路探査には、果たしてそこまでの必要があるものかと首を傾げざるを得ない。一歩間違うと中国型の統制社会となりかねない。この点の検証は、これからも続くことになろう。
とは言え、韓国国民は、政権選択を国民の生命に関わるものと受けとめたうえで、高い投票率において現政権与党に支持を表明した。<ハンギョレ新聞>の見出しのとおり、「韓国民主化後における与党の最大の勝利」として、祝意を表したい。
(2020年4月16日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.4.16より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=14686
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9656:200417〕
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