再び児玉龍彦氏の解説に耳を傾ける。
- 2020年 4月 25日
- 評論・紹介・意見
- コロナ澤藤統一郎
明けても暮れても、コロナ・コロナである。うっとうしくて気の晴れる間がない。信頼できる政府を持たない民の一人としての深刻な悲哀という実感。嘆きと不満の対象はアベ政権だけではない。小池百合子都政も同断である。
政治的リーダーたるもの、この非常の事態には専門知を集約して的確な対策を講じなければならない。その対策が、住民の生活に影響を及ぼす場合には、その対策の適切性、必要性を、懇切に説明して納得を得なければならない。それがまことに不十分だから、イライラが募る。
政府専門家会議の説明では、対策の基本はクラスター潰しであったはず。だから、「クラスターの発見と、これを結節点とする人的な接触経路を見定めることに全力を集中しなければならない」「むやみにPCR検査対象を拡大することに意味はない」と言っていたのだ。しかし、感染経路不明の感染者がこれだけ増加した今、クラスター潰しの基本戦略は失敗したことになるのではないか。
にもかかわらず、専門家会議は「基本戦略は失敗した」とも、「基本方針を転換する」とも言わない。相変わらずPCR検査対象を絞ったまま、「人的接触の機会を8割減らせ」「全ては、民の自粛努力にかかっている」「蔓延拡大は自粛努力の足りない民に責任がある」と言うのだ。政府も都も、これに倣っている。本当にこれでよいのだろうか。
小池百合子が最も胡散臭い。東京五輪の実施にこだわり続けてコロナ対応の時期を逸した失態を覆い隠すための強気の発言を重ねているようにしか見えない。しかも、東京都の金をふんだんに使ってのメディア露出は、図々しいにもほどがある。鉄面皮な選挙運動ではないか。コロナ以上に、イライラが募る。
あんな政府や、こんな都政を支えている専門家には批判が強い。外出禁止の予防効果に疑問を呈する専門家もいる。もっと有効な打つべき手があるというのだ。たとえば、児玉龍彦(東大先端科学技術研究センター名誉教授)さん。
「日経ビジネス」(4月17日)の記者(白井咲貴)が、児玉龍彦インタビューのリードをこうまとめている。
「クラスター追跡や外出自粛で、日本は感染拡大を防げるのか。東京大学の児玉龍彦名誉教授は『日本は非常に古い対策モデルから抜け出せていない』と言う。『大規模検査、隔離、GPS追跡』という東アジア型の対策の必要性を訴える児玉氏に、解説してもらった。」
以下、「日経ビジネス」が紹介する児玉さんの解説(抜粋)のさわりである。
外出自粛は一過性の患者減らしで、時間稼ぎにすぎません。また緩めると患者数が増えます。みんな自粛は2週間程度かなと勘違いしているようですが、最低でも3カ月はかかります。
(日本は、クラスター対策や外出自粛要請など)非常に古いモデルの感染対策から抜け出せていない。東アジアは遺伝子工学と情報科学に立脚した新しいモデルで対応しています。
日本のように一人一人聞き取って紙に書いて、というのは非常に古い調査方法です。今、世界ではGPSによる追跡が当たり前です。誰がどこに行ったのかがつぶさに分かる。韓国やマレーシアなどもGPSを使っています。これらの国では感染者は出ていますが、すぐその人の行動範囲を特定して、周りで感染が出ていないか検査しています。
マレーシアでは、個人に「パンデミック番号」という番号を振って、保険証などとはひも付けられないようにしています。だから、日本でいえば「マイナンバー」で管理してはいけないわけです。
(日本がこれからすべきことが)4つあります。1つ目は病院や介護施設でのPCR検査の徹底。2つ目はドライブスルー型の検査をすること。日本財団は「船の科学館」などで1万床のベッドを用意するようですが、陽性ならそこに入所してもらえばいい。このように、症状が軽い感染者をどんどんさばく施設が必要です。3つ目は、GPS追跡です。個人情報や倫理を守って実施することが必要です。4つ目は社会インフラを支える人が感染しないような配慮をすることです。ガス、水道、電気、輸送、食品など、社会生活のインフラを支える人を重点的に守る。そういう方たちはPCR検査もすぐできるようにするし、(過去に感染したことがあるかを調べる)抗体検査もすぐできるようにする。
抗体の中には2種類あって、IgMという感染初期に出てくる抗体と、免疫ができてくると出てくるIgGという抗体があります。IgMの数値が上がっている人はまだウイルス感染が続いている可能性が高いので隔離する。IgGの数値が上がってくれば感染した後に治っている、というのが分かり、社会復帰もできる。この両方を測れて、しかも大量に処理できる仕組みをつくることが我々の関心事です。PCR検査と抗体検査は一体でやらないとだめです。
政府や都の言うこととは真っ向対立する立論であり提言である。多々、耳を傾けるところがあるではないか。
(2020年4月24日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.4.24より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=14731
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9684:200425〕
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