トランプ大統領、最後の1年(14) 新型コロナ対策で大きく後れ、増え続ける世界最悪の感染者数 ―WHOと中国を攻撃したが孤立
- 2020年 5月 27日
- 評論・紹介・意見
- ♠トランプ坂井定雄新型コロナウィルス
新型コロナウイルスの世界感染状況は5月23日現在、全体で感染者521万5253人、死者33万8265人。1位の米国は感染者160万1434人(31.7%)、死者9万6007人(28.3%)。数字は、世界各国が毎日の感染者数、死者統計で信頼し、使用している米国ジョンズ・ホプキンス大学の統計。裕福で、医療技術も高く、普及している超大国で、感染者、死者数はともに増え続けている。米国の感染者、死者がなぜこれほど多いのか。対策実施に大きく遅れたトランプ政権の大失政が原因だが、トランプは、国内の批判、追及を避けるため、中国とWHO(世界保健機関)に責任転嫁しようと必死だ。
トランプ政権が、中国とWHO(世界保健機関)が毎日発表してきた武漢についての感染者数と病院急設、医療従事者の集中派遣の事態に対応していれば、米国でこんなに感染者が増加することはなかったはずだ。上に紹介したジョンズ・ホプキンス大学の「Timeline of Event」の記録の一部を紹介する。
1月6日:武漢の医師と看護師13人が患者13人の手術
1月7日:この病原を新型コロナウイルスと判定
1月13日:潜伏期間14日と判定
1月14日:肺炎専門医が人間から人間への感染発表
1月23日:武漢に交通遮断令施行 厳しい封鎖状態に
1月23日:武漢当局、10日以内の新病院建設を発表
1月23日:数百人の医学スタッフ、器具、食料を武漢に送りこむ
1月28-29日:数千人の医療従事者が武漢入り
2月3日:最初の急設病院開業。他の病院も続々開業
2月9日:さらに318人の医療従事者が武漢入り
2月19日:1299人の医療従事者が武漢入り、市内の下水処理に従事開始
2月29日:中国とWHOがCOVID19(新型ウイルス)についての合同調査報告書発表
3月11日:WHOのテドロス事務局長がCOVID19の世界的流行(パンデミック)を宣言
3月12日:中国の感染者80,700人。
以上のような経過が、中国とWHOによって把握され、全世界に警告されていたのだ。日本のメディアでも、武漢の封鎖(交通遮断令)はじめ中国当局の取り組みも報道され、私自身でさえ、えらいことになりそうだ、日本は大丈夫かと恐怖を感じた。
ところが米国では、トランプ政権が事態の重大さを理解できなかったようだ。1月23日の武漢封鎖の段階で、トランプ政権は、なんの行動もとらなかった、米政府があわてて警戒行動を開始したのは3月7日。感染者402人、世界で10位が確認された時点で、WHOがパンデミックを宣言する11日の直前だった。すでに中国では感染者が8万人を超え、韓国、イタリア、イラン、スペイン、ポルトガルなどで感染者が急増しつつあった。以後、米国の感染者が急増、3月22日にはまだ中国1位、米国3位だったが、3月27日には、米国が1位の10万人台となり、さらに急増しだした。トランプ政権が、武漢封鎖を重大な危険信号だと理解できていたら、米国のその後は全く違っていたはずだ。2月中に全米で行動を起こせば、事態は大きく変わっていただろう。
11月の大統領選挙が5か月後に迫るなか、全米の都市封鎖を解除しつつあるが、感染が収まる兆候もないままの危険な人気取り強行策だ。
▼米国民の怒りを中国とWHOへ向けるのに必死
先週ジュネーブで開かれた世界各国の流行病対策の中心である国連のWHO(世界保健機関)の年次総会で、トランプ氏はワシントンの自分と腹心のポンペイオ国務長官、ジュネーブの会場でアザール厚生長官が、コロナウイルスの大流行は中国とWHOの責任だと非難。トランプ氏自身は18日に公開したテドロスWHO事務局長への書簡の中で「WHOが30日以内に大幅な改善にとりくまねば、拠出金の停止を恒久化し、WHOへの加盟を見直す」「パンデミック(世界的な大流行)への対応であなたとWHOの度重なる失敗は世界に非常に大きな犠牲を与えた」「前に進む唯一の方法は、中国からの独立を実際に示せるかにかかっている」批判した。この書簡の公表に先立って記者団に「WHOは中国の操り人形だ」「中国の(拠出金)は昨年4千万ドルだったが、米国は年4億5千万ドル払ってきた。4千万ドルに減らそうと考えていたが、それでも多すぎるという人もいる」と語った。
一方、アザール長官は5月18日、会議場での演説で「ウイルスが制御不能になって拡大した理由の一つにWHOの失敗がある」「WHOは世界が必要とする情報を得ることに失敗し、そのせいで多くの人が命を落とした」「少なくとも一つの国が感染拡大を隠そうとして、透明性の責任についてごまかしている」と述べた。国名を挙げないまでも「一つの国」が中国を指していることは、参加者の誰にも明らかだった。
アザール氏はさらに「WHOの働きは透明でなければならない。パンデミック(WHOが宣言した世界的な大流行)への対応にすべての面で独立した検証にかけることを支持する」「現状には容認できない。WHOは大幅に透明性を高め、もっと説明責任を果たさなければならない」と主張した。
こうした、トランプ政権がWHOと中国攻撃に必死なのは、トランプ政権が流行の兆しを十分知りながら、ほぼ1か月、対応に遅れ、WHOが公式のパンミックへの警告を発してからも、緊急な対応に遅れた責任を自覚しているはずだからだ。(了)
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〔opinion9788:200527〕
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