ミッドウェイ海戦の米航空兵捕虜虐殺――戸高一成/大木毅『帝国軍人』より――
- 2020年 7月 28日
- 評論・紹介・意見
- ミッドウェイ海戦岩田昌征
令和元年(2019年)12月3日の「ちきゅう座」「評論・紹介・意見」欄に「霜月15日、ポーランド国の首都 ワルシャワの映画館にて米中協力米国映画『ミッドウェイ』を観る」を発表した。そこで腰折れ七首の前書きとして次のように書いた。
――ミッドウェイ海戦にて日本航空母艦を沈めた米軍飛行士数人海上に漂流し、日本駆逐艦に救助さるるも尋問にまともに応答しない一人に日本軍高級将校は水没刑を命ずる。錨とともに海深く沈む米軍航空兵、これは史実か、はたまた義経千本桜の大物浦の段、平知盛の最後に米映像作家が着想した脚色か。――
昨日、戸高一成/大木毅の対談本『帝国軍人』(角川新書、令和2年7月10日)を一読した。米国映画「ミッドウェイ」の水没刑シーンは史実であった。脚色ではなかった。あるいは事実よりも残酷度をうすめた脚色のようだ。その事が本書からわかった。本書第三章「連合艦隊と軍令部」の一小節「ミッドウェイでは捕虜を茹で殺していた」(pp.130-133)から引用する。
――戸高 情報を取るためにも捕虜を拾いますが、ミッドウェイの戦闘詳報には、一切捕虜の記録がありません。つまり、全員殺している。海軍としては非常にまずい。……。駆逐艦で拾って殺した例などを、自費出版の回想録で書いていた人もいたのです。……。兵士が勝手に殺したというよりは、命令を受けて行っている。
――大木 駆逐艦で拾った捕虜を、フネのボイラーに入れて茹で殺した。……。その回想録を書いた下士官…「いやー、あの時はええもの見せてもらった」と笑っていた……。まったく反省がなかった。
――戸高 捕虜の足に重りを付け、そのまま海に放り込んだりもしています。
このミッドウェイの「狂気というべき部分」(p.218)は、二人の対談本第五章「日本軍の文書改竄」の一小節「知られたくない、残したくない事実も残す」(pp.217-219)においても繰り返し語られている。
かかる大日本帝国皇軍の狂気の所業をワルシャワの映画館でポーランド人の友人と一緒に観たかつての軍国幼年、のちの社会主義少年・青年・壮年・老年の私でさえ、それが米映像作家の歌舞伎風の脚色であって欲しいと心の中で願ってしまったわけだ。しかし、事実は事実だ。重い。
令和2年7月25日(土)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9974:200728〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。