安倍首相の辞任は何だったのか
- 2020年 9月 7日
- 評論・紹介・意見
- アベ小原 紘韓国
韓国通信NO647
去る8月28日、安倍首相が辞任を発表した。最強、最長の政権の突然の終わりに驚きの声があがった。
「アベ政治を許さない」のプラカードを掲げてきた人間としては、抗議してきた相手が忽然と消えて残念というほかない。プラカードの主張は安倍政治に向けたもので、首相個人が辞めればいいとう主張ではない。辞任しても政治状況は何も変わらない、今となっては安倍政治を徹底的に検証する必要を強く感じる。アベ政治は過去のものではない。わが国の民主主義に挑んだ最大の「反面教師」として学ぶことが多い。「お粗末な首相」の安倍政治を記憶から消してはいけない。
<安倍首相が辞めたワケ>
健康問題で辞任したことは疑わない。しかし、政権を投げ出したのは健康問題だけだったのか。健康問題以外の理由があるのとないとでは安倍政権後の政治は大きく変わってくる。健康問題だけで論じるなら、政治とリアルに向き合あう視点が希薄になる。その典型をNHKに見た。NHKは、おなじみの岩田記者に首相の実績を語らせ、志なかばで退陣する首相の胸中を代弁させた。報道各社もNHKと似たり寄ったり。各国首脳から寄せられた「外交辞令」を、退陣の「はなむけ」として首相に最後のゴマをすった。安倍首相よ あなたは偉大な政治家だったと言わんばかりに聞こえた。
在任期間が長かったせいか、安倍政権の悪行は枚挙にいとまがない。強行採決で成立した「国家機密法」「安保法制」「共謀罪」。モリカケ・桜問題では、国政の私物化が問われた。韓国では大統領が罷免、逮捕されたほどの重大犯罪だった。わが国では改ざんと虚偽証言でこれらの問題をごまかした。
挙げ句、検察権力まで手なづけようとしたが失敗。政治生命をかけたオリンピックは開催のめどは立たず、雲行きが怪しくなったところへコロナ対策の迷走ぶりがトドメを刺した。緊急事態宣言解除後も緊急事態が続くというちぐはぐ。国民の命も経済も危機的な状況に陥ったまま、内閣の支持率は30%台に。コロナという目に見えない伏兵によって政権は危機に見舞われた。
コロナが収まらない限り、支持率の回復は難しく、長引くほど支持率はさらに低下する。「アベノミクス」という言葉も聞かれなくなった。失業者はさらに増大。貧困層の悲鳴はやがて富裕層を除く全階層に広がるはずだ。セイフティネットを欠く社会構造の実態が可視化され、新自由主義経済を推し進めてきた自民、公明両党の責任が厳しく問われることになった。このまま行けば、自民党崩壊の可能性もある。安倍政権が追い込まれた窮地を理解できないまま政権を引きつぐ新政権は、首相個人の健康以外のすべてを引き継ぐだけで、期待できるものは何もない。
<民主主義も崩壊寸前>
安倍内閣の7年8か月、民主主義は死語となった。憲法を目の敵にする政府によって憲法は無視され、遵法精神は失われた。これ、乱暴な言い方だろうか。検証すれば直ちに立証されるはずだ。秘密の多い政治が常態化した。都合の悪い意見に聞く耳をもたない。歴史を改ざん歪曲して近隣諸国とのいざこざが絶えない。政治家の使命である奉仕の精神の欠如。民主主義は地に堕ちた。これからは、アベ政治を変えてゆく努力が必要だ。
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〔opinion10090:200907〕
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