一難去ってまた一難、アベなきアベ政治への批判を。
- 2020年 9月 9日
- 評論・紹介・意見
- 安倍政権澤藤統一郎
(2020年9月8日)
本郷三丁目のご近所のみなさま、ご通行中の皆さま。お馴染みの本郷湯島九条の会です。日本国憲法とその平和の理想をこのうえなく大切なものと考え、毎月第2火曜日の昼休み時間を定例の街頭宣伝活動の日と定めて、ここ本郷三丁目交差点「かねやす」前で、ささやかな訴えを続けています。少しの時間、耳を傾けていただくようお願いします。
いつもは、手作りのビラを配布し、署名をお願いするのですが、コロナ禍おさまらぬ今、手作りの横断幕とスローガンを書いたプラスターだけにしています。
まずは、プラスターをご覧ください。毎回プラスターは変わりますが、とりわけ今回はまるで様変わり。
安倍総理辞任会見は昭恵さんとご一緒に。
モリ・カケ・サクラの真相をお話ししてね。
病気理由に辞任をしても、
やった悪政チャラにはできない。
隠蔽、嘘に次ぐ嘘
継承恥じない政権は、アベ政権と同罪
一難去ってまた一難。でも、これからが正念場。
アベ後継批判 ゆるめない。
それってヘン
無派閥・非世襲 でも アベ政治踏襲
「自助=自己責任」
成功した菅さんが、それを言っちゃオシマイよ。
8月28日、突然の安倍首相の辞意表明があり、本日(9月8日)から自民党総裁選が始まりました。9月14日に新総裁が決まって、16日には臨時国会で新首相の指名の予定です。新内閣が組閣され、ようやく政権が交代します。長すぎた安倍政権。最低・最悪の安倍政権がようやくに終わります。ですから、本来はお赤飯を炊いてお祝いしてもよいところ。
ところが、決して喜ぶべき事態ではありません。プラスターは、そのことを表現しています。安倍さんが首相の座を去っても、「アベなきアベ政治」が続きそうだからです。お赤飯どころではなく、まだまだ歯を食いしばって、訴えを続けなければなりません。この街頭宣伝も、もうしばらくは続けざるをえません。
私たちが、これまで安倍政治を批判し、「安倍さん辞めろ」と言い続けてきたのは、決して安倍晋三という個人に怨みがあるわけではなく、彼一人に帰すべき責任があると考えているわけでもありません。私たちの批判は、反憲法的なアベ政治に向けられたものです。日本国憲法に敵意を剥き出しにし、隙あらば明文改憲も解釈改憲も遠慮しないその姿勢。格差や貧困を生み出す経済政策、政治を私物化し嘘とごまかしで固めた政治手法に対する批判なのです。
国民の批判が安倍政治を追い詰め、これを倒すならば、もう少し真っ当な政治に戻るだろう。安倍さんがいなくなっても、どうせ変わり映えすることのない保守政権、自民党政権が続くだけとは思いません。自民党というのは、決して安倍晋三のような右翼を主流にする政党ではなかったはずです。歴代を見ても、石橋湛山、三木武夫、宮沢喜一、福田康夫など、リベラルなトップも輩出したきたのです。評判の悪い安倍政治が倒れれば、これを批判する「もっとマシな保守政権」ができるに違いない。その読みが、どうも甘かったようなのです。
なんと、アベ後継を自任する新総裁がもう決まっているのだという報道です。しかも、密室の談合で。その人は、安倍後継をウリにし、「これまでのアベ政治は、実は私がやってきたことだ」と言わんばかり。安倍さんが退いても、安倍なき安倍政治が続くというのです。安倍政治転換は、望むべくもない事態と落胆せざるをえません。
もう一度、これまで世論が安倍政治を非難してきた根拠を明確に確認しておく必要があろうかと思います。
安倍晋三という人物は、若くして歴史修正主義者・改憲主義者として知られた人でした。短命に終わった、あの細川政権のころ、1993年に自民党の右派が「歴史・検討委員会」を発足させます。「東京裁判に毒された歴史観を建て直し、正しい歴史観を確立」しようという、おどろおどろしい委員会。この委員会に初当選したばかりの安倍晋三が参加します。
この委員会は後に「新しい歴史教科書をつくる会」を立ち上げる西尾幹二や高橋史朗などの歴史修正主義グループを講師に「検討」を重ね、その成果を『大東亜戦争の総括』(展転社)という書籍にまとめます。敗戦50年後となる95年8月15日のこと。「大東亜戦争は正しい戦争だった」「南京大虐殺、『従軍慰安婦』はでっちあげ」という典型的な侵略戦争美化本。
その後、97年に「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(略称「教科書議連」)が結成されると、彼はその事務局長となり、NHKが企画した「戦時性暴力を裁く国際法廷」の番組に圧力をかけたNHK番組改ざん事件の黒幕として有名になります。
そして、小泉内閣の官房副長官として、拉致問題に最強行姿勢を示したことで、鷹派議員としての地位を確立し、右派右翼勢力から押される形で安倍政権をつくります。
彼は、保守陣営内の右派・改憲勢力のホープとして、改憲を期待されて首相の座に就きます。彼は、宿命として改憲を言い続けなければならない立場にあったのです。明文改憲は、とうとうなしえませんでした。しかし、それまで違憲とされていた集団的自衛権行使を容認し多くの国民の反対を押し切って「戦争法」を成立させました。国民の知る権利を侵害し言論表現の自由を抑圧する秘密保護法、共謀罪法も成立させました。社会保障制度を切り崩すなど、およそ憲法に基づく政治を破壊してきました。
それだけでなく、第2次安倍政治は、7年8か月にわたって人事を通じて権力の集中をはかりました。国政を私物化しました。国政を嘘とごまかしで汚しました。モリ・カケ・サクラ、カジノに河井です。公文書の適切な管理を嫌いました。忖度政治を横行させました。政治は、大きく国民の信頼を失いました。最低・最悪の政権といわれるに相応しい、体たらくです。
安倍なき安倍政治の継続を許してはなりません。地に落ちた政治の信頼を取り戻さねばなりません。自民党総裁選における次期総裁・次期総理が安倍政権の積極的後継者でしかなく、日本国憲法に敵意を剥き出しにした政権が続くのであれば、対抗勢力を強くするしかありません。
まさしく、一難去ってまた一難の今。アベなきアベ政治継続への批判と、安倍後継政権を打倒する力をもった政治勢力を作りあげる努力を重ねようではありませんか。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.9.8より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=15618
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10095:200909〕
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