本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(275)
- 2020年 9月 30日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
アベノミクスの後遺症アベノミクスの後遺症
8月28日に突如として辞職を発表した「安倍首相」が、退任の理由として挙げたことは「持病の再発」だったが、この要因としては、やはり、「精神的なストレス」が指摘できるものと考えている。つまり、「森友、加計、そして、桜の問題」などによる「精神的な苦通」のことだが、私自身としては、「コロナ・ショックによるアベノミクスの行き詰まり」が最大のストレスだったようにも感じている。
具体的には、「財務省」と「日銀」が「税収減と歳出増」に悩まされ、「BIS(国際決済銀行)」が指摘するとおりに、「インフレ課税による解決策」を決断せざるを得なくなっている状況のことである。別の言葉では、「アベノミクスの正体」とも言える「国民の預金を利用した国債の大量買い付け」、そして、「超低金利状態による国家財政問題の先送り」の限界点が、はっきり見えてきた状況のことである。
しかも、今までは、「官僚による公文書の隠ぺい、改ざん」からもお分かりのとおりに、「国民が事実に気付かないこと」、そして、「金利の上昇を防ぐこと」が、「アベノミクス」が延命するための「最大の要因」だったものと思われるのである。しかし、現在では、「日本」のみならず、「欧米」においても、「金利やインフレ率の上昇を容認せざるを得ない状況」、すなわち、「アベノミクスの破綻」が明らかな状況となっているのである。
その結果として、今後は、「アベノミクスの後遺症」に悩まされる事態が想定されるが、実際には、「史上最大規模にまで膨れ上がった日本の国家債務」、そして、「7年8ヶ月で、約150兆円から約667兆円にまで大膨張した日銀のバランスシート」を、どのようにして処理するのかということである。つまり、「紙幣の増刷」という「インフレ税」が課される展開のことだが、「安倍首相」にとっては、「このような展開になることが、最も大きな精神的ストレスだったのではないか?」とも感じられるのである。
より具体的には、今後の問題点として指摘できることは、「誰が、このツケを払うのか?」ということだが、実際には、「国民全体に、被害が及ぶ状況」も想定されるのである。つまり、「バーナンキ元FRB議長」が、以前に指摘したとおりに、「新たな金融政策は、ほとんど全てが日本発である」という状況となっているために、「紙幣の大増刷」についても、「日銀から始まる可能性」が高くなっているのである。そして、この点に関する注意事項は、やはり、「インフレ指数の盲点」であり、実際には、今後、「大量の紙幣が、一斉に、実物資産に流れ込む展開」である。(2020.8.31)
------------------------------------------
ハイパーインフレの発生メカニズム
古典的な経済理論に「フィッシャーの交換方程式」が存在するが、具体的には、「MV=PT」、すなわち、「M(貨幣の増量)」と「V(貨幣の流通速度)」を掛け合わせた数字が、「P(価格)」と「T(商品の取引量)」を掛け合わせた数字と同じになるというものである。そして、この方程式を、現在の状況に当てはめると、「M」に関しては、「急増」を意味する「デジタル通貨から紙幣への大転換」が予想されるとともに、「V」に関しても、同様に、「紙幣を受け取った人々が、慌てて、商品に交換する状況」が考えられるのである。
しかも、「T」については、「急減」を意味する、従来の「金融商品」が実質的に消滅する展開が想定されるために、結果としては、今後の「P」について、未曽有の規模での上昇も想定されるのである。つまり、「国債価格の暴落」、あるいは、「金利の上昇」などにより、「中央銀行」のみならず、「国家の財政」までもが、あっという間に、破たん状態に陥る展開のことであり、このような状況下では、当然のことながら、「人々は、預金を解約して、実物資産への投資に向かう状況」も予想されるのである。
つまり、過去100年間に、30か国以上で発生した「ハイパーインフレ」については、すべての場合において、「大量に発行された紙幣が、食料品など、小さな規模の実物資産に向かった」ということが、主な原因として挙げられるのである。しかも、今回は、世界全体が同様の状況となっており、そのために、「これから、どれほどの規模で、ハイパーインフレが発生するのか?」については、全く予断を許さない状況となっているのである。
別の言葉では、これから想定される「最大のブラックスワン」、すなわち、「ほとんどの人が予想していない状況下で発生する大事件」としては、やはり、「金融界の白血病」が考えられるようである。つまり、「大増刷された紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができずに、現在の金融商品が完全消滅する可能性」のことだが、実際のところ、このような状況下では、「デジタル革命」も意味を失うものと考えている。
より具体的には、現在の「GAFA」についても、きわめて大きな投資リスクが存在するものと思われるが、この点については、今後、世界的な「国債価格の暴落」が発生した時に、はっきり見えてくるものと感じている。そして、タイミングについても、たいへん近い状況とも思われるが、実際のところ、現在は、「この事実に気づいた人から、徐々に、貴金属投資を始めている状況」であり、今後は、「この動きが食料品にまで波及する可能性」も存在するものと考えている。(2020.9.1)
------------------------------------------
中国の戦狼外交
現在では、「中国の戦狼外交」が世界的な大問題となってきたが、今までは、「羊の皮を被った狼」という言葉のとおりに、「資本主義社会の仲間入りをしたように見せかけて、裏側で、軍事大国、あるいは、共産主義国家への道筋を歩んでいた状況」だったようにも感じている。つまり、中国共産党が目論んでいることは、「マルクス・レーニン主義」の目的である「プロレタリア革命」である可能性のことだが、実際のところ、現在の「習近平氏」については、「毛沢東時代の文化大革命を再現しようとしているのではないか?」というような観測記事が見られる状況となっているのである。
別の言葉では、「史的唯物論」という「資本主義の後に共産主義の時代が訪れる」という理論を信じ込んでいる可能性も想定されるわけだが、この点については、「1991年のソ連崩壊」からも理解できるように、全く根拠のない妄想だったものと考えている。つまり、「プロレタリアート(賃金労働者)が、ブルジョアジー(有産階級)によって搾取されている」というような「単純な理解」、あるいは、「今日までのあらゆる社会の歴史は、闘争階級の歴史である」というような「誤った認識」により、「国家全体が、崩壊の方向に向かっていた状況」だったようにも思われるのである。
そのために、現時点で危惧されることは、「中国が、今後、どのような方向に向かうのか?」ということだが、実際には、「世界各国で、いろいろな紛争を起こしている状況」となっているのである。つまり、「大中華思想」と揶揄されるように「資金力や武力を背景にして、世界全体を支配しようとしている状況」とも言えるようだが、実際のところは、「新疆ウイグル」や「内モンゴル自治区」の状況からも明らかなように、「国家権力を背景にして、人民から搾取を行っている状態」のようにも感じられるのである。
別の言葉では、「中国共産党」という「ブルジョワ体制」が、「中国人民」という「プロレタリアート」を困らせている状況のようにも感じているが、この点については、「1991年のソ連」においても、似たような構造だったものと考えている。そして、「金の切れ目が縁の切れ目」という言葉のとおりに、「国家財政の破綻」が「国家の崩壊、そして、分裂」を引き起こした状況だったものと思われるのである。
しかも、今回は、「日米欧の先進国」までもが、同様の状況となっているために、これから発生する事態は、やはり、「1600年前の西ローマ帝国」と同様に、「西洋の時代」が終焉し、「東洋の時代」が始まる展開のようにも感じている。(2020.9.9)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10152:200930〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。