ハンコ縮減より西暦年号を、GoToよりも検査拡大・医療支援を!
- 2020年 10月 2日
- 時代をみる
- アベスガ加藤哲郎新型コロナウィルス
2020.10.2 月替わりに「安倍晋三のとんでもない宿題」がもう一つ、それも目に見えるかたちで実行されましたので、緊急の補足。菅首相が、内閣府所管の日本学術会議の新会員候補105人中6人の任命を拒否した問題、6人全員が人文社会科学系です。推薦方式こそ創立当時の選挙制、学会・学術団体推薦制から、政府から独立した学術会議自身によるコ・オプテーション方式(現行会員推薦制)へと歴史的に変わってきましたが、総理大臣の任命権が形式的なものであることは、国会答弁でも長く認められてきたものです。今回の政府の拒否・人事介入の理由が、6人の安保法制や特定秘密保護法についての個々の発言にあり、軍事研究に反対する学術会議の存在そのものへの圧力であることは、明らかです。内閣情報調査室など政府の公安・諜報情報を統括する北村国家安全保障局長、杉田内閣官房人事局長らが、安倍内閣のもとで内閣法制局とも調整し、入念に準備してきたものでしょう。「敵基地攻撃能力」整備と、表裏の関係にあります。コロナ禍で十分な反対運動を展開できないどさくさに、学問の自由の侵害ばかりでなく、戦前滝川事件や天皇機関説事件を想起させる、「ファシズムの初期症候」の一段の深化です。米国トランプ大統領夫妻は新型コロナウィルス陽性、人間にとっての安全保障、科学者の社会的責任を、今こそ考えるべき時です。
2020.10.1 アメリカ、ジョンズ・ホプキンス大学のデータで、新型コロナウィルスの9月末の死者数は、世界で100万人をこえました。感染認定者数3300万人で、増加の勢いはとまりません。アメリカが711万で、インドが607万に達し、ブラジルの473万を追い越しました。以下、ロシア、コロンビア、ペルー、メキシコが続きますが、スペインの71万をはじめ、経済社会活動を再開したヨーロッパ大国での増大が目立ちます。明らかに、第二波の到来です。日本もこのパターンで、相変わらず「東アジア型」枠内で死者・感染認定者の絶対数は「欧米型」に比すれば少ないですが、大都市ばかりでなく地方でも増えており、最少の岩手県でも23人、私の住む都下国分寺市も100人に近づいています。
安倍晋三後任の自民党総裁選挙は、予想通りの派閥相乗りで、菅義偉首相が誕生しました。何しろ8年近い安倍内閣の官房長官で森友・加計・桜を見る会スキャンダル隠蔽の総責任者でした。独自の政策もなく、アベノミクスとアベ外交の継承を謳っていて、実務能力はあっても政治理念や哲学は感じられません。内閣の構成も「第3次安倍内閣」風で、新味はありません。メディア誘導と統制はいっそう強化されて、世界のコロナ禍から日本を切り離し、デジタル庁やケータイ値下げ、印鑑(ハンコ)縮減に目を向けさせるかたちです。日本の科学技術の全体的退潮や公文書の西暦表記一元化には、考えが及びません。安部支配からの変化の期待で内閣支持率は上がっても、早晩実力が見えてくるでしょう。
強いて挙げれば、安倍晋三の「美しい国」から「自助・共助・公助」への標語変換に菅色を出そうとしていますが、これは「小さな政府」を謳った新自由主義の、公的責任回避・社会保障削減の古くさい論理です。最も「公助」が切実に必要とされるコロナ第二波渦中で、さすがに評判が悪く、あわてて「そして絆」を追加しましたが、生活保証も休業補償もない「自粛」最優先の経済社会活動再開、あらゆる領域での「自助=自己責任論」の跋扈が続きます。その結果としての「自粛警察」や「マスク警察」、感染者バッシングの同調圧力には手をつけず、PCR検査の拡大や医療機関支援も後手後手のケチケチです。経産省出身の今井尚哉首相補佐官・秘書官らが後景に退きましたが、和泉洋人補佐官や北村滋国家安全保障局長は留任で、総元締めの杉田和博官房副長官・内閣官房人事局長がにらみを効かせていますから、官邸官僚主導・高級官僚人事の実質支配の構造は手つかずです。「日本モデル」の失敗を導いた安倍内閣の経済成長優先「健康・医療戦略」は続きます。
安倍晋三は、退任に当たって、とんでもない宿題を菅内閣に託しました。「敵基地攻撃能力」すなわち先制攻撃権の検討です。任期中の明文改憲が果たせなかったところで、次善の策の解釈改憲を拡大しようとするものです。安保法制で集団的自衛権を、「武器輸出3原則」を「防衛装備移転」と言い換えて武器輸出を可能にした、あの手法です。しかも担当大臣は安倍晋三の実弟、岸信介孫の岸信夫ですから、安倍晋三の「院政」が続くでしょう。沖縄の米軍基地移転問題も、韓国・中国との関係修復も打開策はなさそうです。すべては11月のアメリカ大統領選挙の結果次第でしょう。新型コロナウィルスと「安部ウィルス」に二重に汚染されたこの国の苦難は、依然として続きます。この辺詳しくは、夏に書いたコロナ第一波の中間総括『パンデミックの政治学ーー「日本モデル」の失敗』(花伝社)が10月20日に刊行予定ですので、ぜひご参照を。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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〔eye4771:201002〕
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