警察公安国家への道に踏み込んだ菅内閣!
- 2020年 11月 2日
- 時代をみる
- スガ加藤哲郎新型コロナウィルス日本学術会議米大統領選
2020.11.1 今週は、アメリカ合衆国大統領選挙の投票があります。しかし、郵便投票の多い開票が、スムーズに進むとは思われません。投票所得票開票だけでのトランプの勝利宣言、開票結果をめぐっての銃を持っての内戦状態さえささやかれています。アメリカ民主主義の建国以来の危機、したがってまた、現在のコロナウィルス蔓延下での世界の行方を左右する危機に、つながりかねません。嵐の前の静けさ、いや嵐をよぶフェイクニュースとヘイトスピーチ氾濫の情報戦です。
そのアメリカでは、ジョンズ・ホプキンス大学のデータで、新型コロナ感染認定者900万人・死者23万人近く、犠牲者は増え続けています。まともな民主主義の二大政党制なら、新型コロナウィルスが広がり続ける中での選挙運動や暴力排除の紳士協定ができるはずですが、トランプはむしろ、分裂と対立を煽動しています。10月末の死者数は、世界で120万人近く、感染者は世界4500万、ひと月で1200万人増えました。インドが800万をこえ、ブラジルは550万、どんどん広がっています。特にヨーロッパは、第一波以上の第二波で、フランス132万、スペイン116万、イギリス96万など、寒い季節に再ロックダウン・夜間外出規制、医療崩壊寸前の国が増えています。世界経済は縮小し、リーマンショックどころか、1929年世界恐慌の悪夢(→ブロック経済→世界戦争)の再来さえ、語られています。世界は、ポスト・コロナどころではありません。アナーキーで出口の見えぬ、ウィズ・コロナのさなかです。
日本も、感染認定者が10万人をこえました。死者は1769人で、確かに欧米の大きな波に比べれば、抑え込まれているかにみえますが、「東アジア型」のなかでは最悪パターンが続いており、検査の絶対的不足の中でのGoToキャンペーンが、不安をかき立てます。東京で連日200人感染認定を越えるなかで人の流れが全国に拡散し、大都市圏のほか、北海道、青森、宮城、群馬、岡山、沖縄などで急増しています。私が安倍内閣下の第一波から検出した「日本モデルの失敗」は、菅内閣でも依然として続き、厳しい冬を迎えます。感染政策については「自助」「自己責任」を押しつけながら、金融市場では日銀と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株を買い占め、「公助」で株価暴落を抑えている状態、「健全な資本主義」など、そもそもありうるのでしょうか。斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書)のような、人類史スパンでの大きな構想力が求められています。
菅義偉首相就任初の施政方針演説は、その語彙と迫力の貧しさ、漢字の読み違いをおいても、新味のないものでした。目玉の2050年脱炭素社会は、原発再稼働・新炉建設の意図が丸見えですし、デジタル社会化には、マイナンバーカード普及による個人情報国家管理が前提されています。むしろ、当然語るべきなのに、語られなかったことが重要です。その第一は、来年1月発効が確実になった、核兵器禁止条約(TPNW)への「被爆国」日本政府の態度、「アメリカの核の傘」を理由に国連で反対を続け、「核保有国と非保有国の架け橋」は何もせず。新たな国際法に対して、いつまで無視し続けるのでしょうか。核禁条約についてのテレビや新聞雑誌・ウェブでの発言を監視して、新たな「反政府有識者リスト」を、内閣府で作っている可能性もあります。
というのは、施政方針で触れられず、野党やメディアも指摘した第二の点、日本学術会議の任命拒否問題が、就任直後の「ご祝儀相場」を台無しにして、各種世論調査でも内閣支持率10ポイント前後のマイナスをもたらしているからです。この点は、本サイトでも、10月更新を3回加筆して抗議運動をよびかけてきましたが、すでに500以上の学協会・科学者組織が意見を表明、6人の任命拒否理由の開示と言論・思想・表現の自由、学問の自由、学術会議の独立性確保を求めています。これが、実際は杉田官房副長官・内閣人事局長と北村国家安全保障局長ら公安警察出身官邸官僚作成のリストにもとづくものであることは見え見えなのに、公式に陰険な思想調査を認めたくない菅首相は、例の「総合的・俯瞰的」から「バランス」、「民間・若手・女性・地方からの登用」「多様性」、ついには「旧帝国大学出身者の割合」などと具体化するほどに、自身の無知・無教養・反知性を暴露しています。なぜならば、私学関係者や女性を含む6人の任命拒否によって、学術会議自身が自主的に進めてきた「バランス」や「総合性・俯瞰性」が崩されたことは、明白なのですから。
安倍内閣から菅内閣に代わって、官邸官僚の中枢が経産省主導から財務省に移ったなどと言われますが、変わらないのは、警察公安官僚が政治家身体検査・官僚人事・有識者「専門家」審議会登用リストのみならず、広く言論・思想・メディア・学術・文化・宗教界にまで監視の網の目を張り、SNSやネトウヨ言論をも用いて、言論思想統制を強めていることです。ジョージ・オーウェル『1984年』風、監視国家への道です。私の新著『パンデミックの政治学ーー「日本モデル」の失敗』でコロナ第一波の中間総括から見いだした、日本政治の問題点は、ますます深まっています。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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〔eye4781:201102〕
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