地獄への道は、嘘で塗り固められている!
- 2020年 12月 2日
- 時代をみる
- スガ加藤哲郎新型コロナウィルス
2020.12.1 2020年は、100年前の「スペイン風邪」に匹敵する疫病、新型コロナウィルス「世界的大流行=パンデミック」の年として、歴史に刻まれるでしょう。本サイトが毎月参照してきた米国ジョンズ・ホプキンス大学のデータでは、世界の感染認定者は6300万人、死者は145万人を越えました。各国ごとでは多少の波がありますが、世界の累計では右肩上がり一直線、ひと月で1800万人増と、感染拡大は止まりません。「スペイン風邪」は、1918年から20年にかけて、当時の世界人口の3分の1である5億人感染、最大1億人死亡とされていますから、今年の新型コロナウィルスCOVID-19は、まだそのスケールには及びません。人口も増えて、医学医療も発達しています。何よりも交通・輸送・情報手段が広がって、地球が一つになりました。それが感染爆発を地球の隅々まで及ぼしているのです。北半球は再び冬の季節を迎え、この勢いは、少なくとも2021年に引き継がれるでしょう。ワクチン待望情報が蔓延していますが、政府も御用「専門家」も信頼できないこの国では、本12月1日付け東京新聞「コロナ検証」特集「中国から世界にどう拡大したか」の中国・イタリアでの感染源再探求、児玉龍彦さんのyou tube「この冬をどう乗り切るか」でのウィルス変異第4波説(武漢型・イタリア型・東京埼玉型・スペイン型)などの情報を、自分で集めることが大切です。「スペイン風邪」という命名自体、アメリカ軍の第一次世界大戦参戦起源を隠蔽するものでした。改めて、藤原辰史さんのネットロア「パンデミックを生きる指針」を読んでみましょう。
最大の感染国、アメリカ合衆国では、感染者1340万人、死者27万人とあります。感染・死者ともに世界の5分の1です。大統領選挙では、自分も感染しマスクも着けずに大規模選挙イベントを続けた現職トランプ大統領が、再選されませんでした。とはいえ7400万票と47%の得票を得、未だに敗北を認めていない事実は残ります。バイデン民主党は感染対策に積極的で、パリ協定やWHOへの復帰など国際協調も認め、女性を幅広く登用して「普通のアメリカ」になろうとしていますが、中国との覇権争いや株価と大きく乖離した経済再建、何よりもトランプ時代に広がった格差と貧困問題、アフリカ系のみならずヒスパニック系・アジア系などを含む人種の階層性と差別の問題にどう取り組むのかは、未知数です。現在の国際関係では、米国と中国が能動的秩序形成者(maker)になり、欧州諸国や日本、インドやブラジルが秩序撹乱者(shaker)、その他の国が秩序受容者(taker)と考えられてきました。100年前の「スペイン風邪」が実は第一次世界大戦の帰趨とその後の国際秩序(ヴェルサイユ=ワシントン体制)にも重要な影響を与えたことは、最近になって注目されています。いま、私たちがさなかにいるコロナウィルスに覆われた世界が、5年後・10年後・100年後にどのような世界地図をもたらすかには、コロナ禍で進むデジタル化やロボット化に加えて、地球温暖化・気候変動も作用するでしょう。
私たちの住む国日本は、世界秩序のshakerからtakerへの後退過程にあります。名目GDPでは米国・中国に次ぐ第3位とはいえ、一人あたりでは25位まで後退しました。生産性も賃金も20位以下、女性の社会的地位については、153か国中121位です。そこに、コロナです。1980年代の新自由主義の導入とバブル経済の驕り、1990年代の冷戦崩壊・湾岸戦争への対米従属深化の適応と小選挙区制政治改革・不良債権処理金融改革の失敗、21世紀に入っての自衛隊海外派兵の恒常化と、台頭する中国・韓国への歴史的反省なき偏見・敵視、非正規・女性・外国人労働を組み込んだ格差・貧困労働社会の日常化、民主党政権への政権交代を挫折させた東日本大震災・福島原発事故。これらの経験から学ばず、新自由主義グローバライゼーションの荒波の中に「アベノミクス」なる竹槍風成長戦略で突撃し、「アメリカン・ファースト」の嘘つきトランプの懐に飛び込んで東アジア隣国との緊張激化・安全保障軍事化、自ら「モリ・カケ・サクラ」の嘘つきと公文書隠蔽、メディア統制と反知性で8年近いファシズム化への専制支配。感染症などは発展途上taker国の問題として高度医薬産業のグローバル化・輸出大国化をはかってきたのが裏目に出て、出入国管理でも「ダイヤモンド・プリンセス」号封じ込めでも医療体制の準備不足と初期対応の失敗、目玉だった改憲も東京オリンピックも政治日程からはずれ、自らの健康管理に失敗して「アベノマスク」の二番煎じ風「GoTo」政策を後継内閣に丸投げ。同じ「嘘つき」でも、マスクなしでウィルスの海に飛び込み自ら感染して選挙戦に敗れたトランプ大統領の方がまだしも「正直」に見える、倒錯した日本型コロナ政治です。
無論、その「日本モデルの失敗」のポイントは、「検査なくして対策なし」です。世界的に当たり前のPCR検査が「クラスター対策」「濃厚接触者捜し」「重症者対策」に限定されたままで、いまや感染認定者の半数を占める市中感染者・無症状感染者を野放しにしたまま「マスク・手洗い・3密注意」の「補償なき自粛・休業要請」、感染者差別・医療従事者差別、「自粛警察」が繰り返されていることです。これらは、第一波をもとに拙著『パンデミックの政治学ーー「日本モデル」の失敗』(花伝社)に書きましたから、繰り返しません。「コロナウィルスは風邪と同程度」「発熱37度5分以上4日での行政検査で大丈夫」、さらには「感染収束後」と閣議決定されていた「GoToトラベル」の感染さなかでの出発、未だに「重症者」の定義が厚生省と東京都で食い違う不思議。感染対策でも、この国は嘘だらけです。日本学術会議会員の任命拒否問題でも、検察が動き始めた「サクラを見る会」でも、政府と首相の答弁は嘘の上塗り。ウラでは警察公安官僚が、意識的に蠢いています。2020年の世界と日本を象徴したのは、「嘘」でした。ヨーロッパの格言で、カール・マルクスも使った言葉「地獄への道は善意で敷き詰められている」になぞらえるならば、アメリカでも日本でも「地獄への道は嘘で塗り固められている」年でした。出口の見えない閉塞と苦さの中で、クリスマスと新年を迎えます。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4791:201202〕
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