【報告】核兵器政策に関する要請書にNAJATも加わりました。
- 2021年 2月 5日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
こそ、「核の傘」政策からの脱却に向け「北東アジア非核兵器地帯」構想
の真剣な検討を求める」が、外務書軍備管理軍縮課・首席事務官の鈴木晶
子氏を通じて日本政府に提出されました。
要請書は、「ピースデポ」が呼びかけ、20団体の連名で作成されたもので、
NAJATも団体賛同しました。
要請はオンラインで行われ、7団体から各1名など計12名が参加し、予定の
1時間を超えて活発な質疑が行われたとのことです。
※ピースデポが2018年11月から始めた「朝鮮半島非核化合意の公正な履行
に関する履行・監視プロジェクト」がこれまでの監視報告をまとめた「監
視報告集」も合わせて提出されました。
http://www.peacedepot.org/wp-content/uploads/2021/01/nonukes-northeast-asia-watch-reports.pdf
北東アジア非核地帯「構想実現を」 NPO法人が菅首相に要請書
(2月3日、東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/83768
—————<ぜひご一読ください!>—————-
【要請書】
内閣総理大臣 菅義偉様
外務大臣 茂木敏充様
<日本の核兵器政策に関する要請書>
核兵器禁止条約が発効した今こそ、「核の傘」政策からの脱却に向け
「北東アジア非核兵器地帯」構想の真剣な検討を求める
世界の感染者が1億人を超えたコロナ禍は、核兵器をはじめとする軍事
力が「人間の安全保障」に全く役に立たないことを浮き彫りにしています。
人間の安全を保障するには、核兵器を含む巨額の軍事予算を削減し、その
分を市民の生命と安全を守る様々な予算にまわすことが必要です。
そうした中で、2021年1月22日、被爆者をはじめ世界の市民の念願であ
った核兵器禁止条約(以下、TPNW)が発効しました。核兵器は、言うまで
もなく、わずか一発で無差別大量殺戮が可能で、核攻撃の応酬となれば人
類を滅亡させかねない兵器です。TPNW発効により、このおぞましい兵器が、
国際法上、保有も使用も許されない違法な存在となりました。これにより
核兵器の非人道性と違法性の認識が世界に広がることで、今後、締約国以
外にも大きな影響を及ぼすでしょう。
ましてや、日本はヒロシマ、ナガサキを経験した「唯一の戦争被爆国」
です。にもかかわらず、日本政府はTPNWの意義を認めず、参加を拒否し続
けています。一方で、日本政府は一貫して核兵器の非人道性と核兵器廃絶
を訴えており、TPNWへの否定的態度との矛盾は、今後、さらに厳しく問わ
れることになるでしょう。
そうした矛盾を解消し、日本がTPNWに参加するには、条約が第1条e項で
禁止する「核の傘」政策からの脱却が必要となります。そこで「核の傘」
政策からの脱却を可能にする現実的政策である「北東アジア非核兵器地帯」
構想を真剣に検討するよう、以下要請します。
1.直ちに実施可能な行動
(1) 核兵器は非人道的な兵器なので禁止すべきであるというTPNWへの原
則支持の表明を行うこと
日本政府は「核兵器禁止条約が掲げる核兵器廃絶という目標は共有して
いる」と繰り返し表明しています。また国会答弁において外務大臣は「唯
一の戦争被爆国として、核の非人道性をどの国よりもよく理解をしている」
と述べながら「核兵器禁止条約とは核兵器廃絶へのアプローチが違う」と
述べ、TPNWへの参加を否定してきました。この立場からすれば、日本政府
はアプローチは違うが、「核兵器は非人道的な兵器なので禁止すべき」と
いうTPNWの基本的な考えには賛同できるはずです。日本政府は、まず「TPNW
を原則的に支持します」という分かり易いメッセージを世界の市民に発す
るべきです。
(2)TPNW締約国会議にオブザーバーとして参加すること
条約は発効から1年以内に締約国会議を開催することを定めています。
日本政府は締約国会議へのオブザーバー参加に慎重であると報じられてい
ます。一方で日本政府は核兵器廃絶に向けてTPNW推進派と否定派の「橋渡
し」役を果たすと述べていますが、橋渡しをするためには推進派と否定派
双方の主張を理解し関係を築くことが必要です。日本がTPNW締約国会議に
オブザーバー参加することによって、TPNW推進派とも相互に理解を深める
ことができます。それは橋渡しをするうえで不可欠な前提となります。
2.中長期的な取り組み—「核の傘」政策からの脱却
(1)北東アジアにおける安全保障環境を悪化させる行動をとらないこと
日本政府は厳しい安全保障環境を理由に「核の傘」の必要性を訴え、
TPNWへの参加を拒否しています。しかし、安全保障環境を厳しくした、あ
るいは、厳しくしている責任は日本にもあります。日本は、専守防衛政策
に反して、敵基地攻撃能力の保有を準備したり、米軍とともに遠く南シナ
海に自衛艦を派遣したりして、ことさらに軍事的緊張を高めています。ま
た、2018年に朝鮮半島で始まった歴史的な緊張緩和の好機を定着させる努
力をすることなく、国連安保理決議を超える北朝鮮への独自制裁を継続し
ています。良好な安全保障環境を築くためには、まず、日本が安全保障環
境の改善に向けた外交努力を行うことが必要です。
(2)2018年に始まった朝鮮半島の非核化・平和プロセスの行き詰まりを
打破するため、米国のバイデン政権に米朝協議の再開を要請すること、そ
のために、まずシンガポール共同声明の継承をバイデン政権に求めること
2018年6月、シンガポールでの米朝首脳会談で合意された米朝首脳共同
声明は、画期的な合意文書です。そこには長い敵対の歴史を超えて両国が
平和と繁栄の新しい米朝関係を築くこと、朝鮮半島に永続的で安定した平
和体制を構築すること、という今も必要な基本的な合意が述べられ、その
うえで北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化を行い、米国が安全の保証を与え
るという、お互いの約束を表明しています。
米国の新政権が、まずこの米朝首脳共同声明の意義を再確認し、その履
行に向けた米朝協議の再開について新しいイニシャチブを発揮することが、
北東アジアの非核化と緊張緩和に極めて重要です。日本自身の核兵器依存
を軽減する道でもあります。日本政府がバイデン政権発足の機会に、米新
政権に対してこれらの要請を行うことを求めます。
(3) 「核の傘」政策からの脱却、そしてTPNW加盟を可能にする「北東アジ
ア非核兵器地帯」構想を真剣に検討すること
日本政府は、日本が受けている核兵器の脅威に対して、日本自身が核武
装しない以上、米国の拡大核抑止力(核の傘)に依存することが必要だと
してきました。しかし、世界の圧倒的多数の国は核武装でも「核の傘」で
もなく、非核兵器地帯条約の締結という外交的努力と国際法の力によって
核兵器の脅威から身を守ってきました。それらの国々がTPNW推進の大きな
原動力になっています。
日本もまた、北東アジア非核兵器地帯を設立する努力をすることによっ
て、「核の傘」依存から脱し、TPNWに加盟することが現実的に可能である
と考えます。
日本政府が、2018年の南北板門店宣言と米朝シンガポール共同声明に始
まった朝鮮半島非核化プロセスを支持するだけではなく、すでに非核三原
則をもつ日本を加えた北東アジア地域全体の非核化を提案すれば、「北東
アジア非核兵器地帯」条約への道は大きく前進するでしょう。日本と南北
朝鮮の3か国が非核兵器地帯を形成し、米国、中国、ロシアの3か国がこの
地帯に核兵器の使用や威嚇しないという安全の保証を約束するものです。
検証を伴った「北東アジア非核兵器地帯条約」が実現すれば、「核の傘」
は不要となり、日本はTPNWに加盟し、被爆国にふさわしい核兵器廃絶への
使命を果たすことができます。
核兵器禁止条約が発効した今こそ、このような「北東アジア非核兵器地
帯」構想の検討を強く要請いたします。
以上
2021年2月2日
NPO法人ピースデポ
朝鮮半島非核化合意履行・監視プロジェクト
アーユス仏教国際協力ネットワーク
核兵器廃絶地球市民集会ナガサキ
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)
原子力資料情報室(CNIC)
原水爆禁止日本国民会議
世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会
世界連邦運動協会(WFM)
日韓民衆連帯全国ネットワーク
日本キリスト教協議会(NCC)東アジアの和解と平和委員会
日本基督教団神奈川教区寿地区センター
日本反核法律家協会
日本福音ルーテル教会社会委員会
日本YWCA
反核医師の会
ピースボート
ふぇみん婦人民主クラブ
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
許すな!憲法改悪・市民連絡会
連絡先 NPO法人ピースデポ 担当:渡辺洋介
〒223-0062 横浜市港北区日吉本町1-30-27-4 1F
E-mail: watanabeyosuke@peacedepot.org
電話:045-563-5101 FAX:045-563-9907
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