ミャンマー全土に反クーデタ行動広がる ゼネスト的状況へ、しかし弾圧迫る!
- 2021年 2月 10日
- 評論・紹介・意見
- ミャンマー野上俊明
ヤンゴン中心街 イラワジ紙
クーデタへの抗議行動は全土に広がり、88動乱と似たような様相を呈してきました。英紙ガ―ディアンによれば、地元紙フロンティア紙のウェブサイトで、国内最大級のKBZ銀行の多くの支店も、多くの従業員が抗議活動に参加したため、月曜日に閉鎖されたと報じたとしています。ヤンゴンにある政府系の金融機関も職員のボイコットで業務を停止していると日本のニュースでも報じられています。またヤンゴンでは、多くの僧侶も初めて抗議行動に参加したといいます。地方の有力政治家の逮捕も続いていますが、それでも解散を命じられた地方議会の当選議員たちは自主的に集まって、抗議の意思を表明しているそうです。
二人の警察官が、デモ隊列に合流するシーン!
こうしたなか以前の動乱時にはなかった現象が生じています。戦前「アジアの米びつ」と呼ばれたイラワジ・デルタの中心都市パテインで、放水車がデモ隊に放水しているさなか、警備に当たる警察官が、デモ隊の「私たちはあなたが人間であり、私たちのように感じる心を持っていることを知っています」との説得により、隊列に加わったシーンがSNSで流されています。複数の警官が分かったとジェスチャーし、拍手と大きな歓声に迎えられ警官は抗議者と握手し、バリケードを撤去し始めたそうです。デモ隊は「人民警察」だと叫びながら行進したそうである。
気にかかるのは、国軍が雇ったスト破りの暴力集団の車列がヤンゴンに入ったというニュースです。国軍が弾圧するのに呼応して、かれらが抗議者に襲いかかるのは常套手段なのです。ヤンゴンの近郊のモウビーという町には、かつて首都防衛の近衛師団の駐屯地がありました。2007年の「サフラン革命」のときには、筆者がこの町を車で通過するとき、大勢の部隊がヤンゴン制圧に向かうべく待機しているのが目に入りました。今回もおそらく国軍は同じ行動をとると思われますから、モウビーで事前の動きをキャチすることができるでしょう。
もうひとつ気がかりなのは、全国的な抗議活動、不服従運動の盛り上がりにもかかわらず、それの指導部が欠けていることです。88反乱の際には、学生指導部と一般指導部とによって闘争のナショナルセンターがつくられ、短期間にせよ運動の指導を行いました。しかし今回は運動を統括し政治的力を行使する主体、国軍側と交渉する主体がないのです。筆者がことあるごとにスーチー氏らを批判してきたのは、このことです。NLDはNLDでいいのですが、やはり少数民族、マイノリティ、他の政党政派を広く包み込んだ統一戦線組織が必要なのです。政党政治の伝統がないこの地では、政治活動は狭い党派主義に陥りやすく、そのことが独裁政権の持続可能性を高めたのです。民主化運動は、国軍に対するシビリアン・コントロールを獲得するまで継続しなければならない闘いだということを忘れ、精神的に武装解除する愚を皆が冒したのではないか、改めてそのことを強く思います。とりあえずNLDを中心に各界の有力者が結集し、臨時指導部を構成するほかないでしょう。大弾圧の危機は迫っています。
<資料>
ミャンマー全土に反クーデタ行動広がる
レッパダウン銅鉱山の労働者も決起 イラワジ紙
マンダレー教育大学の若いスタッフも行動へ イラワジ紙
スーチー氏と最高司令官
ヤンゴン教育大学のスタッフも イラワジ紙
国会議員たちはクーデタを認めず、自分たちで即興式典を行い、国会議員として宣誓した。イラワジ紙
アウンサン将軍も入院したヤンゴン国立病院。ここでのちの妻となるド・キンチー看護婦と出会うことになった
スタッフたちは罷業に突入。イラワジ紙
ヤンゴン中心街での抗議行動 ドイツ公共放送
毎日午後8時ー鍋やかまの底をたたいて、抗議の意思表示 ガ―ディアン紙
市民的不服従の意思表示 都市中間層が動き出した ガ―ディアン紙
古都マンダレーを威嚇して走行する国軍装甲車 イラワジ紙
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10544:210210〕
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