日本政府に32団体が対ミャンマー公的資金の停止・調査等を求める要請書を提出!
- 2021年 3月 6日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
ミャンマー(ビルマ)の軍事クーデターから1カ月が過ぎ、弾圧が一気に
エスカレートしています。死傷者が激増する中、在日ミャンマー人による
抗議行動は繰り返し展開されていますが、日本の市民社会からの発信は、
私たちも含めて不十分だと思います。そうした中で3月4日、ミャンマー民主化の行方に強い関心を持つ日本の32
の市民団体(NAJATも賛同)が、以下の要請書を外務省など関連省庁・機
関に提出。外務省国別開発協力第一課(ODA担当)の担当者との40分ほど
のオンラインでの意見交換も行われました。
要請書は、新規の政府開発援助(ODA)の停止はもちろん、既存事業への
支援を一旦停止し、国軍との関連が指摘された企業が日本の公的機関の支
援事業に関与していないか、また、事業の実施が国軍に経済的利益をもた
らしていないか、早急に調査するよう求めています。ミャンマーに対して
は、国際協力機構(JICA)だけでなく、国際協力銀行(JBIC)や海外交通
・都市開発事業支援機構(JOIN)が関与しています。
★ぜひ、要請書をじっくりとご一読ください。そして、多くの方に広めて
いただくようにお願いします。メディア関係者の方は、この件について
ぜひご取材ください。
◆外務省に声を届けてください!
「ミャンマーへの新規の政府開発援助(ODA)の停止を」
「既存事業への支援を一旦停止し、支援が国軍を利していないか早急に調査を」
TEL:03-3580-3311(代表)
ご意見 https://www.contact.mofa.go.jp/form/pub/mofaj/feedback
◆ご協力を!
<ネット署名>
ミャンマーの人々を軍事クーデターから守るため、署名に参加してください!
~外務省と賛同いただける国会議員の方々に提出します~
(呼びかけ:東京外国語大学でビルマ語を学ぶ学生など有志)
http://chng.it/9ckkvGcy
※3月4日、1次集約分の約38,300筆が外務省と「ミャンマーの民主化を支援
する議員連盟」に提出されました。さらに広げましょう。
◆必読!
日本の「ミャンマー宥和外交」は機能しているか
今こそミャンマーとのパイプを機能させよ
(柴田直治、3月3日・東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/414467
◆必見!
2.18ウェビナー「ミャンマー軍の国際人権・人道法違反と企業の責任を考える」
https://www.youtube.com/watch?v=dTr6k94c_Kw ※3カ月限定公開
————–<以下、要請書>—————–
2021年3月4日
財務大臣 麻生太郎様
外務大臣 茂木敏充様
国土交通大臣 赤羽一嘉様
国際協力銀行 代表取締役総裁 前田匡史様
国際協力機構 理事長 北岡伸一様
海外交通・都市開発事業支援機構 代表取締役社長 武貞達彦様
【要請書】
日本の対ミャンマー公的資金における国軍ビジネスとの関連を早急に調査し、
クーデターを起こした国軍の資金源を断つよう求めます
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20210304.pdf
ミャンマーで2月1日に国軍によるクーデターが発生してから1ヶ月が経
ちました。国軍は、昨年11月の総選挙の結果が不正であるとし、選挙結果
を受け入れられないことを理由に挙げています。一方、クーデター後、市
民の不服従運動やゼネストは全国で発生して今日まで続いており、ミャン
マーの人びとの民意は明らかです。これに対し、国軍は非武装の市民に発
砲し、複数の死者も出ている情勢です。日本政府は外務大臣談話等でクー
デター発生当日の2月1日から「重大な懸念」を示すとともに、複数の民間
人の死傷を「強く非難」してきました。また国際社会とも協調してG7外
相声明で軍事クーデターの発生やクーデターに反対する人々への威嚇及び
抑圧を非難しています。しかし、ミャンマーの民主化の行方に強い関心を
持つ私たち日本の市民グループは、日本政府による更に踏み込んだ措置が
必要と考え、以下の点を強く要請します。
要請:
1. 新規の対ミャンマー支援については、人道目的以外の公的資金による
支援を実施しないでください。
2. 国際協力機構(JICA)が現在実施している対ミャンマー政府開発援助
(ODA)事業については、人道目的のものを除く全ての支援を一旦停止し、
国軍との関連が指摘された企業が事業に関与していないか、または、事業
の実施が国軍に経済的利益をもたらしていないか、早急に調査してください。
3. 国際協力銀行(JBIC)や海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が
ミャンマー関連で現在融資・出資している事業への支援を一旦停止し、国
軍との関連が指摘された企業が事業に関与していないか、または、事業の
実施が国軍に経済的利益をもたらしていないか、早急に調査してください。
4. 2.と3.の調査で明らかとなった事実を公表し、国軍を裨益する事業に
関しては、直ちに中止、または支援を取りやめる措置を取ってください。
5. ミャンマーで事業を実施する日本の民間企業に対しては、国軍との関
係を断つよう指導し、その実現に向けた支援を実施してください。国軍と
の関係を断つことを拒否する企業に対しては、日本政府の開発協力大綱及
び国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に照らし、直ちに公的支援を
取りやめてください。
背景:
日本政府は、2011年に当時のミャンマー軍政が民主化を約束したことから、
以下に示すとおり、ミャンマーに対して国税による多大な財政的支援を実
施するとともに、財政投融資からの公的資金を呼び水とし、日本企業の投
資を促進してもいます。しかし、2015年に続き2020年の選挙でも多数の票
を得た国民民主連盟(NLD)による政権が発足しようとする直前、国軍に
よるクーデターの発生により、その民主化の約束は破られています。
国軍に関しては、所有する企業や様々な商取引を通じて経済的な利益を
得ていることが国連の調査によっても明らかにされています。NLD政権下
でも国防省は国の監査の対象外でした。国軍となんらかの形で関与する公
的事業やビジネスは、軍を裨益する可能性があったにもかかわらず、監視
の目を逃れてきました。国軍にもたらされた利益が、これまでのラカイン
州および少数民族居住地域における国軍や治安部隊による非人道的な行為、
さらには今回のクーデターの資金源となっている可能性は否めません。こ
れ以上の軍への裨益は阻止しなくてはならず、新規の事業は勿論のこと、
既存の事業についても早急な対応が必要です。
<日本政府による対ミャンマー支援の概要>
ミャンマーに対し日本政府は2018年度までに、ODAとして、有償資金協
力1兆1,368億円、無償資金協力3,229.62億円、技術協力984.16億円という
多額の資金援助を行ってきました。特に、2011年のいわゆる「民政化」以
降、JICAを通じ、ティラワ経済特別区(SEZ)の周辺インフラの整備と同
SEZ開発への出資・融資、水力発電所の改修やヤンゴン-マンダレー鉄道の
整備、送電システムや通信システムの整備、東西経済回廊の整備といった、
大規模なインフラ整備事業がODAとして実施されてきました。
また、日本政府はミャンマーに対する債務救済でも大きな役割を果たし
てきました。2013年には、2002年に決定した重責債務国への債務免除1,274
億円に加え、1,886 億円の債務救済も行われました。これらは、ミャンマ
ーが民主化を進めるという前提で、日本国民の負担により提供されてきた
ものです。その他にも、返済期限の過ぎた債務1,989億円の借換えも日本
が支援しました。
国際金融機関へのミャンマーの債務については、JBICを通じ2013年に、
ミャンマー政府のアジア開発銀行(ADB)に対する延滞債務の解消のため
に約5億1,200 万米ドル、世界銀行グループの一つである国際開発協会
(IDA)に対する延滞債務の解消のために4億3,000万米ドルのブリッジロ
ーン(短期のつなぎ融資)を提供し、ミャンマー政府への世銀、ADBから
の新規融資を可能にしています。
更に、日本政府はJBICを通じ、日本企業のミャンマーでの事業展開を支
援しています。旧都ヤンゴンでの都市開発や、ダウェー経済特別区開発会
社への出資など、2013年以降、10数件への支援を行なってきました。その
中には、国軍関連企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス・リ
ミテッド(MEHL)との事業提携が批判されたキリンホールディングス株式
会社によるミャンマー法人 Myanmar Brewery Limited の買収や、国軍兵
站総局と関係があるヤンゴン中心部における複合都市開発事業(通称Y
Complex 開発事業)も含まれています。なお、キリンホールディングスは
MEHLとの提携解消をクーデターの発生後すぐに発表しています。Y Complex
開発事業については、前述の国連の報告書には取り上げられていないも
のの、事業地を国軍からサブリースしていることで、その支払い賃料が国
軍の収益になっていることが強く疑われています。
国土交通省の監督する官制インフラファンドのJOINも、ミャンマーにお
いて、Y Complex開発事業を含む5件の事業に合計177億円(最大額)の投
資と計184億円の債務保証(同)を実施しています。
※(注)は省略しました。
<こちらの英語版もご活用ください>
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20210304_Eng.pdf
(ビルマ語にも翻訳され、SNSなどで広く回覧されています)
<参考資料>
国連の国軍の経済的利益についての報告書について
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20210224_01.html
ヤンゴン市内都市開発(Y Complex)について
http://www.mekongwatch.org/report/burma/ycomplex.html
本件についての連絡先:
メコン・ウォッチ
〒110-0016 東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3F
Tel. 03-3832-5034
Email: info@mekongwatch.org
呼びかけ団体:
特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク
特定非営利活動法人メコン・ウォッチ
賛同団体:
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)
アジア開発銀行福岡NGOフォーラム
一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター
一般社団法人Earth Company
公益財団法人アジア保健研修所
特定非営利活動法人AMネット
特定非営利活動法人アフリカ日本協議会
特定非営利活動法人アジア・コミュニティ・センター21
特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター
特定非営利活動法人アジア太平洋資料センター
特定非営利活動法人シェア=国際保健協力市民の会
特定非営利活動法人「環境・持続社会」研究センター (JACSES)
特定非営利活動法人地球市民ACT かながわ
特定非営利活動法人地雷廃絶日本キャンペーン
特定非営利活動法人横浜NGOネットワーク
特定非営利活動法人APLA
特定非営利活動法人HANDS
特定非営利活動法人WE21 ジャパン
特定非営利活動法人パルシック
特定非営利活動法人草の根援助運動
特定非営利活動法人地球の木
特定非営利活動法人日本地雷処理・復興支援センター
特定非営利活動法人国際環境NGO FoE Japan
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
特定非営利活動法人名古屋NGOセンター
日本ビルマ救援センター
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
他3団体
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10614:210306〕
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