参勤交代菅のバイデンに対する一層の忠誠
- 2021年 4月 18日
- 評論・紹介・意見
(2021年4月17日)
菅義偉がバイデンに呼びつけられて、いそいそとワシントンに出向いている。歴代こういう行事が繰り返され、日本の政権と国民は、その都度あらためて主従関係の存在を再認識させられる。さながら、これは参勤交代である。
幕藩体制においては、諸藩の大名も将軍には忠誠を見せなくてはならない。そのための制度として、参勤交代があった。正確には「参覲交代」と表記するのだという。「参」は「まいる」、「覲」は「まみえる」と訓で読む。どちらも身分上位者への謙譲の語である。菅のバイデン詣では、まさしく「参覲」である。でなければ、「朝貢」。あるいは、上司へのご挨拶。
呼びつけたバイデンと、呼びつけられた菅は、ワシントンで16日午後(日本時間17日朝)会談し、共同声明を発した。共同声明の項目は実に多岐にわたっている。基本は、アメリカ側の要請に日本が従ったというものだが、日本側の要望をアメリカが容れたものもあるようだ。
概要は、次のように報道されている。
両首脳は中国の軍事的行動により緊張が高まる台湾情勢について意見交換し、会談後、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記した共同声明を発表した。中国の東シナ海や南シナ海での海洋進出について「力による現状変更の試み、他者に対する威圧に反対する」との認識で一致。声明で香港と新疆ウイグル自治区の人権問題への「深刻な懸念」も盛り込んだ。
会談では気候変動問題で日米の協力強化を図る「日米気候パートナーシップ」を立ち上げることで一致。脱炭素化に向け、日米で世界をリードしていく方針を確認した。
首相は今夏の東京オリンピック・パラリンピックを「世界の団結の象徴」として開催する意向を示し、バイデン氏は支持を表明。
首相は会見で、共同声明を「今後の日米同盟の羅針盤になる」と述べた。声明では両首脳が「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに両岸問題の平和的解決を促す」と明記した。(毎日)
米中両大国の狭間に位置する日本が、より強力にアメリカ側に組み込まれた印象である。集団的自衛権の行使が現実味を帯びる事態となりかねない。これまでも、日本国憲法体系は、安保法体系の膝下に封じ込められていると評されてきた。今後はさらに事態の深刻化が予感される。
「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」と名付けられた、長文の日米首脳共同声明の中の気になる個所を抜粋してみる。
日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した。
米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎない支持を改めて表明した。
米国はまた、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを再確認した。
日米両国は共に、尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する。
日米両国は、困難を増す安全保障環境に即して、抑止力及び対処力を強化すること、サイバー及び宇宙を含む全ての領域を横断する防衛協力を深化させること、そして、拡大抑止を強化することにコミットした。
日米両国はまた、より緊密な防衛協力の基礎的な要素である、両国間のサイバーセキュリティ及び情報保全強化並びに両国の技術的優位を守ることの重要性を強調した。
日米両国は、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である、辺野古における普天間飛行場代替施設の建設、馬毛島における空母艦載機着陸訓練施設、米海兵隊部隊の沖縄からグアムへの移転を含む、在日米軍再編に関する現行の取決めを実施することに引き続きコミットしている。
日米両国は、在日米軍の安定的及び持続可能な駐留を確保するため、時宜を得た形で、在日米軍駐留経費負担に関する有意義な多年度の合意を妥結することを決意した。
菅総理とバイデン大統領は、インド太平洋地域及び世界の平和と繁栄に対する中国の行動の影響について意見交換するとともに、経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した。
日米両国はまた、地域の平和及び安定を維持するための抑止の重要性も認識する。
日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。
日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認した。
日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。
日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。
予想のとおり、中国はこの共同声明に反発した。
【北京・共同】在米中国大使館の報道官は17日、日米首脳会談後に発表した共同声明で台湾や香港、新疆ウイグル自治区に関する問題などを盛り込んだことについて「強烈な不満と断固反対を表明する」との談話を出した
また、これも当然のことながら台湾は歓迎している。
台湾、日米共同声明を歓迎 中国に情勢安定への貢献期待
【ワシントン・ロイター】台湾は、日米首脳が共同声明で「台湾海峡の平和と安 定の重要性」明記したことを歓迎し、中国に責任ある行動を呼び掛けた。台湾総統府の報道官は声明で「われわれは、台湾海峡および地域の一員として中国当局が自らの責任を果たし、安定と幸福に共に前向きな貢献をすることを期待する」と述べた。
日本の周囲の国際関係は、さらに緊張度を高めることになろう。今以上に、憲法9条のリアリティが問われることになる。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.4.17より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=16684
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10745:210418〕
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