バイデン政権下、ペルシャ湾に大きな変化(2) サウジ皇太子、初めてイランに和解を呼びかけ
- 2021年 5月 14日
- 評論・紹介・意見
- イランサウジアラビア中東坂井定雄
サウジアラビアとイラン。厳しい対立を続けてきた、ペルシャ湾の2大国サウジアラビアとイランの関係に、画期的な変化が起き始めた。サウジアラビアがイランに対して初めて、和解と良好な関係を呼びかけたのだ。
サウジアラビア政府の事実上の最高指導者、ムハンマド皇太子が、4月27日、初めて、国営TVのインタビューで、「サウジアラビアは、イランとの難しい関係を望んでいない」と明言、「イランは隣国であり、我々が望むのは、良好な関係にあることだ。」と続けた。
「我々にとっての問題は、イランの核開発計画からこの地域の不法な武装勢力の支持に至る問題。そして弾道ミサイルの発射だ。我々は、これらの問題の解決を見出すため、この地域及び国際的パートナーと協力し、だれもが利益を得るよう努力している。」
この発言は、数日前に、サウジアラビアとイランの当局者がイラクで。秘密の会合をした、という未確認情報や、サウジアラビアの当局者がイランを秘密訪問し、イラン当局と秘密会談をしている、という情報が、湾岸地域のアラブの国で流れたことを受けて、ムハンマド皇太子が国営TVでの確認発言となった。これらの情報について、サウジアラビア当局者は否定していたが、イラン当局者は確認も否定もせず、「対話は常に良いことだ」と発言していた。
前回に書いたように、バイデン米新政権は、トランプ政権が18年5月に一方的に脱退した米、英、仏、ドイツ、ロシア、中国6か国のイラン核「合意」の完全復活に大きな努力を始めている。当初から核合意に協力し、IAEA(国際原子力機関・本部ウイーン)の「査察」受け入れてきたイランは、米国の脱退後、「査察」受け入れを事実上拒否し、「合意」で禁止されている、20%までのウラン濃縮を再開した。
しかしイラン側は、4月以来すでに1か月になる、ウイーンでのゆっくりしたイラン「核合意」への完全復帰交渉で、容易には合意していない。
今回のムハンマド皇太子の、初めての「良好な関係を望む」発言には、ウイーンでの交渉を応援する意図がみえる。
トランプ前大統領が就任後初めて選んだ主要訪問国は、イスラム教スンニ派の大国サウジアラビアだった。ムハンマド皇太子が主役になったサウジアラビアは、巨額の兵器の輸入で歓迎した。以来サウジアラビアは、トランプが当初から示したイラン敵視に同調してきた。
イランは1978年の親米パーレビ王政を打倒したイラン革命以来、イスラム教シーア派の反米イスラム強国となった。革命の最中、反米派の学生たちが米大使館を約2年間占拠した。トランプの強固な反イラン姿勢は、このイラン革命への屈辱に根差していた。
バイデン政権は、トランプ政権の反イラン姿勢から脱却していると、思うのだが。
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