原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう! その33 「脱核完了のための12項目~連邦環境省の基本姿勢」を読もう ~ドイツ連邦環境省が2021年3月11日に発表~
- 2021年 5月 25日
- 評論・紹介・意見
- 木村雅英
原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう! その33
「脱核完了のための12項目~連邦環境省の基本姿勢」を読もう
~ドイツ連邦環境省が2021年3月11日に発表~
2021年5月24日 木村雅英
3.11東電福島原発事故後にいち早く脱核(脱原発)を決定したドイツ(連邦)が、2021年3月11日に「脱核完了のための12項目~連邦環境省の基本姿勢」を発表した。
ドイツ語原文の翻訳が「さようなら原発一千万人アクション」のホームページにアップされた(紹介:筑紫建彦さん、出典:ドイツ大使館、翻訳:奥道直子さん)。
是非読んでいただきたい。 =>http://sayonara-nukes.org
なお、ドイツの英語のプレスリリース(Ten years after Fukushima: Germany’s commitment to phasing out nuclear power continues)は次に。
https://www.bmu.de/en/pressrelease/ten-years-after-fukushima-germanys-commitment-to-phasing-out-nuclear-power-continues/
このドイツ連邦環境省の全12ページを読むと、日頃私たちが主張していることの正しさが確認できる。当たり前のことをきっちり主張するドイツ政府に感謝したくなる。以下には、翻訳からピックアップして紹介する。世界の原子力ロビーたちや経産省・資源エネルギー庁・電事連・電力会社・原子力学者たちも熟読して欲しい。
「脱核完了のための12項目~連邦環境省の基本姿勢」の前書きから
〇ドイツは、2011年3月11日の福島における原子炉災害の後、遅くとも2022年末までに原子力の商業利用から脱け出すことを、全政党の合意のもとに決めた。
〇連邦環境省は、脱核に向けたみずからの努力は終わった、とはまだまだ見ていない。
〇ドイツに、ヨーロッパに、そして世界じゅうに、首尾一貫した更なる措置を必要とする核リスクが残る。
〇原子力のリスクは国境でストップしない。
〇国境近くの地域では、隣国の老朽化した原子力発電所の稼働について多くの人々が心配している。
〇原子炉の運転年数が多くの場合、ほんらい許可された操業年数を超えて、かなり長く延長されようとしている。
〇原子力は気候保護のための解決策ではない。
〇原子力は常に残余リスクをはらんでいる。また、原子力はお金がかかりすぎる。まさに再生可能エネルギーに比べても高すぎ、加えて再生可能エネルギーの拡大をはばむ。
ガイドラインの3分野
A.ドイツの脱核を完了する:核工場を閉鎖する・最終処理を促進する・再生可能エネルギー拡大を加速する
B.ヨーロッパ内の核リスクを削減する・協働を強化する
C.核の安全性を全世界で高める・専門知識に基づいた能力を保持する・事実に即した情報を得る
12のガイドライン
1.リンゲンおよびグローナウの核工場を閉鎖する
2.風と太陽がより早く核と石炭の代替えとなるように再生可能エネルギーの拡大を加速する
3.最高の安全性に基づいた高レベル放射性廃棄物処理を決然と促進する
4.より多くの情報・より多くの市民参加を可能とする
5.核に対して批判的な国々との団結を求める
6.老朽化し過ぎた原発の安全性リスク:稼働期間延長に反対し、関与を請求する
7.欧州連合(EU)内外の原子力発電所のために公共金を出さない
8.国境近くにある原子力発電所 ― 二国間の委員会を強化する
9.ドイツの脱核後も放射線緊急事態防護を高いレベルで保持し、国際的な結びつきを深める
11.核にたいする責任を改善 ― 我々の優先順位は損害予防と犠牲者保護
12.専門知識に基づいた能力を保持し、国際的な核討論および新原子炉構想に確かな事実を提供する
最後の12では、日本でも検討されている小型モジュール原子炉(SMR)について。
小型モジュール原子炉(SMR)批判
〇小型モジュール原子炉(SMR)構想は、技術的にはたいがい新しい皮袋に入った古いぶどう酒のようなもの。
〇小型モジュール原子炉(SMR)の開発・建設・稼働・廃炉は、従来の原発に比べ、核安全性の面において、また、安全確保のための措置および核兵器非拡散分野において、さらに数多くの未解決問題とリスクを投げかける。
〇安全約束について、今までのところ負託にこたえうる証拠がない。
〇塩溶液や鉛などの新冷却材の使用によって、より多くの廃棄物ができるかもしれない。
〇小型モジュール原子炉(SMR)は、(数字で比較すれば)少数の大施設の核エネルギー生産の短所を、多数の小施設に移すのである。差引勘定してみれば、施設は小さくなるが、問題は総計ではむしろ大きくなる。
陸続きの隣国が原発を動かしている中で、ドイツが大変な苦労をしていることが良く分かる。一方、島国である日本は独自に脱核政策を実現することは簡単だ。広島・長崎・福島を経験した地震・火山大国である日本は直ちに「脱核」に舵をきるべきだ。
第6次「エネルギー基本計画」を検討している経産省は、ドイツが老朽原発の安全リスクを危惧して稼動延長を否定し、SMRを「新しい皮袋に入った古いぶどう酒」とより問題を大きくすると述べていることを重く受け止め、脱原発に舵を切れ。
以上
木村雅英 KIMURA Masahide e-mail : kimura-m@ba2.so-net.ne.jp 携帯TEL : 080-5062-4196 Twitter : @kimuramasacl 経産省・規制委・放射線被曝の批判ページ:http://www.jca.apc.org/~kimum/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10918:210525〕
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