SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】437 イスラエルがAUアフリカ連合を侵食
- 2021年 8月 17日
- 評論・紹介・意見
- AUアフリカ連合イスラエルサハラ平田伊都子西サハラ
<タリバンの祖国アフガニスタン奪回>に関して、イスラエル紙ハーレツは、<アメリカの大失敗>とアメリカによる20年間のアフガン侵略を酷評しています。 <アメリカ史上最悪の外交災害の一つ>とも、表現しています。 そのイスラエルは、他国パレスチナを73年間も侵略し続けているのです。 そして、イスラエルが自慢する外交工作で、AUアフリカ連合を凌駕しようと企んでいます。
① イスラエルのAU復帰工作:
2021年7月22日、イスラエル紙ハーレツが、「イスラエルはAUアフリカ連合へのオブザーバー参加を表明」と、伝えた。OAUアフリカ統一機構(AUアフリカ連合の前身)の時代にイスラエルはオブザーバー参加をしていた。が、OAUからAUへ発展解消した2002年に、故カダフィ大佐からその資格を剥奪された。資源が乏しい小国イスラエルにとって、アフリカはいまも未開のエルドラド(天国)で、なおかつ、中古の武器やIT機器や技術を売りつけれる在庫処分市場と見なしているようだ。商売人ベンヤミン・ネタニヤフ前首相はアフリカ諸国との関係改善を重要課題とし、2016年7月にはウガンダ、ケニア、ルワンダ、エチオピアを歴訪した。また同年12月には、ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)とMASHAV(イスラエル国際開発庁)が共催する農業会議をエルサレムで開催し、元フランス植民地・西アフリカ7カ国の関係閣僚を招くなどして、アフリカ外交工作を続けてきた。こうして、イスラエルは2016年にギニア、2019年にチャド、2020年にはスーダンと、相次いで国交を回復した。そして2020年末には、モロッコと国交を正常化させた。トランプ前大統領の義理の息子クシュナーがQuid Pro Quo(クイド・プロ・クオ)交換取引で、イスラエル・モロッコ国交正常化を実現した。つまり、<モロッコとイスラエルの国交正常化>を、<西サハラ領有権承認>と交換したのだ。ユダヤ系アメリカ人でトランプ娘婿のクシュナーは、「4年前から積み上げてきた外交成果だ」と、イスラエル紙エルサレム・ポストに語った。
モロッコとイスラエルのAUアフリカ連合侵略合同作戦は、まず、モロッコのAU復帰を2017年に実現させ、今また、イスラエルのAUオブザーバー復帰を成功させつつある。
現在のAU委員会議長は、イスラエルが傘下に置いたチャドの元首相・ムーサ―・ファキが務めている。
② イスラエルのAU復帰に反対する西サハラとアルジェリアと北アフリカ:
8月7日、西サハラ難民政府外務省は、「ムーサー・ファキAU委員会議長による、イスラエルのAUオブザーバー復帰承認は、AUアフリカ連合の利益を損ね、その憲章と加盟国の真摯な意思を無視したことに他ならない」との声明を出した。さらに声明は、「AUアフリカ連合の全加盟国に、ムーサ―・ファキAU委員会議長のイスラエル・オブザーバー承認に反対することを促す。元来、この類の重要な決定は、AUの法的政治的議論と加盟国による公平で透明な投票を必要としなければならない。裏工作や二国間取引で決められるべきではない」と、言及している。
同じく8月7日、APSアルジェリア国営通信は、「ムーサ―・ファキAU委員会議長が AUオブザーバー国としてイスラエルを承認した件に関し、アルジェリアは次回のAU最高会議に、この承認とシオニストの存在を拒否するAU憲章との整合性を検証するよう、提案している」と、発表した。
エジプト、リビア、チュニジア、アルジェリア、西サハラ、モーリタニアと、モロッコを除く北アフリカ諸国は、イスラエルのAUオブザーバー復帰に反対している。
AUアフリカ連合のキーパーソン・ムーサ—・ファキ議長、元チャド首相
③ モロッコが招待したイスラエル外務大臣:
8月11日、モロッコは首都ラバトに、ヤール・ラピド・イスラエル外務大臣を招待した。ヤール・ラピド・イスラエル外務大臣は、イスラエルとモロッコの二国間外交経済協定調印式で、「本日、我々は優秀な政治家としてではなく、親として、我々の子供たちのために、より安全な世界を目指し共に協力していくことを誓う」と、述べた。
これに対してナセル・ブリタ・モロッコ王国外務大臣は、「モロッコ国王陛下が述べられたように、この二国間の強い絆は、王国に古くから根付いているユダヤ社会とイスラエルに定着しているモロッコ社会の賜物だ」と、モロッコ国王陛下のアラブに先駆けたイスラエル政策を称賛した。
共同記者会見でヤール・ラピド・イスラエル外務大臣は、「観光と経済取引と文化交流の面で協力していきたい。我々の戦うべき相手は、隣国や異教徒ではなく、貧困と無知と世界的伝染病だ」と、語った。
MAP(マグレ・ブアラブ通信)モロッコ国営通信社が、「ラピドのモロッコ旅行は、イスラエル国とモロッコ王国が正式国交を回復してから、初めてのイスラエル外務大臣公式訪問となる。そして、ラバトに再開されたイスラエルの連絡事務所は、モロッコとイスラエルのみならず地域社会の象徴となる」と、アメリカ国務長官アントニー・ブリンケンの声明を紹介した。アントニー・ブリンケンはハンガリー系ユダヤ人とウクライナ系ユダヤ人の息子として生まれ、母が再婚した義父もホロコースト生き残ったリトアニア系ユダヤ人で、立派なユダヤ系アメリカ人だ。2011年5月11日、ブリンケンはホワイトハウス・シチュエーションルームでオバマ政権の一員として、残酷な米軍によるオサマ・ビン・ラデイン殺害実況中継を観賞した、、
国連事務総長が8月6日に広島の、8月9日に長崎の、原爆犠牲者慰霊平和祈念式典で、追悼メッセージを捧げました。 そして、<核兵器のない世界>というゴールに向け、国連は全力で取り組んでいくという決意を表明しました。
「ニューヨークタイムズがイスラエルの核兵器保有を暴露した。国連事務総長も言及すべきだ」と、アブデ・ル・ハミード・パレスチナ人記者が、国連定例記者会見で問い質しました。 ステファン国連事務総長報道官は、「我々の核軍縮に関する世界への呼びかけは、明確だ。この記事に関してコメントはない」と、短く答えました。 またもや、パレスチナ人記者の質問は、はぐらかされました。 加えて、最近とみにこのパレスチナ人記者に対する妨害が酷くなってきました。 2年前に国連から追放された、西サハラよりの記者を思い出します、、
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年8月16日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11209:210817〕
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