総選挙における4野党共通政策が成立
- 2021年 9月 10日
- 評論・紹介・意見
- 澤藤統一郎選挙
(2021年9月9日)
日本の命運を決めるものは自民党総裁選挙ではない。その次に控えている総選挙である。自民党総裁選はコップの中の嵐でしかないが、来たるべき総選挙は、われわれの自由や暮らしや生命をも左右する。
与党勢力が誰を「顔」にして総選挙に臨むにせよ、国政を私物化し、著しく政治を劣化させたアベ・スガ政権の後継でしかない。ここでの政治の転換がなければ、危機に瀕している民主主義の再生はない。
一筋の光明は、野党共闘の成立である。昨日、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の4党首が、市民連合提案の「衆議院総選挙における野党共通政策の提言――命を守るために政治の転換を――」に合意し署名して、その実現に全力を尽くすことを誓約した。
この6項目の政策提言は体系的によくできていると思う。権力の私物化を承継し、憲法を壊し、明文壊憲までたくらむ自公与党とこれに追随する維新勢力との対決軸をよく表している。
一昨年(2019年)5月29日、やはり市民連合の呼びかけに応じて、参議院選挙での野党共闘政策が成立している。そのとき、「この要望を受け止め、参議院選挙勝利に向けて、ともに全力で闘います。」として、政策協定に調印(署名)した参加者は、立憲民主党・国民民主党・日本共産党・社会民主党・社会保障を立て直す国民会議の、野党4党と1会派だった。今回、国民民主党の名はない。
報じられているところでは、「国民民主党は『原発のない』や『安保法制の違憲部分の撤回』の表現に党内に異論があるため、8日の調印式には玉木雄一郎代表が参加しないことになった。」という。また、『地元合意もなく、環境を破壊する沖縄辺野古での新基地建設を中止する』という政策の文言もネックになっているという。〈原発〉〈集団的自衛権〉〈辺野古建設〉を容認するというのでは、自公維と変わらない。分水嶺の向こう側の世界に住む人々を無理に味方にすることはない。
以下に、野党4党首が署名した共通政策の全文を掲記する。これから、各選挙区らおいて具体的な候補者選定作業が始まることになる。
*********************************************************************
衆議院総選挙における野党共通政策の提言
――命を守るために政治の転換を――
新型コロナウイルスの感染の急拡大の中で、自公政権の統治能力の喪失は明らかとなっている。政策の破綻は、安倍、菅政権の9年間で情報を隠蔽(いんぺい)し、理性的な対話を拒絶してきたことの帰結である。この秋に行われる衆議院総選挙で野党協力を広げ、自公政権を倒し、新しい政治を実現することは、日本の世の中に道理と正義を回復するとともに、市民の命を守るために不可欠である。
市民連合は、野党各党に次の諸政策を共有して戦い、下記の政策を実行する政権の実現をめざすことを求める。
1 憲法に基づく政治の回復
・安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの法律の違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する。
・平和憲法の精神に基づき、総合的な安全保障の手段を追求し、アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行う。
・核兵器禁止条約の批准をめざし、まずは締約国会議へのオブザーバー参加に向け努力する。
・地元合意もなく、環境を破壊する沖縄辺野古での新基地建設を中止する。
2 科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化
・従来の医療費削減政策を転換し、医療・公衆衛生の整備を迅速に進める。
・医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーの待遇改善を急ぐ。
・コロナ禍による倒産、失業などの打撃を受けた人や企業を救うため、万全の財政支援を行う。
3 格差と貧困を是正する
・最低賃金の引き上げや非正規雇用・フリーランスの処遇改善により、ワーキングプアをなくす。
・誰もが人間らしい生活を送れるよう、住宅、教育、医療、保育、介護について公的支援を拡充し、子育て世代や若者への社会的投資の充実を図る。
・所得、法人、資産の税制、および社会保険料負担を見直し、消費税減税を行い、富裕層の負担を強化するなど公平な税制を実現し、また低所得層や中間層への再分配を強化する。
4 地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行
・再生可能エネルギーの拡充により、石炭火力から脱却し、原発のない脱炭素社会を追求する。
・エネルギー転換を軸としたイノベーションと地域における新たな産業を育成する。
・自然災害から命とくらしを守る政治の実現。
・農林水産業への支援を強め、食料安全保障を確保する。
5 ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現
・ジェンダー、人種、年齢、障がいなどによる差別を許さないために選択的夫婦別姓制度やLGBT平等法などを成立させるとともに、女性に対する性暴力根絶に向けた法整備を進める。
・ジェンダー平等をめざす視点から家族制度、雇用制度などに関する法律を見直すとともに、保育、教育、介護などの対人サービスへの公的支援を拡充する。
・政治をはじめとした意思決定の場における女性の過少代表を解消するため、議員間男女同数化(パリテ)を推進する。
6 権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する
・森友・加計問題、桜を見る会疑惑など、安倍、菅政権の下で起きた権力私物化の疑惑について、真相究明を行う。
・日本学術会議の会員を同会議の推薦通りに任命する。
・内閣人事局のあり方を見直し、公正な公務員人事を確立する。
2021年9月8日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
上記政策を共有し、その実現に全力を尽くします。
立憲民主党代表 枝野 幸男
日本共産党委員長 志位 和夫
社会民主党党首 福島みずほ
れいわ新選組代表 山本 太郎
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.9.9より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=17537
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion11280:210910〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。