ベンセレーモス(Venceremos)! 勝利は我らに
- 2021年 10月 23日
- 評論・紹介・意見
- 「ベンセレーモス」チリ小原 紘新自由主義選挙
韓国通信NO681
チリの革命歌「ベンセレーモス」を思い出した。
世界で初の自由選挙によって誕生したアジェンデ社会主義政権(1971~1973)はCIAの露骨な干渉とクーデターによって抹殺された。地球の裏側で起きた前代未聞の事件に怒りをこめてこの歌を歌った記憶がある。
<チリ人民が再び立ち上がった>
16年にわたったピノチェットの恐怖政治は数千人を超す「行方不明者」を生み、人権弾圧は苛烈を極めた。
経済学者フリードマン※に学んだ「シカゴボーイズ」の主張を取り入れたチリの新自由主義政策が破局を迎えようとしている。
今年5月に行われた新憲法起草議員選挙で与党が敗北。ピノチェット時代、1980年に制定された憲法を変えてチリは人権の保障、格差是正をめざす。
わが国でも大きな争点となっている「新自由主義」。自民党でさえも新自由主義による貧困の格差を認めざるを得なくなった。だが新首相の「新しい資本主義」では何も変わらない。成長重視がもたらした惨憺たる現実に対する反省がまるでない。野党は分配を盛んに主張するが選挙で新自由主義を克服するのは容易ではない。これまでの資本主義という経済システムを認めるかどうかという大きな問題が含まれているからだ。
選挙で勝利したチリの野党。だがその原動力となったのは民衆の蜂起だった。アジェンデ革命の記憶が生きていることは想像に難くない。<写真/演説するアジェンデ大統領/チリでは最も尊敬されている政治家だ>
だが変革は一朝一夕で起きたわけではない。
教育の民営化に反対する高校生たちの「ペンギン革命」(2006)、大学改革を求める「学生反乱」(2011)、13年には60万人が参加した「年金改革」運動、19年にはジェンダー平等を訴える女性ゼネスト、全国の住民、環境団体が加わり、変革の主人公になった。
日本社会が繁栄に酔いしれている間、チリ民衆は軍政と闘い、民主化の道を着実に歩んできた。ベンレーモスを忘れなかった。折しもチリの闘いを描いたグスマン監督の『夢のアンデス』が公開された。民主主義が根底から問われる日本の今回の選挙。感嘆と称賛の声が上がっている。東京地区は岩波ホールで。
※フリードマン/ミルトン・フリードマン( Milton Friedman、1912 – 2006)。アメリカの経済学者。古典派経済学とマネタリズム、市場原理主義・金融資本主義を主張しケインズ的総需要管理政策を批判した。ケインズ経済学からの転向者。共和党支持者。1976年、ノーベル経済学賞受賞。
<世界中から新自由主義NOの声が>
99%の貧者と富める1%への怒りは資本主義のど真ん中のアメリカから生まれた。今や世界中から貧困層の悲鳴が聞こえてくる。
南米チリだけではない。フジモリ元大統領の娘の大統領選が注目されたペルーでは、コロナ感染が広がる中、格差解消を訴えたペトロ・カスティジョ大統領が誕生。メキシコ、アルゼンチンでも貧困問題を訴え左派政権が誕生した。コロンビアとブラジルの保守政権はコロナと貧困に見舞われた国民たちから大ブーイングを浴びて苦境に立たされている。新自由主義に毒された政権が次々と退陣を求められている。
わが国の長期政権の足元は揺らいでいるように見えるが、大甘な国民に助けられて政党支持率は相変わらずダントツ、何もせず公約だけ発表した岸田内閣の支持率が50%を超すすという異常な状態が続いている。
<総選挙にのぞんで>
でたらめ政治に鉄槌を! 古めかしい言葉だがどうしてもこの言葉を使いたい。野党四党が共同声明を発表して小選挙区で挽回する体制ができた。地元千葉8区では野党の立候補者の一本化が実現して立憲民主党の当選の見通しが見えてきた。
立候補者とのタウンミーティングに、のこのことでかけた。
コロナ対策から始まり格差問題、環境問題、エネルギー問題、生活、こども、福祉と立憲の公約に沿った説明を聞くことができた。良くも悪くも総花的、かつて民主党が勝利した選挙のマニフェストを思い出した。あれだけ期待した民主党政権だったが期待外れだった。3年間に3人の首相。野田首相は自民党野田派とまで言われるほどの体たらくぶりだった。小池百合子の希望の党になだれを打って合流。無条件に入党を認めないという小池百合子の一言で我に返り、立憲民主党が結成されたという経過も情けない。
枝野代表の奮闘で一時的にブームが起きて、なんとか衆参合わせて154名の野党第一党だが支持率は10%にも届かない。国民の不満の受け皿としてもっと大きくなって欲しいと願うが、頼りない。総論は立派でも各論となると腰砕けになる曖昧政党という感はまぬかれない。脱炭素社会の実現を公約に掲げても「東海第二原発の再稼働をどう考えるのか」という具体的な問題にどう答えるのか。質問するつもりだったが時間切れで会はお開きになった。
社会を変えるのは議員ではない。政党は党利党略で動く。私たちのエネルギーが社会を変えていく。国の主人公は議員にお願いするものではなく命令するものだ。2017年の韓国の「ローソクデモ」、チリの革命から学ぶことは多い。選挙期間中、公職選挙法違反にならない「チェンジ」をテーマにしたプラカードを掲げ街頭に立つつもりだ。
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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