巣ごもりの中で縮みあがる日本政治の閉塞!
- 2021年 11月 2日
- 時代をみる
- 加藤哲郎政治選挙
2021.11.1 この更新、総選挙結果を見ながら書き始めたのですが、日本の「失われた四半世紀」を裏付けるような、憂鬱な政治の継続です。投票率は55.9%、直近のドイツ連邦議会選挙は76.6%でしたから、この国の主権者の政治参加の消極性は、相変わらずです。政権交代をもたらしたドイツとは異なり、この国では直前の自民党総裁選という擬似政権交代で、安部・菅政権の基本政策継承ばかりでなく、モリ・カケ・サクラ等数々の権力犯罪の隠蔽と不訴追が決まっており、日本学術会議の会員任命拒否やコロナ対策での科学者の提言無視も、首相の交代でうやむやにされます。官邸の独断で進められた布製「アベノマスク」8200万枚115億円分が配られず倉庫保管料が6億円と会計検査院に指摘されても、東京都のコロナ感染者数が今年4−10月で4512人も過少集計され死者も9人増えていたと今頃発表されても、第5波ピーク時に強行したオリンピック・パラリンピック費用3兆円以上と施設維持費のツケがまわってきても、感染がピークアウトすると、たちまち「みそぎ」の気分です。とっくに日本国籍を離れた米国人科学者のノーベル賞受賞や、米国大リーグでのびのびプレイする日本人の活躍にうっぷんをはらしながら、政治を変えることによる格差是正・社会構造変革には踏み出せません。あきらめているようです。個々の政治家の勝敗は別にしても、自民は絶対安定多数議席確保、与党公明党も完勝、立憲民主党と共産党は野党共闘にも関わらず議席減の敗北・共倒れ、自民党への不満の受皿は、改憲勢力日本維新の4倍化大勝、国民民主党の微増にまわったかたちです。党によっては、選挙後の指導責任追及・世代交代が避けられないでしょう。
菅内閣が東京オリンピック・パラリンピックを強行開催したとき、日本の新型コロナ感染は第5波でピークでした。それで菅内閣は行き詰まり、9月の自民党総裁選、岸田新内閣の登場で化粧直しをして、公示後2週間での投票日になりました。その間、自民党総裁選がメディアの選挙報道を独占し、首相予備選風雰囲気を作りました。そこから第5波は、理由ははっきりしませんが急激に感染者数を減らし、緊急事態宣言も全面解除です。政府はワクチン接種70%の効果と宣伝します。安倍内閣期の総選挙もそうでしたが、北朝鮮が与党を応援するかのようにミサイルを近海に発射し、尖閣から台湾の中国脅威論が、メディアでは特に現実味を帯びました。それでなくても不安定なアフガニスタン、ミャンマー、スーダン情勢のなかで、「敵基地先制攻撃」から「防衛費GNP2%」にいたる国家安全保障論が、世論の大きな抵抗を受けることなく跋扈しました。全ては自公政権維持への追い風でした。国際的に見れば、9月の国連総会からG20、COP26にいたる気候変動・温暖化に抗する流れ、核軍縮の努力、 台湾問題に限らない米国と中国のヘゲモニー争いとメルケルなきEU、変異株が猛威をふるうイギリス、ロシア、政権危機に近いブラジルなど激動はつづいていますが、GDP3位とはいえ一人あたりでは韓国以下の30位までさがった日本は蚊帳の外、ジェンダー・ギャップ指数は153か国中121位(2019年)の途上国なのに「選択的夫婦別姓」「女性議員比率9.9%、世界166位」すら大きな争点にならない人権発展途上国です。コロナ以前から巣ごもりして、世界地図の上での自分たちの位置も見えずに、近隣国を嫌悪しヘイトしている内に、世界の大きな流れにも乗り遅れ、ミサイルや新型ウィルスの「外敵」に萎縮し縮みあがる、内向きの国になったようです。
第6波は確実にやってくるでしょうが、サイクルの合間で、おそるおそる学習会や市民運動イベントも再開です。私も「ヒロシマ連続講座」の竹内良男さんと組んで、「パンデミックと731部隊」という連続市民講座を対面で開始しました。9月25日から月1回で、来年3月までの予定です。9月の第1回「オリンピックに翻弄された日本のパンデミック対策ーー731部隊から感染研・ワクチン村へ」の模様は、you tube で公開されています。10月の第2回「映画『スパイの妻』と731部隊ーー『幻の東京オリンピック』の影で進められた細菌戦と人体実験」も、you tube になりました。第3回11月6日は多磨霊園でのフィールドワーク、第4回12月4日は、医師たちの731部隊と獣医師たちの100部隊についての、獣医学者小河孝さんと組んでの「人獣共通感染症への戦争動員」ジョイント講演です。学術論文データベ ースに、木俣 雅晴さん「オーギュスト・ブランキの革命思想」の投稿があり、審査の上採用し収録しました。私自身の3月NPO法人731資料センター第10回総会記念講演「「日本のコロナ対応にみる731部隊・100部隊の影」(NPO法人731資料センター『会報』第37号、2021年10月)が活字になりましたので研究室に、『東京新聞』8月8日号掲載、城山英巳さん『マオとミカドーー日中関係史の中の「天皇」』(白水社)の書評を図書館に、それぞれ収録しておきます。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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