なんと、【「反共」4党で憲法改正に突き進め】だと?
- 2021年 11月 3日
- 評論・紹介・意見
- 明文改憲.澤藤統一郎
(2021年11月2日)
私のメールボックスに、メルマガ「週刊正論」が定期的に送られてくる。私が積極的に申し込んだはずはないのだが、わざわざ断るのも面倒で手続の時間も惜しい。だからいつまでも送られてくる。もっとも、日付が元号なことだけで不愉快で、滅多に目を通すことはない。
ところが、昨夕の配信記事には、ギョッとさせられた。《メルマガ「週刊正論」令和3年11月1日号》のタイトルが、【「反共」4党で憲法改正に突き進め】というもの。「国家基本問題研究所」の「今週の直言」に掲載された月刊「正論」発行人有元隆志の論考だという。
「反共・4党」とは、自民・公明・維新・国民のこと。「反共4党よ、今こそ好機到来ではないか。憲法改正に突き進め」、これが「反共右翼」の現状認識であり、共通目標なのだ。少々不愉快ではあるが、抜粋してご紹介する。
◇衆院選で自民党は国会を安定的に運営できる絶対安定多数を単独で確保した。さらに自民、公明の両与党と、公約に憲法改正の方向性を明記した日本維新の会、国民民主党を加えると、改憲勢力は憲法改正発議に必要な310議席を優に超えた。政権発足から間もない岸田文雄首相は、選挙戦で公約したように「憲法改正を実現すべく最善の努力」をしてほしい。
◇今回の選挙戦では、日本共産党が立憲民主党と「限定的な閣外からの協力」で合意し、多くの選挙区で候補者を一本化した。ところが、岸田首相は選挙戦終盤になるまで、遊説などでこの問題に言及しなかった。憲政史上、初めて共産党の政権参画が実現するかもしれない重大な問題を先頭に立って訴えるべきだった。岸田首相には猛省を促したい。
◇衆院選の結果を「反共」という視点でみると、自民、公明、維新、国民民主という枠組みができる。4党の議席数を合わせると憲法改正発議が可能な345議席に達した。参院では4党を合わせると169議席で、発議に必要な164議席を上回る。
◇憲法改正に強い意欲を示した安倍晋三政権下では、自公両党だけで衆参両院で3分の2以上の議席を確保していても改正は実現しなかった。維新と国民民主党の協力を得られれば、実のところは改憲に積極的ではなかった公明党も重い腰を上げる可能性もある。
◇「聞く力」があると自負する岸田首相は、維新や国民民主の意見に耳を傾けながら憲法改正への協力を得て、改正実現に動くべきだ。それが岸田首相に課せられた使命である。
右翼の見るところ、「反共」即ち「改憲」である。「親共」即ち「護憲」なのでもあろう。憎き敵こそ共産党であり、共産党を核として護憲勢力があり、反共勢力はそのまま改憲勢力なのだ。この図式からは、今こそ改憲のチャンスと映るであろう。しかし、さてどうだろうか。
自民・公明・維新・国民、その議員と支持者がはたしてすべて改憲派であろうか。改憲に突っ走って、各政党をまとめられるだろうか。反共4党が一致できるだろうか。そして、反共各党が明確な改憲方針を打ち出したとき、今回投票した支持者をつなぎ止められるだろうか。
岸田や山口、玉木などの反共野党の領袖が、所属議員の数合わせだけで軽々に改憲発議に踏み切れるとは思えない。発議して国民投票で勝てる見通しがもてるだろうか。仮に発議したうえでの国民審査で敗北したとすれば、その政治的ダメージははかりしれない。そのとき、再度の改憲発議ははるかな未来に遠のくことにならざるを得ない。
それでもこの選挙結果である。今しばらくは、右翼が跳梁して【「反共」4党で憲法改正に突き進め】という雰囲気が残るのだろう。その今でこそ、それを許さぬ護憲陣営の運動が求められているというべきなのだ。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.11.2より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=17870
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion11452:211103〕
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