オミクロン株にそなえて、今こそ全国でPCR無償検査体制を!
- 2021年 12月 2日
- 時代をみる
- オミクロン加藤哲郎日大立憲民主党
2021.12.1 前回更新は、総選挙開票直後で、ドイツと対比しながら、「この国では直前の自民党総裁選という擬似政権交代で、安倍・菅政権の基本政策継承ばかりでなく、モリ・カケ・サクラ等数々の権力犯罪の隠蔽と不訴追が決まっており、日本学術会議の会員任命拒否やコロナ対策での科学者の提言無視も、首相の交代でうやむやにされます。……政治を変えることによる格差是正・社会構造変革には踏み出せません。あきらめているようです。個々の政治家の勝敗は別にしても、自民は絶対安定多数議席確保、与党公明党も完勝、立憲民主党と共産党は野党共闘にもかかわらず議席減の敗北・共倒れ、自民党への不満の受皿は、改憲勢力日本維新の4倍化大勝、国民民主党の微増にまわったかたちです」と書きました。それから1か月、10月のメディアは自民党総裁選を首相予備選挙として大々的に報じたのに、総選挙で議席を減らした立憲民主党の代表選は、一向に盛り上がりません。メディアの無視もありますが、4人の候補者で総選挙総括の活発な論戦になるかと期待していたら、来年参院選を控えて共産党との野党共闘・候補者調整の効果を無視できず、かといって労働組合・連合との関係を清算するわけにもいかず、旧枝野執行部との距離の取り方が多少違う程度で、基本路線の抜本的検討には向かいません。案の定、相対的に若いが連合寄り・改憲論議容認の泉健太代表選出で決着。共闘相手の共産党には厳しい結果ですが、日本政治の閉塞構造そのものは、大きく変わりません。執行部への女性登用ばかりでなく、コロナ対策や予算編成で、野党第一党としての意味を持てるでしょうか。お手並み拝見です。
山岡淳一郎『コロナ戦記』(岩波書店)が出ました。改めてこの国の初期のパンデミック対策、ダイヤモンド・プリンセス号対応、永寿総合病院クラスター対応などを振り返ると、東京オリンピックや与党の政治日程に翻弄されてきた、この国のコロナ対応のボタンの掛け違いが悔やまれます。結局オリパラ開催時がピークであったコロナウィルス感染第5波の鎮静化が、総選挙での自民党勝利・岸田内閣成立の追い風になりましたが、感染者減少に浮かれて旅行や忘年会の日程が入ってきた途端に、国際的には新たな変異株オミクロンの急速な拡大です。日本にも入ってきて、年末から年明けと想定されていた冬期のリバウンド、第6波到来のきざしです。ところが政府の備えは、第5波収束の科学的理由さえよくわからないまま、3度目のワクチン接種計画も曖昧で、相変わらずのその場しのぎです。一部アフリカ諸国のみに絞ろうとした外国人の入国制限を全世界に広めたのは、ようやく国際水準でいいことですが、水際対策と言っても、日本人には緩やかです。空港検疫での最初の検査は、いまだにPCR検査ではなく、抗原定量検査です。オミクロン株を見分けるゲノム解析は、相変わらず厚労省管轄の感染症研究所の独占で、文科省管轄の大学や民間の高度な技術・機器・人材は十分に活かされていません。昨年の第一波以来の「日本モデル」の根本的欠陥、感染研・地方衛生研・保健所ルートでの「法定検査」独占、無症状感染を無視したPCR検査の限定とクラスター対策、医療崩壊を招いた感染症軽視と病床確保のゆがみが、基本的に続いています。岸田首相は、安部・菅内閣のコロナ対策との差異化をはかって、無症状・一般人を含む無償PCR検査の拡充を言い出しましたが、各都道府県の必要に応じて、となっています。オミクロン株が出てきた今こそ、昨年から世界中で普通に行われてきた、誰でもいつでもどこでもPCR検査ができる体制を、構築すべきです。ドラッグストアでもドライブスルーでも、拡充すべきです。これまでのワクチン一本足対応を改め、後手後手だった日本の感染対策を、世界標準の徹底した検査体制で補うことが、GoToトラベルやインバウンド観光再興よりも前に、この国のなすべきことです。
日本大学理事長の金権まみれの闇に、ようやく司直のメス。明らかに、半世紀前の日大闘争時の古田重二良会頭問題の再現。田中理事長は、当時は相撲部で学生横綱、大学執行部に反対する学生たちに暴力で襲いかかった体育会系学生の中心だったようです。今回は、コロナ禍でのオンライン授業中で、学費・授業料を私消された学生たちや、かつて古田会頭体制を打倒したOB・OGたちの運動がないことが、寂しい限りです。パンデミック第6波は確実にやってくるでしょうが、「ヒロシマ連続講座」の竹内良男さんと組んだ私の「パンデミックと731部隊」という対面の連続市民講座も、毎回会場を変えて、おそるおそる再開です。9月の第1回「オリンピックに翻弄された日本のパンデミック対策ーー731部隊から感染研・ワクチン村へ」の模様は、you tube で公開されています。10月の第2回「映画『スパイの妻』と731部隊ーー『幻の東京オリンピック』の影で進められた細菌戦と人体実験」も、you tube になりました。第3回11月6日は多磨霊園でのフィールドワーク、第4回12月4日は、医師たちの731部隊と獣医師たちの100部隊についての、獣医学者小河孝さんと組んでの「人獣共通感染症への戦争動員」ジョイント講演ですが、これからの詳細は、主催者の方に問い合わせてください。学術論文データベ ースに、木俣 雅晴さん「オーギュスト・ブランキの革命思想」の投稿があり、審査の上採用し収録しました。私自身の3月NPO法人731資料センター第10回総会記念講演「「日本のコロナ対応にみる731部隊・100部隊の影」(NPO法人731資料センター『会報』第37号、2021年10月)が活字になりましたので研究室に、『東京新聞』8月8日号掲載、城山英巳さん『マオとミカドーー日中関係史の中の「天皇」』(白水社)の書評を図書館に、それぞれ収録しておきます。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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