中学生に語る「弁護士って何?」
- 2021年 12月 5日
- 評論・紹介・意見
- さわふじとうちろう
(2021年12月4日)
コロナの蔓延は今一休みの体。このまま終熄してくれればあり難いと思いつつ、オミクロン株感染者の出現に戦々恐々たる思い。街行く人はみなマスクを離さないが、それでも明らかに人出は多くなった。妹から連絡があって、久しぶりに係累が集まって昼食をともにしようということで集まった。総勢11人、私が最年長。
その席に中学生が一人。私の姪の次男で、2年生だという。この中学生に「弁護士とは何か」を説明してあげてと、声がかかった。弁護士とはいったい何だ。突然の依頼に私自身が戸惑い、上手な説明ができなかった。
この中学生に、学校で憲法のこと学んだ?と聞くと、「3年生になると公民で勉強する」という。そうか。人権も民主主義も、三権分立もまだ頭にない。その中学生に、弁護士とは何かをどう語ったらよいだろうか。
私は、弁護士の「反権力・在野性」を知ってもらいたいと思った。しかし、その前提として、「権力」というもののイメージがなくてはならない。併せて、「法の支配」や裁判制度の説明が必要だ。さらには刑事や民事や行政訴訟の違い、法曹養成制度についてもしやべらなければ。さあ、たいへんだ。うまくしゃべれるはずはない。
今回はうまく行かなかったが、次に備えよう。もし再び、中学生から「弁護士ってなんですか」と聞かれたときの回答の準備をしておこう。たとえば、次のように。
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この社会は大勢の人々が集まってできています。大勢の人々の間には、さまざまな紛争が生じます。どの社会にも紛争を解決するための決めごと(ルール)とそのルールに基づいて紛争を解決する手続が必要です。
この紛争解決のためのルールが「法」です。法がなければ、この社会は力の強い者の横暴がまかりとおるだけの、暗く住みにくい社会になってしまいます。法があればこそ、みんなが安心して暮らせる社会になります。
もちろん、誰が、どのような法をつくるかで、人々の生活は大きく変わってきます。昔は、一握りの権力者が自分たちに都合のよい法をつくりました。社会が進歩するにつれて、国民の代表が法をつくるようになっています。
それでも、もちろん紛争は絶えません。法にもとづいて、その紛争を解決する手続が裁判です。法を実現する手続が裁判であると言うこともできます。
社会が複雑になるにしたがって、法も厖大で複雑なものとなり、裁判に関わる専門家が必要になってきました。これを法律家と言いますが、法律家には3種類あります。裁判官・検察官・弁護士です。
このうち、裁判官と検察官は公務員です。それぞれ、国家から独立して職務を行わなければなりませんが、その給与は国家から支給されます。これに対して、弁護士は国家から独立した立場にあります。国家から給与の支給を受けることはありません。国民一人ひとりの権利を守るために、法を武器として、国家とも闘うことを使命とする職業なのです。
弁護士は、弁護士法という法律で定められた資格で、その使命を「基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること」とされています。国民の基本的人権は、往々にして国家と対立し、国家によって踏みにじられます。弁護士は、相手が国家であろうとも総理大臣であろうとも、一歩も退かずに、法律専門家として、人々の人権を守らねばなりません。
社会には、強い立場の人もいますし、弱い立場の人もいます。法の理想は、弱い立場の人が安心して生きていけるように保障することなのですから、弁護士本来の仕事は、弱い立場の人のために、法を活用することにあります。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.12.3より
http://article9.jp/wordpress/?p=18081
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion11542:211204〕
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