岸田首相よ。核保有国の声ではなく、ヒバクシャたちの声を聞け。
- 2022年 1月 24日
- 評論・紹介・意見
- 核廃絶澤藤統一郎
(2022年1月23日)
核兵器禁止条約は、昨年1月22日に発効した。それから1年である。条約の批准国・地域は現在59。この3月には、オーストリア・ウィーンで第1回締約国会議が開かれる。日本は唯一の「戦争被爆国」として、この条約への姿勢が問われている。当然にこの条約を締結すべきでもあり、少なくも締約国会議にオブザーバー参加をしなければならない。被爆者団体も、原水禁運動団体も、広島・長崎の市民も、国内の平和運動も、一斉に声を上げている。
核禁条約はあらゆる核軍備を違法とする内容である。初めて、核兵器の開発、実験、生産、保有、使用などを全面的に禁じた画期的な内容。国連加盟の6割にあたる122カ国・地域の賛成で2017年7月に採択された。世界の122か国が賛成して採択されたこの条約を日本が批准できなはずはない。いや、日本がこの条約に背を向けることは許されない。締約国以外では、ドイツがオブザーバー参加する方針を表明して話題となっている。日本政府も決断すべきだ。
岸田首相や林外相の言うところは、「(核禁条約は)核兵器のない世界に向けての出口にあたる重要な条約だ」との認識を示しつつ、「世界最大の核兵器国である米国を動かすことを日本としてやらなければならない」「核兵器保有国が1カ国も参加していない。最終的なゴールを目指すには、核を持っている国と持っていない国がしっかりと話をしていくことが重要だ」というだけのことである。核禁条約に加盟できない理由になっていない。
「核禁条約に米国が入っていない。核兵器保有国が1カ国も参加していない。だから日本も参加できない」はまったく理解不能である。日本が締約国になって、国民の核廃絶の大きな世論を背景に、核保有国との協議を続ければよいではないか。それができないとする考えは理解しがたい。
岸田内閣は、核禁条約は敬遠して、核不拡散条約(NPT)大事に執着しているようだが、とうてい納得できない。かつて部分核停条約ができたとき、その平和への一歩前進は、大きく評価された。しかし、部分核停条約からNPTに至る国際条約は、核保有大国の核兵器所持を合法化する側面を持ち続けてきた。それでよいはずはなかろう。
今、日本の政府が、核不拡散条約(NPT)体制擁護に固執して、核超大国の核独占合法化を支援すべきときではない。なすべきことは、《核保有独占を許容する核不拡散条約(NPT)の島》から、《核廃絶の理念に立った核禁条約の島》に、橋を渡して移らねばならない。いつまでも、核保有国と一緒に《不拡散条約(NPT)の島》に留まっていては、この先導役を果たすことはできない。理想を示す先に、自らの位置を置くべきが当然ではないか。
昨日は、各地で、被爆者団体、平和運動体が、「核兵器禁止条約に全世界の参加を」と訴え、日本政府の署名・批准などを求める声明を発表した。「最も被害を知る日本が世界に向けて発信しなければ、核兵器廃絶はできない」と声を上げている。
岸田首相にはこの声が聞こえないのだろうか。このことに関しては聞く耳はなく、聞く力もないというのだろうか。核保有国の声だけに耳を傾けていては、政権もたないことを知らないのだろうか。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.1.23より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=18423
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