自信深めるタリバン暫定政権、最高指導者の会見も近い? 広報責任者がパジュワク通信社に詳細に語る(1)
- 2022年 2月 2日
- 評論・紹介・意見
- アフガニスタンタリバン坂井定雄
アフガニスタンから全米軍が撤退し、武装勢力タリバンが全土をほぼ支配し、首都カブールに暫定政権を樹立(昨年8月15日)してから5カ月が過ぎた。タリバン政権は最高指導者のアミール・アルムミニン以下、アクンド首相、バラダール副首相、ハナフィ副首相、ムジャヒド内相、ムジャヒド国防相、ムッタキ外相、蔵相、正義相、情報相ら政権閣僚リストを発表、内外の報道機関の取材にそれなりに対応してきた。
しかし、2016年以来最高指導者のアルムミニンだけは、安全厳守を理由に、公開の場に姿を現したことがなかった。いま、政権基盤が固まってきている一方、国連と各国の援助に大きく依存しながら再建を進める中、主要国、周辺諸国の駐在代表部も戻ってきたため、最高指導者がいつまでも姿を見せないわけにはいかなくなった。
この現状について、タリバン暫定政権下の現状報道を毎日、しっかり続けている、パジュワク通信社は1月25日、タリバンの広報主任ムジャヒドとの同通信社のアブドル・サイル記者のインタビューを掲載した。全文で英文9ページの膨大なインタビュー。以下にパジュワク通信社によるインタビューの要旨を紹介しようー
タリバンの最高指導者の公式登場のため、安全に最大の努力
(カブール発1月25日)タリバン暫定政権スポークスマンのムジャヒドは「タリバン最高指導者のムラ―・アルムミニンは、全国的な安全が保障されたとき、公的な場に姿を現すだろう」と語った。
パンジュワク通信社の独自のインタビューの中でムジャヒドは、国際社会による現行政権に対する承認の青信号は、すでに示されている、と言った。彼は、ウラマー(イスラム法学者)評議会と国民評議会が、これからの政府の体制について協議するため、開催されるだろうと述べた。
また彼は、辞任したアシュラフ前大統領の最近の発言については「我々はクーデターをやったのではなく、アシュラフは逃げ出し、政治的和解をするための貴重な時間を無駄にしたのだ」と述べた。
ムジャヒドは、政府はすべての情報を解放し、職業的ジャーナリズムに反対しないが、プロパガンダ、フェイクのニュースは阻止しなければならない、主張した。
ムジャヒドはさらに、国旗に関する問題が関係する公的部署で協議されるといった。また、ひげとターバンについては、強制することではなく、説教のテーマだと述べた。
パジュワク通信社記者によるタリバン暫定政権スポークスマンとのインタビュー記事は次のように始まったー
▼パジュワク通信社:イスラム首長国(坂井注:タリバン暫定のアフガニスタン呼称)最高指導者アクンザダ首長はヘラート、カンダハル、ヘルマンド、他の州でお会いしているのに、なぜ彼は、ここにおいでにならないのか?
▽ムジャヒド:アクンザダ首長は、カンダハル、ファラハ、ヘルマンド州に行き、多くの人々に会っている。このような行動を続けるだろう。
▼パジュワク通信社:彼には、身の安全に危険はないのか?
▽ひとつは、われわれは全国的に安全が確立していないこと、われわれには安全のためのすべてを与えられていないことを知らねばならない。敵がいるかも知れないが、その名前を出すことはできない。
▼パジュワク通信社:タリバン政権から、全般的なアムネスティ(免罪令)が出ているのに、なぜそれを無視して、一部の人たちが前政権の人たちを捕まえたり、政府要員を拷問にかけたりするのか?
▽ムジャヒド:我々の免罪令に違反した囚人は現在約2百人いる。その理由の一つは全国的に安全保障が確立していないことだ。われわれが名前を明記できない敵がいるのかもしれない。
▼パジュワク通信社:政府当局者が外国からの援助を横領し、その一部は治安当局に与えられたという報告があるが。
▽ムジャヒド:外国からの援助には二つのタイプがあり、一つはNGOによって提供され、社会の特定の部分にNGO自身が配布し、政府は監視するだけのケースもある。第2のタイプのケ支援は政府の管理下にあり、ICRC,保険省、災害管理局、難民省、殉教者省によって配布されている。それとは別に我々の軍隊に提供する援助がある。しかし、われわれの軍隊は、過去6か月間、給料を受け取っていない。彼らは、必要な食べ物や物品を自分で買うお金をもっていない。
▼パジュワク通信社:ウルズガンとパクチア州の当局者は、州の職員はひげを生やし、ターバンを着用すべきだと述べ、パクチアでは楽器が燃やされた。当局はこの差し迫った状況下、より重要な優先課題に取り組むべき時に、なぜ、そのような問題に関わっているのか?
▽ムジャヒド:わたしは知らないが、それはこの2州だけではなく、すべての州で行われたかもしれない。しかし、それは過去のことで、現在ではない。個人的に楽器を燃やすようなことがあるかもしれないが。(続く)
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