ゼレンスキーが英雄になった
- 2022年 2月 28日
- 評論・紹介・意見
- 藤沢豊
この半月ほどウクライナ情勢のニュースを見ていて、オリンピックが終わったら、間違いなくロシアがウクライナを侵略するだろうと思っていた。
あれだけ兵力を動員してなんの成果もあげずに撤兵したら、強硬姿勢をつらぬいてというのか虚勢をはってきたプーチンの威信にかかわる。官製プロパガンダでも固めきれない国内事情をかんがみれば、侵攻以外に挙げてしまった手のおろしどころがあるとは思えない。
二月二十四日、大方の予想通り侵攻が始まった。世界中に激震が走って、ロシア軍の進軍とウクライナの抵抗に関するニュースがインターネット上に溢れかえっている。ニュースは多いが、腰の引けたというのか気の抜けたビールのようなものもある。戦地キエフに特派員を持っていないマスコミは外信を翻訳してあらかたを伝えるまでしかできない。そんなものに目を通す時間がもったいない。ましてやロシアに配慮しなければならない、あるいはした方がという政府の公式見解なんか、気取った言葉がならんでいるだけで見ちゃいられない。<br>
世界中に情報ネットワークをもった通信社CNNとBBCが本領を発揮してニュースらしいニュースを伝えてきている。CNNにも日本語版があるが、しれている。質量ともにBBCの日本語版ニュースに助けられている。
世界中の信頼のおけるマスコミが似たようなニュースを発信してくるから、いちいち目を通しているわけにもいかない。そこで大まかに掴んだら、巷のエピソードのようなニュースを探すようにしている。公式発表は羽織袴かタキシードを着たようなもので、市井の人々の生の声を伝えて来るには重すぎる。
New York Timesなどの名の知れた新聞の記事は、しばし凡長で読むのに時間ばかりかかってしょうがない。主なニュースをダイジェストとしてまとめくるPolitical Wireを重宝に使っている。今朝(二月二十七日)、何これという記事があった。
「Zelensky Has Become More Than a Man」
https://politicalwire.com/2022/02/26/zelensky-has-become-more-than-a-man/
アメリカから身の安全を優先して避難したほうがという話が来たが、断固としてキエフにとどまってウクライナを守る覚悟だと国民と世界に向けて発信した。
『「私たちはここにいる、独立を守る」 首都からウクライナ大統領が政府幹部と』
https://www.bbc.com/japanese/video-60533686
この発信もあって、Political Wireも含めて世界中のメディアからゼレンスキーを英雄、シンボル、政界平和にとって最も重要な人物というニュースがでてきた。
ウクライナの緊張が高まるまでゼレンスキーは名前は聞いたことがある程度で、あえてどのような人なのかとは思わなかった。
そこにDie Weltの記事(二月二十六日付け) が入ってきた。
「Ukraine’s Volodymyr Zelenskyy: From comedian to national hero」
https://www.dw.com/en/ukraines-volodymyr-zelenskyy-from-comedian-to-national-hero/a-60924507?maca=en-newsletter_en_bulletin-2097-xml-newsletter&r=17278061841318919&lid=2068419&pm_ln=136299
気になるところをまとめると下記になる。
記事の表題にあるように喜劇俳優から大統領になった人で、ウィキペディアによれば、キエフ国立経済大学で法学の学位を取得した後、コメディーの道にはいった。ウィキペディアのurlは下記の通り。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AD%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC
クリミア自治共和国(26, 081平方km)、セヴァストポリ市(864平方km)、ドネツクとルガンスクの一部地域をロシアに占領されたまま、有効な対策を打ち出せないでいたため、支持者からの評価ですら低かった。
ユダヤ人でロシア語を常用語とする家庭で育った。祖父は赤軍の兵士だった。三人の兄弟をホロコーストで失っている。
ここで、特筆すべきことが一つある。さすが喜劇俳優といったら叱られるだろうが、ゼレンスキーの言葉には巷の人々に訴えるものがある。天性のものだけではないだろう。誰にでも分かる言葉で、自分の言葉で話かけている。目についたものを二つあげておく。
he told the Russian troops: “If you attack, you will see our faces, not our backs!”
“Don’t panic! We are strong and ready for anything. We will defeat everyone, because we are Ukraine!”
これで鼓舞されない人はガチガチの帝国ロシアの亡霊を背負った人か、プーチン体制のなかで美味しい利権にありついている人たちだけだろう。
『ウクライナの女性、機関銃持つロシア兵に「何しに来たの」と詰問』
https://www.bbc.com/japanese/video-60533687
長ったらしい能書きなんか聞いちゃいられない。もったいぶった難しい言葉なんか並べたところで、誰も聞きやしない。ましてや官僚が用意したものを読み上げるだけの痴れ者の話しなんか、読んでる本人ですら分かっちゃいないだろう。
ことは政治家だけじゃない。こんなことを書いていたら高専の授業を思い出した。三分の一近くは、メリハリのない、教科書を読んでいるのと変わらない退屈極まりないものだった。
ロシアの侵略と書いてきた。巷のニュースもそう言っている。だけどという二月二十五日のニュースがある。
『「私たちの戦争ではない」、「世界に憎まれてしまう」 戦争に反対するロシア人の声』
https://www.bbc.com/japanese/video-60520150
『「ショックを受けた」 ウクライナ侵攻、ロシア国民の反応を取材』
https://www.bbc.com/japanese/60518841
ロシアのほとんどの人たち、心ある人たちは、私たちロシア人の戦争じゃないと思っているそうだ。まあ、おっしゃることはわかりますけど、あんたんとこの政治的、社会的、あるいは文化的な欠陥から周りが、これ以上はないという迷惑を蒙っているのは事実なんですよねー、と一言いわずにはいられない。
官製報道しか、プロパガンダしかないロシアでニュースが伝える通りだったら、プーチンおいそれとは下がれない。
インターネットでBBC日本語とでも入力して検索すれば、分かり易い日本語の記事がでてくる。余計なお節介だが、一読の価値はあると思う。
2022/2/27
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11798:220228〕
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