【NAJAT声明】紛争当事国ウクライナへの防弾チョッキ供与の撤回を求めます
- 2022年 3月 18日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
【NAJAT声明】紛争当事国ウクライナへの防弾チョッキ供与の撤回を求めます
https://kosugihara.exblog.jp/241394607/
プーチンによるウクライナ侵略は、無差別空爆の度合いが強まり、深刻な戦争
犯罪、ジェノサイド犯罪の様相を呈しています。一刻も早い停戦とロシア軍の
撤退が必要です。
昨日3月16日、ウクライナに供与する自衛隊の防弾チョッキなどを積み込んだ
米軍のC17輸送機が、米軍横田基地を出発しました。自衛隊機を使っての2回の
輸送に続くものです。日米物品役務相互提供協定(ACSA)に基づくもので、第
三国への物資提供は初めて。どさくさに紛れての既成事実化が進んでいます。
遅くなりましたが、NAJATで防弾チョッキ供与の撤回を求める声明をまとめ、
公表しました。明日18日には岸田首相、岸防衛大臣、防衛省宛てにFAXとメー
ルで提出します。
ぜひご一読いただき、多くの方に広めてくださるようにお願いします。
<資料・報道>
防弾チョッキのウクライナへの移転に係る審議について(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220308004/20220308004.html
ウクライナは紛争当事国じゃない? 自衛隊の防弾チョッキ特例で提供
防衛装備移転三原則の歯止めどうなる(3月9日、東京)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/164468
【動画】
「防衛装備移転三原則」運用指針を改定 ウクライナへ防弾チョッキなど提供可能に
(3月8日、日テレNews)
https://www.youtube.com/watch?v=UG39VBQNbyk
ウクライナ、日本に対戦車砲要請 法的根拠なく提供見送り(3月8日、産経)
https://www.sankei.com/article/20220308-RONJ4C2SVVKXZJPB7SXHUYTKNY/
装備品提供、ウクライナ支援に制約 法制度に課題(3月8日、産経)
https://www.sankei.com/article/20220308-T4IJKX3LBVJKZAI34P42YIAMGI/
—————————-
【声明】
紛争当事国ウクライナへの防弾チョッキ供与の撤回を求めます
2月24日、ロシア・プーチン政権は隣国ウクライナへの軍事侵略を開始した。
既に20日間が経過し、国際人道法に違反する残虐な戦争犯罪が繰り返されてい
る。どのような背景や理由があろうと、プーチン政権によるウクライナ侵略は
許されない。
こうした中、岸田政権は、3月4日午後に国家安全保障会議(NSC)を開き、
自衛隊の防弾チョッキなどを紛争当事国ウクライナに供与することを決定した。
この動きが報じられたのは4日の朝であり、異常な速さだった。国会や主権者
は完全に無視された。
防弾チョッキは「武器」に該当する。読売新聞ですら、「武力攻撃を受けて
いる国への装備品の供与は異例だ」と書いた。「人道」を前面に押し立て、
「戦時」の空気につけ込んで、紛争当事国への武器輸出に強引に道を開く”火
事場泥棒”の手口に他ならない。
この決定について、防衛省関係者は「武器の供与をめぐる歴史を考えれば、
日本の防衛政策の大きな転換点になる」と語ったという。4日午前に開かれた
自民党の会合では、防弾チョッキなどの供与に賛成する意見が相次ぎ、「防弾
チョッキ以上のものでも、ウクライナが必要とするものは支援を検討すべき」
との声が出た。どさくさに紛れて、武器輸出を制限してきた歯止めを全廃しよ
うとするものであり、まさしく”ショック・ドクトリン”そのものだ。
今回の武器供与が突破口となり、いずれは例えばウクライナがリクエストし
ていたという、対戦車砲や地対空ミサイル、小銃の弾薬などの殺傷武器へとエ
スカレートしていく恐れがある。
政府は3月8日になって、再びNSCを持ち回りで開き、特例的に「防衛装備移
転三原則」の運用指針の改定を決め、防弾チョッキ等の供与を改めて確認した。
その夜、武器の一部を載せた自衛隊機が愛知県小牧基地を出発した。従来の指
針ではウクライナへの供与が可能か不明確だったとして、運用指針に定める
「防衛装備の海外移転を認め得る案件」に「国際法違反の侵略を受けているウ
クライナに対して自衛隊法第116条の3の規定に基づき防衛大臣が譲渡する装備
品等に含まれる防衛装備の海外移転」を追加した。今回に限って、非殺傷用の
武器に限り認めるのだという。
つまり、4日のNSCでの供与の決定は運用指針違反だったと認めたに等しい。
これは法治国家ではない。自らが決めたルールを破っておいて、後からルール
を変更するという手法がまかり通れば、毎回同様のやり方で武器供与が可能と
なる。要するに何でもありの脱法行為だ。私たちは運用指針の恣意的な改定の
撤回を求める。
さらに政府は、侵略を受けて交戦しているウクライナが、武器輸出できない
「紛争当事国」には当たらないとする詭弁を弄している。防衛装備移転三原則
が「紛争当事国」の定義を、「武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持
し又は回復するため、国際連合安全保障理事会がとっている措置の対象国」と
極めて狭く限定し、該当するのは湾岸戦争時のイラクと朝鮮戦争時の朝鮮民主
主義人民共和国としているからだ。つまり、1991年の湾岸戦争以降、世界に紛
争当事国は存在していないことになる。
ウクライナが紛争当事国だからこそ、武器である防弾チョッキを供与しよう
と企てたのではないか。現実離れした定義に基づく武器供与はそもそも論外だ。
私たちが驚いたのは、翌日に撤回されたとはいえ、日本共産党の政策責任者
が3月4日の会見で「人道支援としてできることは全てやるべきだ。今回、私が
この場で反対と表明するようなことは考えていない」と語ったことだ。野党第
一党である立憲民主党もあっさりと武器の供与を容認した。「戦時」の空気に
呑まれて、原則を譲りわたしてはならない。
2014年4月1日に当時の安倍政権が閣議決定のみで撤廃した武器輸出三原則の
肝は、「紛争を助長しない」という憲法9条を具現化した理念だった。紛争当
事者に武器を輸出することの危うさが自覚されていた。日本は憲法9条に基づ
き、非軍事の民生支援に徹し、停戦に向けた仲介や難民支援などに尽力すべき
だ。
私たちは、紛争当事国ウクライナへの武器供与をただちに中止するよう求め
る。加えて、インドネシアへの殺傷武器である三菱重工製護衛艦の輸出や、紛
争当事国UAE(アラブ首長国連邦)への川崎重工製軍用輸送機C2の輸出も断念
するよう求める。私たちはまた、紛争に巣食い、紛争を焚きつける軍産複合体
を許さない。こうした時だからこそ、武器輸出三原則の復活と強化を強く要求
する。
2022年3月17日 武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
—————————-
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
<連絡先>
TEL 090-6185-4407(杉原)
メール anti.arms.export@gmail.com
ツイッター https://twitter.com/AntiArmsNAJAT/
Facebookページ https://www.facebook.com/AntiArmsNAJAT/
〔opinion11858:220318〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。