SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】474 国連安保理でデミストラが西サハラ報告
- 2022年 4月 24日
- 評論・紹介・意見
- サハラ国連平田伊都子西サハラ
2022年4月の国連安保理議長国はイギリスです。 イギリス国連大使が発表した日程表に、4月20日の国連安保理で西サハラ国連事務総長個人特使スタファン・デ・ミストラとMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)代表アレキサンダー・イバンコの報告が記載されているのを知ったシディ・オマル西サハラ難民政府国連代表は、大慌てで国連ロビー活動を開始しました。
とは言え、西サハラはAU加盟国であっても国連加盟国ではないし、現在の安保理メンバーに友だち国はいないし、、国連ビル内をウロウロしていたら、モロッコ国連代表部が保安係に<アル事ナイ事>通報するだろうし、、
それでも何とか安保理にアピールしないと、忘れ去られてしまうと、オマル代表は努力したのです、、
国連安保理西サハラ協議の前日、オマル西サハラ難民政府国連代表(左)は
デ・ミストラ国連事務総長個人特使(右)に会い、西サハラ人民の強い独立願望を伝えた
① 西サハラ紛争協議を目前に、国連安保理へ西サハラ必死の訴え:
4月13日、オマル西サハラ難民政府国連代表-兼-MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)代表は、「西サハラ紛争の解決策は、国連憲章と国際法が保障している西サハラ人民の民族自決権と独立を可能にするものでなければならない」と、ポリサリオ西サハラ難民政府の主張を強調した。
4月13日、国連安保理4月議長国イギリスが仕切る<女性、平和、安全―紛争下での性的暴行>の安保理公開討論でアルジェリア国連代表が、「モロッコ占領当局はモロッコ占領地・西サハラの女性人権活動家たちに、酷い虐待を加え続けている」と、訴えた。さらにアルジェリア国連代表は、マリ―・ラウロ国連特別人権擁護調査会によるアミナト・ハイダルやスルタナ・ハヤや数人の女性被害者を調査したレポートを紹介した。
同じ国連安保理討論で石兼公博・日本国連大使は「我が国は,紛争関連の性暴力の問題に世界的に取り組むため,国連及びその他のパートナーと協働することに引き続き全力で取り組んでまいります」と述べた。
4月16日、<西サハラ独立を支援するニューヨーク・グループ>が、「国連安保理は、その配下にあるMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)を本来の職務に就かせるべきだ」との趣旨で、安保理に手紙を送った。308の団体と個人を含む同グループは、最後のアフリカ植民地。西サハラ紛争を解決するには、1991年に国連自らが提案した<国連西サハラ人民投票>を早急に実現することだと主張する。さらに同グループは、「MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)を、安保理が命じた<人民投票監視団>に就労させることは、国連憲章24章2条に基づくもので、人権と法を謳った6章と7章にも整合する。平等な権利と民族自結権は、当該地域に与えられて然るべきだ」と、国連安保理に物申している。
② 西サハラ難民政府大統領は国連事務総長に手紙を出した:
4月18日、西サハラ難民政府大統領‐兼‐ポリサリオ戦線事務総長ブラヒム・ガリは、国連事務総長アントニオ・グテーレスに宛てて、モロッコ占領地・西サハラの被占領民、特に人権活動家たちに対するモロッコ占領当局の残忍で非人道的な蛮行を非難する手紙を送った。その中でガリ大統領は、「ポリサリオ戦線は、西サハラの脱植民地化を目指す、平和で正当で恒久的な解決策を唱えてきた。一方のモロッコ占領当局は、何のお咎めもなく凶悪で残忍な虐待を西サハラ被占領民に加え続けている。こんな理不尽な占領政策をモロッコが続けるなかで、平和交渉が可能だと思えない」と、強くモロッコの西サハラ占領政策を非難した。ウクライナ戦禍の資金集めで忙しい国連事務総長が、ガリの手紙に目を通したかどうか?疑問だ。
同日の4月18日、ウクライナ戦争の悪役プーチン・ロシア大統領が、アルジェリア大統領テブンに電話をかけた。APS(アルジェリア国営通信)が、「両大統領は、ロシア・アルジェリア国交60周年に当たり、両国関係の進展を約束した。ウクライナに関して、国連憲章と国際法に基づく政治解決が重要だと意見の一致を見た。パレスチナに関して、4月15日に起こったアルアクサ・モスクでのイスラエル兵による襲撃は、国連安保理で非難されるべきだ」と、報じた。
国連安保理西サハラ協議の前日、オマル西サハラ国連代表はデ・ミストラ国連特使に会い、独立と自由を求める西サハラ人民の強い熱意を再度、伝えた。
4月19日、国連事務総長がゼレンスキー・ウクライナ大統領とプーチン・ロシア大統領に、「私を首都に呼んでください」を夫々の国連大使に招待催促の手紙を手渡した。 4月20日の国連定例記者会見記者席では「何を今更」と、冷ややかだった。「ウクライナ戦争直前の北京オリンピック開催式出席を聞かされた時、我々は戦争勃発を止めるのが先だと、質したが、、?」と、ステファノ記者が質問した。「ボスは開催式でプーチンと会うつもりだったんだが、、」と、報道官は失敗談を語った。両大統領への催促状は、国連ビル内を走り回る郵便ボーイが運んだのだろうか? 切手代もかからないし、、今回の国連総長オフィスは<グッド・オフィス>の名に恥じることなく迅速にオフィスワークを片づけた。
そして、4月22日、ニコニコ顔の報道補佐官が、「総長は4月25日にモスクワでラブロフ外相の昼食招待を受け、プーチン大統領に会う」と、報告した。「クレムリンは26日だと言ってるけど?」との反論に、「アッ!間違いです。ボスは4月26日にプーチンに会います」と、補佐官は訂正した。
③ パレスチナ国連代表が国連安保理でイスラエル残虐行為を訴える:
4月19日、国連安保理<パレスチナのアルアクサ・モスクに関する公開討論>が終わった後、会議場前でのステークアウト(待ち伏せ会見)で、リヤド・マンスール・パレスチナ国連代表がマイクの前に立った。代表は、「ショコラン(ありがとうのアラビア語)、国連安保理でアルアクサ・モスク襲撃事件を取りあげてくれたEAU。中国、ノルウェー、アイルランド、フランスのメンバー国に感謝する」と、謝意で口を切った。「1994年にヘブロンのアブラヒムモスクで礼拝中のパレスチナ人がイスラエル入植者の銃撃で襲われ29人が虐殺、150人以上が重傷という大虐殺の時も、我々は安保理にイスラエル非難声明を要求したが、アメリカの拒否権で葬られてしまった。今回もアメリカの拒否権が我々の要求を拒否するのだろうけど、我々は国連に訴え続ける」と代表は結んだ。
さて、4月20日午前、西サハラ紛争が国連安保理で取り上げられた。パレスチナ国連代表のように西サハラ国連代表も、国連安保理会議場前でステークアウト(待ち伏せ会見)をやるのかと期待していたが、やらない。国連定例記者会見でステファン報道官が、「本日午前、国連安保理でMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)に関して非公開協議が行われた。スタファン・デ・ミストラ西サハラ国連事務総長個人特使とアレキサンダー・イバンカMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)代表-兼-事務総長特別代理人の二人が、夫々、ビデオで報告をした」と、短く語った。記者たちは興味を示さなかった。MAP(モロッコ国営通信)は「国連安保理では、質問なども出ず速やかに静かにモロッコよりで、スペインのモロッコ支持を称賛して終わった」と、自己判断で解釈して報道した。
4月21日、ステファン国連報道官が、「西サハラ非公開協議でスペインの方向転換に関して国連特使が称賛したかのような記事が出回っているが、デミストラを始めとするあらゆる西サハラ情報は、この報道室から発信されるものでない場合、我々は責任を取らない。スペインは我々とデミストラに、今まで同様、国連安保理決議に則って、双方が納得のいく解決を目指す<国連と国連特使>を支持すると、明言している」と、言及した。
パレスチナは国連オブザーバーの地位があり、曲がりなりにもアラブ諸国の応援があり、国連安保理でアピールすることができます。 一方の西サハラは、オブザーバーでもなければ、首長と王が仕切るアラブ諸国はなかなか味方をしてくれません。。
何とか知恵を出さないと、国連憲章と国連決議に見守られながら、西サハラはあの世行きになりかねません。 パレスチナに国連オブザーブ権を斡旋したアルジェリアの外交力に期待しております。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2022年4月24日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11975:220424〕
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