本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(356)
- 2022年 4月 29日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
2022年のロシア崩壊
「1991年のソ連崩壊」に続いて、「2022年のロシア崩壊」いう可能性が高まってきたものと感じているが、この間の「約30年」を振り返ると、やはり、「世界的な金融経済化」が指摘できるようである。つまり、「1991年のソ連崩壊」については、当時、「資本主義に対する共産主義や社会主義の敗北」と理解され、その後、「ロシアや中国なども、急速に、資本主義市場に参入してきた状況」だったのである。
そして、結果としては、「人類史上、未曽有の規模でのマネー大膨張」、すなわち、「今までとは桁違いの規模で、しかも、オフバランスで、デリバティブの残高が急増した展開」となったのである。つまり、「米国」を中心にして、「デリバティブという金融商品」と「デジタル通貨という貨幣」が大量に創りだされたものの、最近では、「異常気象問題」や「金融システムの崩壊懸念」などのように、「マネーの大膨張がもたらした、さまざまな歪みが、世界全体を襲い始めていた状況」だったことも見て取れるのである。
また、過去30年間に資金力や軍事力を蓄積してきた「中国」や「ロシア」については、「1991年のソ連崩壊」に関して、さまざまな研究を行いながら、「金(ゴールド)の保有」に注力してきたことも見て取れるのである。つまり、「金本位制への復帰」を目論みながら、「欧米諸国の金融混乱」を待っていた状況のようにも感じられたが、実際には、ご存じのとおりに、「プーチン大統領の自爆テロ」とも言える「ウクライナへの軍事侵攻」という暴挙に訴えたという結果となったのである。
そして、この理由としては、「ジョージアやチェチェンなどにおける軍事的な成功体験」、すなわち「プーチン大統領が、過去20年間、戦争に負けたことがない状況」が指摘できるものと思われるが、実際には、「あまりにも時代錯誤的な行動」だったものと考えられるのである。つまり、「軍事力による他国への侵攻」に怯えた「欧米諸国」が、こぞって、「ロシアへの経済制裁」を実行したわけだが、このことは、「プーチン大統領にとって、想定外の出来事」だったようにも感じられるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「プーチン大統領抜きのロシアは、今後、どのような状況になるのか?」ということだけではなく、「欧米諸国の金融システムが、今後、どのような影響を受けるのか?」を考えることである。具体的には、「現在の日本が、1991年のソ連と、極めて似た状態にあるのではないか?」、そして、「国債価格の暴落とともに、ハイパーインフレが発生するのではないか?」ということである。(2022.3.26)
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信用本位制の崩壊
現在の「世界的な金利上昇」や「為替市場の混乱状態」については、典型的な「金融システムの崩壊」を表しているものと思われるが、実際には、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制」という、「全く新たな通貨制度」が崩壊を始めている状況のことである。つまり、「5000年ほど前に、人類が発明したマネー(お金)」に関して、「1971年」までは、「金(ゴールド)という実物資産が、真のお金(オカネ)である」という理解がなされていたが、50年ほど前に起こったことは、「資金繰りに窮した米国のニクソン大統領が、一時的な金と通貨との交換を停止した」という状況だったのである。
そして、その後は、「糸の切れた凧」のような状態となり、「マネーの大膨張」が始まったわけだが、実際には、「デリバティブ」という「金融商品」と、「デジタル」という「単なる数字」へと形を変えた「現代の通貨」が、天文学的な規模にまで膨らんだのである。また、過去20年間余りの「世界的な超低金利状態」については、「大膨張したデジタル通貨が、大量の国債買い付けに使われ、最後の段階では、マイナス金利まで発生した」という状況だったことも見て取れるのである。
より詳しく申し上げると、当時は、「一時的な金本位制の停止」と言われたものの、実際には、「経済学者のケインズ」が指摘するとおりに、「新たな通貨制度が約50年間も継続した」という展開となったのである。そして、この時に、きわめて大きな役割を果たしたのが、世界的な「コンピューターネットワーク」の誕生であり、実際には、「デジタル通貨が、ほぼ瞬間的に、世界全体を駆け巡ることが可能な状態」となったことである。
つまり、結果としては、「人類史上最大のバブル」が産み出されたわけだが、「どのようなバブルも、必ず、破裂する運命にある」ということが「歴史の教訓」であり、今回も、例外ではなかったことが実証され始めているのである。しかも、「2019年9月17日」に発生した「米国の短期金利上昇」が「金融システムに開いた蟻の一穴」であり、その後は、「コロナショックによる実体経済のマヒ状態」を経て、現在では、「大量に存在するデジタル通貨」が、徐々に、「紙幣」に形を変えて、「実物資産」へ流れ始めているのである。
そして、このことは、「1991年のソ連」や「1923年のドイツ」などで発生した現象と似たような状況でもあるが、今回の問題点は、いまだに、「管理通貨制度」などという言葉が使われ、「過去50年間に、どのようなことが起こったのか?」が、ほとんど理解されていないことにあるものと感じている。(2022.3.30)
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グローバリズムの終焉
最近、頻繁に使われている「グローバリズムの終焉」という言葉には、大きな違和感を覚えているが、その理由としては、「グローバリズムの真相」、すなわち、「グローバリズムとは、いったい、何だったのか?」に対する認識不足が指摘できるからである。つまり、私自身は、「世界全体で、共通した商品や通貨が使用される状況」を「グローバリズムの本質」と理解しており、実際には、「コンピューターネットワークとデジタル通貨の発展により、世界中で、ほぼ瞬間的に、金融商品が取引される状況」のことである。
別の言葉では、「お金が神様となった状況」、すなわち、「大量のデジタル通貨さえ持っていれば、人生は安泰だと錯覚した状況」のことでもあるが、今回の「ロシアによるウクライナへの侵攻」については、「通貨の根本である信用」が、完全に失われる効果が存在したものと考えている。つまり、「実体経済の成長」と、その後の「マネーの大膨張」によって築かれた「仮想現実的な現代社会」に関して、現在では、急速に、信用破壊が発生している状況とも想定されるのである。
より詳しく申し上げると、「西暦1971年から始まった信用本位制という通貨制度」であり、また、「西暦1800年頃から始まった資本主義」や「西暦1600年前後に発生した『時は金なり』いう思想」、そして、「西暦1200年前後から始まった、物質文明を追求する西洋の時代」の全てが、現在、音を立てて、瓦解を始めている状況のようにも感じられるのである。
つまり、「グローバリズムの完成は、西洋の物質文明の終焉を意味しているのではないか?」ということであり、現在、発生している現象についても、「信用本位制の崩壊」、すなわち、「大インフレの発生」とも思われるのである。ただし、今回の不思議な点は、「1971年のニクソンショックに向かって、時代が逆行しているのではないか?」と感じられることである。別の言葉では、「信用本位制の発展に伴って発生した現象」である「オイルショック」や「日本のバブル発生」、そして、「ソ連の崩壊」などの事件に関して、現在、「時間的な巻き戻しの展開」となっているようにも思われるのである。
具体的には、現在、「逆ニクソンショック」とも言える「金本位制や商品バスケット制への回帰」に向かって、世界情勢が、急速に進展している可能性のことでもあるが、この点に関して、今後、最も注目すべき展開は、やはり、いまだに、6京円以上もの規模を保持する「デリバティブのバブル」が崩壊することだと考えている。(2022.4.2)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11985:220429〕
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