捏造された自白 晴れない冤罪 ~三鷹事件を知っていますか~
- 2022年 5月 10日
- 評論・紹介・意見
- 三鷹事件冤罪小原 紘
韓国通信NO696
1949年7月15日、東京の中央線三鷹駅で国鉄の電車が突然暴走、巻き添えになった市民9名が死亡、20余名が重軽傷を負った。事故発生を待ち受けたように、翌日、吉田首相(当時)が共産党、国鉄労働組合による「しわざ」と発表した。無人の電車を誰かが動かした。
容疑者として起訴された10人に対する最高裁判決は竹内景助被告に死刑、残り9名を無罪とした(1955年)。政府と米軍総司令部(GHQ)の関与は濃厚で、「世紀の冤罪事件」とも言われ、70年以上経った今も真相は闇に閉ざされたままである。
敗戦から4年。高まる民主化運動に危機感を抱いた政府が左翼勢力との対決姿勢を強めていた時期の事件だった。世界は冷戦時代を迎えていた。米ソの対立激化、中華人民共和国成立、東西ドイツの分断など東西対立が本格化、韓国では済州島4.3蜂起、南北朝鮮独立、朝鮮戦争勃発などアジアを含め世界が激動の時代を迎えた時期だった。三鷹事件は国鉄総裁の謎の轢死事件(下山事件)、列車転覆事件(松川事件)、レッド・パージ(共産党員の追放)が布告されるなど、騒然とした国内外の情勢と無縁ではない。
死刑判決を受けた竹内景助は自白を撤回、無罪を訴え続けたが、再審を目前にした1967年、45才で獄死した。無念の思いを引き継いだ遺族の再審請求にもかかわらず、道は閉ざされたまま今日に至っている。
再審が開始されれば、自白の全貌と国とアメリカの関与など戦後の「不都合な真実」が白日のもとに晒されるはずだった。
詩人の石川逸子さんの最新作『三鷹事件 竹内景助の詩と無念』は、竹内景助が獄中で書き遺した詩と絵を紹介しながら、これまでにない新しい角度から事件と冤罪に取り組んだ。
生い立ちから始まり、妻子への細やかな愛情、こみ上げる怒りと悔しさ、悲しさが伝わるヒューマンドキュメントが心を打つ。
詩人と歴史研究者の二足のわらじから生まれた好著といえる。「赤木ファイル」をもとに森友学園疑惑の真相に迫る赤木雅子さんに立ちはだかる国家の厚い壁は三鷹事件の闇の深さを思わせる。壁を乗り越え、閉ざされた闇を照らさなければ日本の将来は危うい。
「妻を思い、五人の子どもたちを思うこの詩は、殊に哀切で、読むものの胸に迫ってくる」と著者石川逸子は竹内さんの詩『雨の降る日』を紹介している。韓国の読者にも本書の一読をすすめたいと思い、詩の冒頭部分だけだが翻訳にチャレンジしてみた。
雨の降る日は
貧しさに傾いた家の軒下から
雨に湿った薪をもちこんで
家の隅っこのおへっついで
乏しい夕餉の支度をする
妻の苦労を思う
俺が家にいるときは
薪割は楽しい運動の一つだった
飯炊きも汁の実を刻むことも
俺は 楽しく分け合ったが
今ではお前は弱い腕で
どんなにして薪を割っていることだろう
鉈の柄が手に痛くひびいて
辛い生活を斗っているだろう
「비 내리는 날 」
비 내리는 날에
가난에 기운 집의 처마부터
비에 젖은 장작을 옮겨
부엌 구석에 있는 아구이에
모자란 저녁식사 준비를 하는
아내의 고생을 생각한다
내가 집에 있었을때
장작 팸은 즐거운 운동이었다
밥 지은것도 건더기 썰기도
즐겨 나눠 했다가
지금은 넌 연약한 팔로
어떻게 장작을 패고 있는지요
손도끼 자루가 손에 아프고
괴로운 생활과 싸우고 있으리라
『三鷹事件 無実の死刑囚竹内景助の詩と無念』梨の木舎 2022/3/10定価1200円+税
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〔opinion12017:220510〕
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