本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(363)
- 2022年 6月 17日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
中国の不良債権問題
「中国の不動産バブル崩壊と不良債権問題」については、「30年ほど前の日本」と同じようなパターンを辿っているために、現時点で必要なことは、「1990年代の日本で、どのようなことが起こったのか?」を振り返りながら、「今後の中国に応用する態度」だと考えている。つまり、「不動産バブルの実態」を検証しながら、「不良債権が、どのように発生し、また、どのように移動していったのか?」を理解することだが、この時の注意点は、やはり、「時価総額の落とし穴」だと感じている。
具体的には、「浮動玉」と「実際に取引された金額」を区別することだが、「1980年代の日本」で起こったことは、「ピーク時に約2500兆円にまで急増した日本の土地の時価総額」に関して、「実際に取引された部分が、全体の2%から3%にすぎなかった」という状況だったのである。つまり、「一部の物件が取引され、価格が急騰したことにより、全体の価格が急騰したと錯覚された状況」が発生したわけだが、この点については、現在の「DX銘柄のバブル」においても、似たような現象が発生しているものと感じている。
また、その後の展開としては、「時価総額の1割程度が不良債権化した」という状況だったが、この点に関する注意事項は、「不良債権が、金融システムの流れに沿って移行を始めた事実」である。つまり、最初に、「民間企業や個人」で発生した不良債権が、その後、「民間金融機関」に移行し、その後、「国家や中央銀行によって肩代わりされた」という状況のことである。
別の言葉では、「当時の不良債権は、いまだに消滅しておらず、国家や中央銀行の内部で増え続けている状態」とも言えるわけだが、現在では、この点を問題視する人が不在の状態となっているのである。つまり、「デリバティブの大膨張により、ほとんど全てが隠された状況」とも言えるが、今後は、「金利の上昇とともに、すべてが明らかになる可能性」も指摘できるのである。
そのために、今後の「中国の不良債権問題」については、「今後、どれほどの不良債権が発生し、また、どれほどのスピードで、金融機関や国家などに移行していくのか?」を注視すべきだと考えている。ただし、この時の注意点としては、「共産党による政治体制を維持しようとする人々が、どれほど正確な数字を発表するのか?」ということであり、また、「ロシアのプーチン政権」に対する恐怖心が、「今後、どのような形で、『中国の習近平政権』に影響を及ぼすのか?」ということだと感じている。(2022.5.16)
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バブル相場における投資家の意識と行動
「バブルの存在は、バブルが弾けた時に、初めて気付かれる」ということが、46年間、金融市場に携わった私自身の素直な感想でもあるが、この点については、「投資家の意識と行動」が、大きな役割を果たしているものと感じている。つまり、今までに、さまざまな「バブル相場」を経験してきたが、現在の「DXバブル相場の崩壊」を見ていると、まさに、過去のパターンを踏襲しているものと思われるのである。
具体的には、「全体の中で、どれだけの人が、投資に参加しているのか?」ということであり、実際には、「変化に敏感な初期の10%」が「バブル相場の発生」にかかわるものと想定されるのである。そして、その後、「全体の50%が、投資に興味を持ち始め、実際の行動を始めた時」に、「バブルの自己組織化」とでも呼ぶべき状況、すなわち、「残りの人々が、急速に、バブル相場に参戦する展開」が始まるものと考えられるのである。
ただし、今回の「金融バブル」において、最も難しかった点は、「デリバティブのバブル」に関して、「ほとんどの人が、実情を認識しなかった事実」であり、その結果として、「多くの人々が、自分が知らないうちに、バブル相場に参戦していた状況」だと感じている。つまり、「2010年前後」が「デリバティブバブルのピーク時」だったものと想定しているが、実際には、「金融のブラックホール」という「仮想現実の世界」で、「デジタル通貨が狂喜乱舞していた状況」のことである。
しかし、現在では、「ダムの崩壊による大量の放水」のような状況、すなわち、「金融界のホーキング放射」による「実体経済への資金移動」により、「インフレ率と金利が、世界的に急騰を始めている状態」となっているのである。別の言葉では、「デリバティブバブルの完全崩壊」を控えて、世界の資金が、徐々に、「マネー経済」から「実体経済」への移転を始めている状況とも言えるのである。
そのために、これから予想される展開としては、「1923年のドイツ」などと同様に、「実物資産価格の急激な上昇」だと考えているが、現時点における「投資顔の意識と行動」に関しては、いまだに、「全体の10%程度が、実際の行動を始めている状態ではないか?」とも感じられるのである。つまり、これからが、本格的な大インフレの始まりとも思われるが、この時の注意点は、今回の「DXバブル」と同様に、「全体の90%程度の人々の意識が凝り固まり、かつ、実際の投資行動を実施する時期」を待ちながら、「わらしべ長者」の童話のとおりに、「売られすぎた資産」に交換することだと感じている。(2022.5.17)
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サイバー空間のカオス
最近、「サイバー空間のカオス(混迷)」という表現が使われ始めたが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、現時点では、「コンピューターウイルスによる混乱」に、この言葉が使われているが、実際には、「マネー経済」で発生している「風船の破裂」のメカニズム、すなわち、「膨らんだ風船の内部と外部で圧力差が生じ、結果として、内部崩壊が発生し、破裂により、一挙に、内外の圧力差が解消される状況」が当てはまるものと思われるのである。
より具体的には、「デリバティブのバブルとデジタル通貨の大量創造」により生み出された「現代のサイバー空間」、あるいは、「金融界のブラックホール」に関して、今まで、「超低金利状態の蓋」により、崩壊を免れることができた状況だったのである。別の言葉では、「膨張を止めた風船の内部で、分裂や崩壊が発生していたような状況」でもあったが、現在では、「ロシアのウクライナ侵攻」などをキッカケとして、一挙に破裂を始めた段階とも考えられるのである。
そのために、今後の展開としては、「数か月という期間で、マネー経済と実体経済の圧力差が解消される状況」、すなわち、「金利やインフレ率の急騰により、マネー経済と実体経済の規模が同じになる状況」が想定されるのである。そして、この点については、「1923年のドイツ」が参考になり、実際のところ、「100年違いで、似たような展開が世界全体で発生している状況」とも思われるのである。
より具体的には、現在の「世界的なインフレ」が、「1922年のドイツ」と同様の状況であり、今後は、「一年以内にハイパーインフレに移行する可能性」も想定されるのである。つまり、「デリバティブのバブル崩壊」により「金融界の白血病」が発生し、結果として、「デジタル通貨が使用不能になる可能性」のことであり、「このような状況下では、未曽有の規模での大混乱が発生する可能性」も考えられるのである。
そのために、この点には、現在、最大限の注意を払っている状況でもあるが、一方では、「複雑性の理論」や「ライプニッツの予定調和説」などが指摘するとおりに、「目に見えない大きな力」が働いている可能性も想定されるのである。つまり、「村上和夫氏」が指摘する「サムシンググレート」などの力が働く可能性のことでもあるが、この点については、将来的に、「世界の絶えざる進化と創造のメカニズム」が解明された時に、はっきり見えてくるものと考えている。(2022.5.18)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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