統一教会はなぜ名称を変更したのか。安倍政権下、下村博文はなにゆえ申請を受理し名称変更を認証したのか。
- 2022年 8月 11日
- 評論・紹介・意見
- 安倍政権澤藤統一郎
(2022年8月10日)
同期の弁護士から興味深い書類(PDF)を送信してもらった。メールは便利だ。そして役に立つ。
文科大臣下村博文(当時)による2015年8月26日付「宗教法人世界基督教統一神霊協会」の規則変更認証に関わる決裁文書と添付書類の写。総枚数26ページの相当のボリューム。こういうものがあると、俄然血が騒ぐ。その表紙が以下のとおり。
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衆議院議員 宮本徹議員事務所 御中
平素より文化行政への多大なる御支援を賜り、深く御礼申し上げます。
御依頼のありました以下の資料を提出いたしますので、御査収ください。
〈提出資料〉
2015年8月に、「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」への名称変更を認証した決裁文書
なお、御依頼の「新管理簿:世界平和統―家庭連合、作成・取得年度:2015年、文化庁、大分類:宗教法人、中分類:認証・届出(平成27年度)」の文書ファイルは保存期間中であり、現に保有しているため、文書管理廃棄簿は作成しておりません。
また、応接録につきましては、現在確認中であるため、おって御連絡させていただければと存じます。(以下略)
文化庁宗務長長
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○法人について
法 人 名 :宗教法人「世界基督教統一神霊協会」(キリスト教系・単立)
主たる事務所所在地:東京都渋谷区松濤(以下略)
代表役員:徳野英治
設立認証:昭和39年7月15日
○規則変更理由
黒塗り(マスキング)
○主な変更内容
宗教法人の名称の変更。
○参照条文:宗教法人法(昭和26年法律第126号)(抄)
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本年7月26日に文化庁宗務課長から日本共産党宮本徹議員に開示された「決裁文書」と添付資料。今、世の関心を集めている統一教会の名称変更認証手続にについてのもの。おそらくは、8月5日の野党合同ヒアリングでの前川喜平に対する質疑の準備として入手したものだろう。
8月6日付赤旗報道での前川発言は以下のとおり。
「私は、文部科学大臣だった下村博文さんの意思が働いたことは100%間違いないと思っているが、誰が圧力をかけたのかということは分からない」と述べました。「統一協会の名称変更の手続きについての(決裁文書に関連する)議事録や応接録は残っているだろうと思う」「(名称変更について)大臣のところまで説明したら、記録は普通残っている。廃棄しない限り、存在していたと思う」
また、認証申請を受理後、名称変更を断ることはできるのかと問われて、前川氏は「断れる」と答えました。
霊感商法で悪名をはせた統一教会は、前歴隠しに宗教法人名の変更をはかった。多くの人がそう思い、私もそう確信している。正式名称の変更は、「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」へ、というもの。変更前の「世界基督教統一神霊協会」の名称の中に、「基督教」があり「神霊」がある。だれが聞いても、これは宗教団体の名前である。しかし、変更後の「世界平和統一家庭連合」には、宗教色を感じさせる用語が一切ない。ことさらに、宗教団体ではないというイメージを狙っての改称と考えるよりほかはない。安倍晋三流の言葉づかいでは、印象操作を狙っての名称変更の申請だったと考えられて当然なのだ。
しかし、この名称変更の実現は容易ではなかった。行政現場での抵抗に遭遇したからである。まだ安倍晋三政権ができる以前、官僚が健全だった時代のこと。忖度という政治文化は育っていない。悪名あまりにも高い統一教会の名称変更申請である。問題がないはずはない。霊感商法の悪名の高まりの対抗策として、前歴隠しを企んだのだろうと考えて理の当然。
1997年、旧統一教会側から名称変更の相談が寄せられた際、担当の文化庁宗務課長だったのが前川喜平。これも神のお導きだったのかも知れない。前川は「宗務課の中で議論した結果、実態が変わっていないのに名前だけ変えることはできないとして、認証できないと伝え、『申請は出さないでください』という対応をした。相手も納得していたと記憶している」と述べている。これは、行政指導の手法。統一教会側もこれを受け容れた。
だが、安倍政権の時代に事態は変わる。18年後の2015年6月に、教会側は名称変更申請の手続をし、行政はこれを受理した。当時、前川喜平は文部科学審議官、大臣、次官の次に位置する、省内ナンバー3という立場。当時の宗務課長から意見を聞かれて、認証すべきでないという考えを伝えた。にもかかわらず、下村博文は名称変更の認証をした。下村博文と言えば、安倍の側近として知られる、同じ穴の右翼政治家。前川がこの経緯を「『認証できないから申請を受理しない』という方針を一転し、受理して認証したので、前例を踏襲する役所の仕事からすると、何らか外部からの力が働いたとしか考えられない」「下村博文の意思が働いたことは100%間違いない」と言うことには説得力がある。
宗教法人の名称の変更は、宗教法人法28条1項の「規則」(会社の定款に相当)の変更として、文科大臣の認証を必要とする。認証には審査があり、可否両様の決定がありうる。
結論が正しかったか否かもさることながら、一連の経緯を明らかにしなければならない。安倍なきあとまで、安倍政治の負の遺産をまかり通らせてはならない。
まずは、不可解極まる「名称変更理由の全部マスキング」である。当面は、このマスンキングを外せという要求が重要である。本日の統一教会幹部の説明を聞いてもさっぱり分からないのだから。そして、議事録や応接録を全て公開していただきたい。
岸田改造内閣の、新文科大臣は永岡桂子だとか。馴染みのない方だが、是非、国民の政治への信頼をつなぐために、積極的な情報開示をお願いしたい。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.8.10より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=19700
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12267:220811〕
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