マルクスの〈強められた労働〉と新古典派マクロ経済学の〈効率労働〉
- 2022年 9月 3日
- スタディルーム
- 岩田昌征
矢沢国光主催「世界資本主義フォーラム」ズーム研究会(7月23日・土)の伊藤誠教授講義「新自由主義と新古典派経済学」にて私=岩田が行った舌足らずの質問の趣旨をここで再現したい。
マクロ経済学がマクロ生産関数を論ずる時、資本Kと労働Lの一次同次関数を想定する。そして時間tを通しての生産関数の変化、すなわち技術進歩を以下の三種に分類する。
ハロッド中立型 F(K,a(t)L)>F(K,L)
ソロー中立型 F(b(t)K,L)>F(K,L)
ヒックス中立型 c(t)F(K,L)>F(K,L)
資本主義経済史に「確認された事実」8項目(丸山徹著『経済原論 第二版』岩波書店、p.308)、すなわち「カルドアの定型化された事実」6項目(斉藤・岩本・太田・柴田 著『マクロ経済学』有斐閣、p.608)が知られている。ここでは紹介を省略。
丸山徹は、ハロッド中立型生産関数、技術進歩を労働力能向上に還元する生産関数だけが「確認された事実」を理論的に導出し得る事を教科書的に説明してくれる。
ロバートM.ソローは、労働力能向上係数a(t)と資本性能向上係数b(t)をそれぞれの平均成長率表現に直して議論する。現在から未来にわたる経済社会の総効用の割引き現在価値を特定の生産関数を制約条件に最大化する時、その解状態が理論的にすっきりした指数的恒常成長状態となり得るのは、生産関数がハロッド中立型コブ=ダグラス生産関数に限られる事を説いている。(『成長理論 第二版』岩波書店、pp.154-158)
丸山は過去の事実に、ソローは未来の均衡像に基づいて、同一の結論に至る。労働主導の技術進歩論である。
マルクス経済学的に解釈すれば、相対的剰余価値論の「強められた労働」Potenzierte Arbeitこそ、現代マクロ経済学で汎用される効率労働a(t)Lそのものである。生産力発展=技術進歩は、資本性能や生産関数のレベルアップではなく、労働力能上昇に丸事表現される。価値論的に言えば、効用価値論ではなく、労働価値論が資本主義経済学の基底である事の一証拠ではなかろうか。
令和4年8月29日(月)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔study1230:220903〕
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