小野有五、著者自ら語る「新しいアイヌ学」のすすめ
- 2022年 9月 3日
- 交流の広場
- 松元保昭
北海道の誇る地理学者であり市民科学者として脱原発でも牽引者として活躍する小野有五さんが、知里幸恵に出会って25年、このたび『「新しいアイヌ学」のすすめ―知里幸恵の夢を求めて』(藤原書店)を出版しました。ことしは19歳で亡くなった知里幸恵の没後100年です。
1997年にはじめてアイヌ語地名の併記を道庁に要望。翌々年、幸恵の姪に当たる知里むつみさんに会い「知里幸恵アイヌ記念館」建設の志を聴き20年間、建設募金活動に参加して多くのアイヌの人たちと出会う(第2章)。
2005年、シレトコ世界自然遺産の登録申請からはじまった「アイヌエコツアー」が札幌に発展して「サッポロ・アイヌエコツアー」となり、7月に亡くなった小川隆吉さんの語りが登場する(第3章)。
国連先住民族権利宣言の翌年、2008年はG8サミット(主要国首脳会議)が北海道で開催される。日本政府はあわてて「アイヌは日本の先住民族である」という国会決議を権利の内実のないまま公表。このとき、アイヌの中から、アイヌモシリの大地に世界の先住民族が集いその声をG8の首脳に届けよう、という声が上がった。二風谷で開催された「先住民族サミット」の発端から成功まで(第4章)。
第5章は、氷河期研究者としての小野有五さんが旧来の歴史学を批判的に乗り越えた、アイヌの側からみた新しい時代区分の提唱です。「古アイヌ語」はすでに続縄文文化期にはアイヌモシリに居住していたアイヌ民族によって使用されており、その始原はさらに古いと著者は語っています。
「わたしはアイヌを研究の対象と考えたことは一度もない。アイヌの権利回復を実現するにはどうしたらいいか」そればかり考えてきたと言って、「アイヌ力(ちから)」の連帯に期待を寄せています。
■著者自ら語る「新しいアイヌ学」のすすめ(youtube、126分)
https://youtu.be/u5Dyv2XXWuU
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