本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(376)
- 2022年 9月 17日
- 評論・紹介・意見
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東洋の暗黒時代
大河ドラマの「鎌倉殿の13人」を見ると、「西暦1221年の承久の変が、文明法則史学が教えるとおりに、東洋文明から西洋文明への大転換を告げる事件の一つだった事実」が、より鮮明に認識できるものと考えている。具体的には、「天皇」を中心とした「公家や貴族の文化」が滅ぶとともに、その後は、「武士による領土の奪い合い」が盛んになっていったことが見て取れるからである。別の言葉では、「西暦1200年から2000年前後」という期間が、「西洋の物質文明が開化し、その後、成長と熟成の時期を経て、崩壊の時期を迎えている状況」だったものと思われるのである。
つまり、「西暦400年から1200年前後」という期間が、「東洋の精神文明が開化し、成長と熟成の時期を経て、崩壊の時期を迎えていた状況」だったものの、「西暦1200年前後」を境にして、「西洋の暗黒時代」が「東洋の暗黒時代」へと移行したものと思われるのである。そして、この点については、現在の世界情勢からも明らかなように、「先進各国が、金融破たん危機に見舞われ、一方で、ロシアや中国は、誤った共産主義思想と虚構の資金力に振り回されている状況」とも理解できるのである。
より詳しく申し上げると、「お金(富)と宗教(神)との関係性」に関して、現在の「富の形骸化」、すなわち、「影も形も存在しないデジタル通貨が、神様と崇められるような状況」、あるいは、「宗教組織までもが、資金集めの手段として使われるような状況」は、まさに、「弘法大師空海の真言密教」が「念仏仏教」へと移行し、その後、「武士の時代において、比叡山の焼き討ち事件までもが発生する状況」を彷彿とさせる展開とも言えるのである。
このように、現在は、「軍事力や資金力が絶対的な力を持つ時代」であり、このことは、「東洋の精神文明」から判断すると、「暗黒時代」だった可能性があるとともに、今後は、1600年前と同様に、「東洋の光明時代」が始まるものと思われるのである。そして、この時に、反面教師の一つとなるのが、現在の「中国共産党」であり、実際には、「資本家を否定する共産主義思想」を標榜しながら、実際には、「虚構の資金力に裏付けられた巨大な軍事力を誇示している状況」とも言えるからである。
より具体的には、「西洋の光明時代」の残像を、一挙に背負いながら、今後は、「14億の民と巨大な経済を、どのように維持するのか?」が問題化する可能性、すなわち、「国家と国民との関係性」において、現在の「スリランカ」のように、「国民の不満や怒りが抑えられない状況」が予想される展開のことである。(2022.8.16)
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日銀の変調
イエレン財務長官が初訪日した「7月12日」の前後から、「日銀のバランスシート」に変化が起き始めているようだが、実際のところ、「全体の残高」に関しては、「6月20日の約742兆円」が「8月10日の約725兆円」まで、「約17兆円の減少」となっているのである。また、「当座預金の残高」についても、「564兆円から529兆円まで、約35兆円の減少」という状況となっているが、この要因としては、「世界的な資金ひっ迫現象」が指摘できるものと感じている。
つまり、今までは、「民間金融機関から中央銀行への資金貸し付け」、そして、「中央銀行による国債の大量買い付け」という構図により、先進各国で「超低金利状態の維持」が可能だったものと想定されるのである。そして、この理由としては、「メガバンクが大量保有するデリバティブのバブル崩壊」を防ぐ点が指摘できるが、現在では、「中央銀行のバランスシートを増加させる従来の手法」に問題が発生したものと考えられるのである。
より詳しく申し上げると、「中国の不動産バブル崩壊」や「世界的な債券価格の下落(金利は上昇)」、あるいは、「世界的な株価の下落」などにより、「民間部門において、資金的なひっ迫状態が発生した可能性」のことである。つまり、現在では、「中央銀行から民間銀行への資金逆流」が始まっているものと思われるが、この点に関して、今後、特に注目すべきポイントは、「日銀の当座預金残高」だと考えている。
具体的には、前述の「35兆円の残高減少」が、「日銀の資金繰りがひっ迫し始めた状態」を表している可能性のことだが、この点に関して気になる出来事は、「みずほ銀行が、7600万円の金利を払い、9000億円もの当座預金を、マイナス金利で積み立てた事実」だと感じている。つまり、現在では、「民間金融機関における急速な資金ひっ迫」や「日銀が、当座預金残高の急激な収縮圧力に晒され始めた可能性」、あるいは、「今後、この圧力が急速に上昇する可能性」などが指摘できるものと考えられるのである。
そして、「バランスシート残高を増やすために、今後、中央銀行が取れる手段」として考えられることは、やはり、「紙幣の増刷」とも言えるが、今回の問題点は、やはり、「世界全体が、大量のデジタル通貨であふれた状況」とも言えるのである。つまり、「金融界の大量破壊兵器」と呼ばれる「デリバティブ」のバブルが崩壊すると、その時には、「世界全体に、金融界の白血病、そして、未曽有の規模でハイパーインフレを引き起こす可能性」が想定されるからである。(2022.8.17)
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信用本位制におけるインフレ税
最近、「インフレ税に関する記事」が出始めているが、この点には、大きな注意が必要であり、決して、短絡的な議論や結論に惑わされない態度が必要だと感じている。つまり、「1971年のニクソンショック」から始まった「現代の通貨制度」、すなわち、私が提唱する「信用本位制」においては、従来の「インフレ税」の理論が、単純に応用できない状況が想定されるからである。
そのために、現時点において必要なことは、「1945年から現在までの状況を、具体的な数字で検証し、金融システムに、どのような変化が発生したのかを理解すること」だと考えている。具体的には、「1945年からの約20年間」において、「戦時国債で損失を被った人々が、決して、国債に投資しない態度」を貫いたものの、その後、「経済成長や福祉国家の概念に慣れ始めた人々が、歳入を上回る歳出を容認し、将来の税金である国債の発行が始まった状況」のことである。
また、その後は、従来の金融システムと同様に、国債の残高膨張が発生したものの、今回の相違点は、やはり、「1990年代後半から大膨張を始めたデリバティブの存在」とも言えるようである。つまり、「コンピューターネットワークの発展」と「デジタル通貨の大膨張」により、「デリバティブという金融商品が大量に創造され、その結果として、デジタル通貨の大膨張に繋がった状況」のことである。
より詳しく申し上げると、「インフレ税の発生要因」としては、「シニョリッジ(通貨発行益)」の存在が指摘できるが、過去の歴史を見ると、「国民がインフレ税に気付くのは、大量の紙幣が紙切れ状態になった段階」とも理解できるのである。つまり、現在は、「一部のメガバンクが創り出したデリバティブ」の存在により、「国民の資産がメガバンクに移行し、その結果として、紙幣の大量発行が先送りされている状態」とも想定されるのである。
そして、今後は、「デリバティブのバブル崩壊」とともに、「メガバンクの大規模な不良債権」が発生し、その損失を埋めるために、「国家が大量の紙幣増刷を行う展開」が想定されるのである。つまり、「目に見えない税金」である「インフレ税」については、「紙幣の発行権を握っている国家や日銀」が、大きな役割を果たすことが、過去の歴史から判断できるものの、今回は、この点に関して、大きな遠回りの状況、すなわち、「山高ければ谷深し」という諺のとおりに、「巨大なデジタル通貨の山が形成されたために、先送りされた紙幣増刷が、今後、未曽有の規模になる状況」が想定されるものと感じている。(2022.8.22)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion12382:220917〕
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